Fireworks を用いた Web グラフィックス(初級編)

マルチメディア工房には、Web サイトデザインのプロが利用するものと比べても見劣りしない機器とアプリケーションが揃えてあります。これを有効に活用することで、デザイン的に優れた Web ページを作成することが可能になります。そのためには、いろいろな事を学ばなくてはなりませんが、ここでは、クールな Web サイト構築への最初の一歩としてFireWorks を用いてシンプルな Web ページを作成してみます。

実習課題
ロールオーバーボタンのあるWeb ページの作成
このページを、Fireworks の機能を利用することで、できるだけ短時間で作成しましょう。
作成に要する時間は1時間程度です。
目次
  1. Web サイト構築
  2. 利用するアプリケーション
  3. 準備
  4. ベクトルオブジェクトの操作
  5. ビットマップオブジェクトの操作
  6. テキストの挿入
  7. ボタンの作成
  8. ファイルの書き出し
  9. 修正
  10. アップロード
  11. 次のステップ

2003年7月28日
情報メディア教育研究センター
メディア活用系

Web サイト構築

一口に Web サイトといっても、サイトの構成とそのデザインはその目的に依って大きく異なってきます。例えば、広島大学のトップページであれば、広島大学をアピールするための情報を一面に押し出すと共に、大学の持つ様々な情報に少ない操作で確実にたどり着けることを考えてインタフェースをデザインしてあります。そこに、大学としての信頼感を大切にするため青を中心とした配色を行い、その中に広島という都市が持つイメージ、再生を表すフェニックスの緑を織り込んでいるわけです。また、弱視の方でも容易に必要な情報にアクセスできるような工夫もされています。

このような、ある程度大きな規模のサイトになると、具体的なサイト構築作業に先駆けて企画会議が行われ、下記のような項目について検討されます。

さらに、デザインを考える際にも、アーティスティックな美しさよりも、サイトの目的と合っているか、対象とする層に受け入れられるか、使いやすいかといった点での完成度が重要になってきます。これらの要素に配慮した上で、

といった部分に何をどのようにデザインしていくか決めていくことになります。

とはいえ、最初から大規模な Web サイトと同様なアプローチでサイトをデザインすることは難しいし、現実的でもありません。ただし、個人で作成する Web サイトであっても、上に挙げた様な点について配慮の欠けている事は無いか意識してデザインしていくことで、一段と利用価値のあるサイトを仕上げることができると思います。

利用するアプリケーション

ここでは、マルチメディア工房で Web デザインを始める上で最低限必要な基礎知識について、Fireworks と Dreamweaver を利用して説明していきます。

Macromedia Fireworks MX
Macromedia Dreamweaver MX

Fireworks は、Web グラフィックスに特化したさまざまな機能を持ったアプリケーションです。ベクトルモードとビットマップモードを備えておりベクトル画像とビットマップ画像を同じキャンバスの中で操作することができ、作成したイメージをそのまま、HTML 形式で保存することができます。簡単にロールオーバボタンやポップアップメニューを作成することも可能です。

Dreamweaver は、Web ページのレイアウト、HTML ファイルの編集、Javascript のデバッグからWeb サイトの管理まで、Web サイト構築に必要なさまざまな機能を備えたアプリケーションです。ここでは、Fireworks でデザインしたページをサーバにアップロードするために利用します。

ベクトル画像とビットマップ画像

ベクトル画像
ラインとカーブで描画、イラストの作成、ロゴの作成など

ビットマップ画像
ピクセル単位で描画、写真素材の加工、ロゴの作成など

準備

素材のコピー

まず、利用する素材をコピーしておきます。ブラウザを起動して、

http://home.hiroshima-u.ac.jp/inagaki/jyugyou/photo.html

へアクセスしてください。右下の”たまご”の画像を「control」キーを押しながらクリックし、開いたメニューから「画像をディスクにダウンロード」を選択し、適当なフォルダにダウンロードします。

この画像は、デジタルカメラで撮影した写真を Photoshop で処理したものです。

Fireworks を始める

さあ、Fireworks を起動してください。

まず、「ファイル」メニューから「新規作成」を選択し、

幅:600 ピクセル
高さ:600 ピクセル

と指定してドキュメントを開きます。

ベクトルオブジェクトの操作

まず、ベクトルモードを使ってみましょう。ベクトルモードでは、基本的に、パスを描画し、パスを描く線と、パスで囲まれた領域の塗りを指定してイメージを描画します。以下の手順で、同じ大きさの黄色く塗りつぶした円を3つ描きましょう。

  1. 左にあるツールボックスから「楕円ツール」を選択。

  2. 下方にあるプロパティインスペクタで塗りのカラーに黄色を選択。

  3. 画面の適当な場所を「shift」キーを押しながらドラッグして直径が140ピクセルの円を1つ描きます。大きさはプロパティインスペクタで確認します。

  4. 描いた円を「選択ツール」で選択して、「command」キー+「c」でコピー

  5. 「command」キー+「v」を2回押して、2回ペーストする。ペーストした円をドラッグして、図のような配置にする。

  6. 「選択ツール」で描いた円を全て選択し、整列ウインドウの「垂直方向中央揃え」と「均等配置(水平方向の中央)」を利用してきれいに並べる。

    このウインドウが見当たらないときは「ウインドウ」メニューから、「整列」を選択して開く。
サンプル

サンプルイメージ

サンプルでは、「ペンツール」 で図形を1つ書き足しています。

ビットマップオブジェクトの操作

つぎは、ビットマップモードです。ビットマップモードでは写真等の素材の切り抜き、合成、色調補正、各種効果の適用などを行います。ここでは、先ほどコピーしておいた”たまご”の画像を読み込んで、画像の切り抜きを行ってみます。

  1. 「ファイル」メニューから「読み込み...」を選択し "egg2.jpg" を選択し読み込む。
  2. 画面の適当な場所をドラッグして、120×120ピクセルの大きさで張り付ける。大きさはプロパティインスペクタで確認します。

  3. ツールボックスにある「自動選択ツール」で”たまご”の周囲の白い部分を選択。

  4. 「command」キー+「x」で、周りの白を削除

  5. コピー、ペーストで他の円上にも”たまご”を載せる。
  6. 整列ウインドウを利用してきれいに並べましょう。

サンプル

サンプルイメージ

サンプルでは、ペンツールで読み込んだ”たまご”に顔を描き加えています。

テキストの挿入

Fireworks では、文字にさまざまなスタイルを適用することができます。Web グラフィックスでは、タイトルやボタンの文字を描く際に、これらのスタイルを利用します。ここでは、タイトルにするテキストを挿入し、適当なスタイルを適用してページのタイトルをデザインします。

  1. 「テキストツール」を選択し、左上の適当な場所をクリックして、”たまご細工”と入力。

  2. アセットウインドウのスタイルタブをクリックし、適当なスタイルを適用。

  3. プロパティインスペクタ上でフォントスタイルを”ヒラギノ角ゴProW6”、サイズを”60”に設定

サンプル

サンプルイメージ

サンプルでは”たまご”の上にもテキストを書き加えています。

ボタンの作成

ロールオーバボタンを作成する方法はいろいろあります。最も簡単なのは、「編集」メニューの中の「ライブラリ」から適当な「ボタン」を選択する方法だと思います。ここでは、既存のボタンを読み込むのではなく、先ほどの”たまご”をボタンにしてみます。

シンボルの作成

まず、”たまご”の画像をシンボルに変換します。

  1. ツールボックスから「選択ツール」を選び、”たまご”を1つクリックして選択。

  2. 「修正」メニューから「シンボル」→「シンボルに変換」で、開 いたウインドウで「ボタン」を選択して「OK」をクリック。

    シンボルに変換された”たまご”はインタラクティビティーを持つ領域として、中央に十字ハンドルを持つ薄緑色のスライス領域になります。

  3. シンボルに変換した”たまご”をダブルクリックしてシンボル編集 ウインドウを開く。

ロールオーバーイメージの作成

シンボル編集ウィンドウで、画像にマウスが乗った時のイメージを設定します。

  1. 「オーバー」タブをクリックし、「アップのグラフィックスをコピー」 ボタンを押して、画像をコピーする。

  2. 「選択ツール」で”たまご”を選択。
  3. 「フィルター」メニューから「カラーの調整」→「色相/彩度...」 を選択。

  4. 色相を適当な値(例えば-150)ずらして「OK」ボタンをクリック。

URLの指定

次に、シンボル編集ウィンドウで、ボタンのリンク先 URL を設定します。

  1. 「ヒット」タブをクリックし、”たまご”画像がある領域をクリック。

  2. プロパティインスペクタにあるツールオプションのリンクとALTに適当な値を挿入。 ここでは、それぞれ、

    リンク:http://www.media.hiroshima-u.ac.jp/
    ALT:Information Media Center

    と入力しています。

  3. 「終了」ボタンをクリックして、シンボルの編集を終了。

これで、リンク先がメディアセンターのホームページで、マウスを乗せるとイメージの色が変わるロールオーバボタンが完成しました。

他の”たまご”に対しても、上記作業を繰り返すと、以下のような表示になります。

ファイルの書き出し

ページが完成したら、まず、キャンパスのサイズをイメージのサイズに合わせます。以下の要領で、実際にブラウザでどのように見えるのか碓認してから、HTML 形式で書き出します。

ページの碓認

ブラウザで作品がどのように表示されるか確認し、問題があれば訂正します。

  1. 「ファイル」メニューの「ブラウザでプレビュー」の中から 適当なブラウザを選択。
キャンパスサイズの調整

書き出し時に無駄なファイルを作成しないように、キャンバスのサイズを描画した領域に合わせておきます。

  1. 「修正」メニューの「キャンパス」→「キャンパスをフィット」

スライス

スライスツールを使って、”たまご”以外で画像がある領域を囲みましょう。ここでは、下図の様に領域を作成します。

スライス

Fireworks ではスライスによって画像を分割し、スライス毎の画像最適化、効果の追加等を可能にしています。書き出し時には、各スライスが別の画像ファイルに保存されます。スライスの「ツールオプション」で「HTML」を選択すると、その領域は HTML 文書を入れる領域として書き出されます。

書き出し

「ファイル」メニューの「書き出し...」を選択し、開いたウインドウで図のように設定した後、書き出します。拡張子を、html にするには、「オプション」ボタンをクリックして指定します。

Fireworks で行った編集内容は、別途、「ファイル」メニューの「保存」で忘れずに保存しておきます。ファイルは png 形式で保存されます。この png ファイルもブラウザで開くことができますが、容量が大きいため Web サイトに置くには適していません。

修正

Web ページの詳細な設定、文字情報の入力、ファイルのアップロードには、Dreamweaver を利用します。この段階では、Dreamweaver は多少オーバースペックなのですが、サイトの規模が次第に膨らんでいくことを見越して使ってみます。

Dreamweaver でのファイル読み込み

まず、Dreamweaver を起動して先ほどのファイルを読み込みます。

  1. Dreamweaver を起動
  2. 「ファイル」メニューから「開く」をクリックする。先ほど書き出しておいたファイルを選択して開く。
  3. 「表示」メニューで「コードとデザイン」をチェックすると、下記の画面になります。

修正

ここで、左端と上にある余白を無くします。 また、テキストを挿入してみましょう。

  1. 「修正」メニューから「ページのプロパティー...」を選択。
    左マージン:0
    上マージン:0
    に設定します。

  2. テキストを挿入します。下図を参考に画面右下の白い部分をクリックして「たまごを使ってみました」と書きこみます。

  3. コードの中の最後の方、</body>の前に、

    <hr>
    2003年7月28日

    と書き込みましょう。
  4. 「ファイル」メニューの「保存」で保存します。
  5. 「ファイル」メニューの「ブラウザでプレビュー」→「Internet Explorer」で、実際にどのように表示されるか確認しておきましょう。

ここまでできたら、「ファイル」メニューの「閉じる」で、いったんファイルを閉じておきます。

アップロード

最後に、完成したファイルをサーバにアップロードして公開します。

サイトの設定

まず、サーバの情報を設定します。「サイト」メニューから新規サイトを選択し、以下のように設定してください。FTP ログイン名にはメディアセンターのアカウント名を入力します。FTP パスワードは、ここでは入力する必要はありません。

設定した、"Documents:MediaSample:"の中に置いたファイルをサーバへアップロードします。ここでは説明しませんが、Dreamweaver には、サイトを管理するいろいろな機能があり、ローカルに置いたファイルとサーバ上のファイルで整合性を保ったり、グループでサイトを管理する様な際に利用すると便利です。

アップロード

サイトの設定が終了したら、ファイルをアップロードします。

  1. Finder で、作成した sample.html ファイルと image フォルダを、ローカルサイト用のフォルダ "Documents:MediaSample:" へ移動。

  2. Dreamweaver に戻って、サイトウィンドウの中の「サーバへ接続」ボタンをクリックし、開いたウィンドウにメディアセンターのパスワードを入力する。

  3. 右の画面の「 サイト-Media Sample」の中から、sample.html ファイルと image フォルダを選択して、「サーバーへ PUT」ボタンを押してアップロードする。

  4. ブラウザを立ち上げて、

    http://home.hiroshima-u.ac.jp/アカウント名/sample.html

    で作成したページが見えるか確認しましょう。

次のステップ

チュートリアル
Macromedia 製のアプリケーションには、基本操作をマスターするためのチュートリアルが備えてあります。Fireworks であれば「ヘルプ」メニューの中から「Fireworks ヘルプ」を開いて「グラフィックデザインの基本チュートリアル」と「Web デザインの基本チュートリアル」を読んでください。Dreamweaver であれば「ヘルプ」メニューに「チュートリアル」という項目があります。
図書
Macromedia 製品を用いた Web サイト構築についてはいろいろなレベルの図書が出版されています。Macromedia のサイトにも関連書籍に間する情報が掲載されています。「ヘルプ」から「サポートセンター」に飛んでみましょう。
マルチメディア工房にも、関連する書籍、雑誌等を揃えていますので、適宜、参照してください。
関連アプリケーション
マルチメディア工房の Web グラフィックスで利用するその他のアプリケーションで、よく利用されるものを挙げておきます。
  1. Macromedia Flash
    動的なイメージ作成
  2. Adobe Photoshop
    ビットマップ画像の編集
  3. Adobe Illustrator
    ベクトル画像の編集
  4. Shade
    3D CG の作成
この他にも、慣れた人は UNIX のコマンド等を利用していろいろな処理を自動化しています。