2015年度からはじまった広島大学の必携PC制度について、開始後およそ1年経過した段階で、全学の教員を対象にアンケート調査を行いました。
全体の60%近くの方が、PCが必要になる活動を課したことがあると答えられました。BB9でのレポート提出などを指示した場合、PCが必要ということになります。
PC必携化については、広大通信や学長プレスリリースでも広報がありましたし、教育担当理事から全教員あてに電子メールで、授業での活用を要請するメッセージが出されています。
それでも、3割以上の先生がPC必携化がすでに始まっていることをご存じない状況でした。
広大における必携PCの制度の内容について、「まったく知らない」「あまり知らない」と答えられた方が過半数で、66%にのぼりました。
前の質問2で、広大でPC必携化になったことをご存じであった方に限定すると、52%が「制度内容を知っている」、48%が「制度内容をしらない」と答えられていました。必携化については、そういうことが始まったことは7割方の先生はご存知でも、どういう内容かよく知らないというかたがそのうち半数程度いらっしゃるということになります。
ここから質問11までは、質問2に「知らない」と回答され、質問3にも「全く知らない」と答えられた方以外の方に聞いています。つまり、広大でPC必携制度が始まっていると聞いている方(質問2に「知っていた」と回答)、もしくはPC必携制度についてどういうものか少しはご存知(質問3に「あまり知らない」「だいたい/よく知っている」と回答)な方が対象です。対象者数は321名となっています。
最初に、学生がどんなパソコンを持っているのかを聞きました。学生のうち多く(8割近く)は生協のおすすめ機種を購入しており、約半数がいわゆるWindows機 (東芝Dynabook)、約半数が Mac (MacBook Air 13")です。残りの2割は、その他のノートPCを用意しており、その多くはWindows機のようです。
半数以上の先生が、「どんなものを持っているのか知らない」という結果になりました。
質問2,3,4をざっくりとまとめると、回答者453名のうち、1/3が広大のPC必携化を知らない、1/3が必携化を知っていても内容まではよく知らない、そしておよそ1/4が、学生がどんな機種を持っているかまで知っている、ということになります。
PC必携可についてご存じの方321名のうち、61名(約2割)の教員が、授業でPCを持ってくるよう指示されたことがあると回答されています。
質問6から質問10までは、授業で必携PCを持ってくるように指示したことがある、と答えた方61名が対象です。
必携PCを使った授業数を聞いてみたところ、ほとんどが1クラスもしくは2クラスでした。教員の担当している授業数から考えると、まだ試行段階ということでしょうか。
利用している授業で、使った回数を聞いています。複数の授業で使っている場合に、異なる回数になる場合もあるでしょうから、かなり大雑把な数値です。これは自由記述で回答してもらったものを、集計者が手でグラフのようなカテゴリに分類して集計しました。
1回しか使っていない、というのが多いのではないかと思っていたのですが、「毎回使った」という方が18名(30%)、「半分以上の回で使った」を合わせると25名(43%)という結果になりました。
個人学習の方がやや多いですが、グループ学習もかなり多いです。個人学習とグループ学習の両方で使ったものを合わせると、グループ学習で使っている率は61件分の34件(56%)でした。
具体的にどのような用途で使ったかを自由記述で聞きました。対象の61名中60名の方が何らかの記入をしてくださいました。
書かれた文章を、キーワード的に「プレゼン」とか「データ処理」とかでタグ付けし、61名の何%がそのキーワードに関連する使い方をしたと答えたかを図に示しています。
最も多かった「プレゼン」は、PowerPointを使ってプレゼンの資料を作った、プレゼンをした、などの使い方です。次の「データ処理」は R や Excel で実験データや調査データの処理をしたものが多かったです。「実習」は専用のアプリなどを使っての実習をしているものです。
「教材閲覧」は6件と想定よりもかなり少ないのですが、提示資料などを置くのはほぼ当たり前でとりたてて書かれていないのかもしれません。
質問8で「個人学習にだけ使った」27件に限ると、データ処理(8)と実習(8)がトップになります。「グループ学習だけ」ですとプレゼン(8)がトップ、次が検索(7)となりました。
以下、回答例です
私が担当する教養ゼミで,教育ビデオを学生に制作させている。この作業に全面的に使用させている。また,教育ビデオを制作させる前は,学生にプレゼンをさせているが,pptファイルやプレゼン資料を自宅でPCを用いて作成させている。[タグ:プレゼン, ビデオ作成](先端物質科学研究科・教授)
化学実験の解析のところで、理論曲線の作り方、グラフの作り方をエクセルで練習させた。パソコン室を借りてぎりぎりできる人数だったが、パソコン室が授業の関係で空いておらず、一般の講義室を借りて必携パソコンを持ってこさせて授業を行った。[タグ:データ処理](生物圏科学研究科・准教授)
調査票の作成、インターネットでの検索、データの集計、分析、考察、プレゼンテーションなど。[タグ:検索,データ処理,プレゼン](文学研究科・教授)
必携PCを利用したことによる学習効果について、自由記述で書いていただきました。57名の方からなんらかの回答をいただき、集計者がそれぞれにたいして「あった」「なかった」「わからない」と分類した結果をグラフに示しています。「あった」と回答された方が47名(77%)と多数でした。
学習効果があったと考えられている方の多くは、学生が実際に手を動かして学習したことを試したり、プレゼンで話たりすることで理解が深まっているという意見を持たれているようでした。
逆に、効果がなかったと考えられている方では、「MacとWindowsが混在していて授業にならなかった」「授業資料を閲覧させたがノートテイクをしなくなり受講態度も悪くなった」などの意見がありました。
授業利用の際の問題点を、自由記述で書いてもらいました。質問対象者321名中169名が何らかの回答をしてくれました。
集計者が文章を読み、「Wi-Fi」や「電源」などとタグ付けをしました。多かったタグの上位6件を図にしています。
その他「サポート体制」「リテラシー教育」「重さ問題」「情報提供」など30弱のタグがつけられました。
Wi-Fiと電源についての問題が最も多く、それぞれ51名と30名の方が挙げられていました。Wi-Fiに関しては、2015年度の環境はかなり深刻で、以下のように実際に使おうとして使えなかったというコメントが多く寄せられました。メディアセンターでもWi-Fiアクセスポイントの改善は力を入れて実施していますので、徐々に改善されると思います
無線LANが繋がらないので困りました。何処でも学生全員が繋がるようにしてほしいです。更に厚かましいお願いで恐縮ですが、データ解析を行うソフトではMATLABが使いやすく、学生の習得も速いので、大学でライセンスを導入していただけると有難いです。ご検討いただけると幸いです。(総合科学研究科・准教授)
興味を持ったwebサイトを調べさせた上で、第2.3講義室でネットに接続させてそれを紹介させる授業を行ったが、ネットのスピードが著しく遅く、接続に時間がかかって、効率的な授業とならなかった。多くの学生がアクセする環境となると、さらにネットへの接続するスピードが遅くなることが予想されます。その点については、改善する必要があるのではないでしょうか。(医歯薬保健学研究院・講師)
実際に授業で利用したことがあるかどうか(問5で必携PCを持ってくるように指示したことが「ある」とこたえられたかどうか)で、それぞれの件数を分けてみました。左側の赤いほうが利用したことがない方、右側の青いほうが利用したことがある方です。
意見を出してくださった方の比率は異なるのですが、分布は概ね同じです。違っているのは、利用したことがある方で「電源」に関する問題意識が高いことでしょうか。「電源」は実際にやってみて問題だったことがわかったということかと考えられます。
情報化推進グループで整備している必携PCのホームページですが、認知度は25%程度です。もう少し露出が必要ですね..。このアンケートを通して、認知度が高まることを希望します。
質問13: 「ノートパソコンの必携化について」のページをご覧になり、必携PCについてコメントがありましたら自由にお書きください。必携PC制度について、必携PCをさらに利用しやすくするため、必携PCをさらに授業で活用するために、、などなど。
必携PCについての全体的なコメントを全員に伺いました。453名中158名の方がコメントを書いてくださいました。
問11と重なる部分もあるのですが、集計者の方でタグ付けをして、多かった意見をグラフにしています。
最も多かったのは機種選定方法への意見です。高すぎる、という意見と、スペックが足りない、という両方の意見がありました。一つの機種に統一すべきとの意見も。
大学生協が用意しているPCは、価格が高いと思う。4年生の卒業研究に着手するころには、OSもスペックも古くなって、買い換えの時期を迎えるだろう。活用機会が少ない1−3年次は、もっと廉価品でよいのではないか。ノートPCは筆記具であり、消耗品であるので、買い換えをためらわない価格設定を考えた方がよい。(先端物質科学研究科・准教授)
レッツノートやダイナブックなど、10万円を超えるようなPCを紹介するのではなく、もっと安いPCも紹介すべきだと思います。マウスコンピューターやデル、HP、ASUS、ACERなど。(医歯薬保健学研究院・助教)
つぎに多かったのは、スマホやタブレットで相当のことができるので、PCを持たすのは疑問、という意見です。
わざわざPCを必携化するより、資料の提示等への利用なら既にほぼ100%の学生が携帯しているスマートフォンを活用する方向の方が、よいのでは?という気持ちがある。(教育学研究科・准教授)
以前指導した学生の話では、パソコンの購入を推奨されて買ったものの、5年生になって初めて開いたとの事でした。 BB9の簡単なアンケートでは、スマホやタブレットで代用できるので本当にパソコンの必携が必要かどうか疑問です。 Officeは端末室で利用できるそうですので、プレゼン準備やエクセル計算もそちらでやっているそうです。(医歯薬保健学研究院・助教)
情報提供ページへの要望も同数ありました。
教員にもどのように利用するのかのガイドが必要。(医歯薬保健学研究院・教授)
字が小さくて詰まっており読みにくい。
省資源化のためではなく、今後必要となる情報リテラシーの実践のため、という動機付けの方がよいのではないか。
ノートパソコンを充電できる場所はどこかという情報が必要。(工学研究院・教授)
全体としては、6割程度が必携PCを肯定的に捉えて活用するための意見を書いてくださっているかた、1割あまりがPCを必携させることに否定的な意見の方でした。以下、必携PC制度をより活用するための意見をいくつか掲示しておきます。
情報分野(ネットワーク環境の整備)と教育分野(授業方法、アクティブ・ラーニング)との融合が大事である。現在、連携がうまく取れていないように思う。FDの共同開催や事務部門の連携等、全学的に推進してほしい。(総合科学研究科・教授)
通常の黒板講義などにおいてPCを使ってノート取りを行うことを許可するか否かについてデフォルトのルールを明記してほしい。多くの場合、ノートPCでゲームやネットサーフィン、もしくは他の授業のレポート作成などをしながら授業を受ける学生が生じてしまうと思われる。(工学研究院・助教)
外部メディアとの接続方式、ウイルス対策の万全性、レポートなどの作成方法の教養時期に取得する、2年次までにいろいろ使えるにようにする授業(専門にあがって一から教えるのは時間的に無理)、バックアップの仕方考え方、データ管理(学生の場合、何年も前からのレポートなどのファイルを代々受け継がれているが、それを許容するにしても、その対策)、レポート作成不正に対する処罰、、(工学研究院・准教授)
「ペーパーレス化による省資源活動の一環」とのことですが、紙の配布資料に記入させることによって学習ノートを完成させる様なことができなくなるのではないか、講義中にブラウザゲームなどを行う土壌を作ってしまうのではないか(今でもスマートフォンで可能ではありますが)講義中にPCを用いてアンケートをとるようなインタラクティブなことが簡単にできると良い(医歯薬保健学研究院・助教)
もう10年ほど前からスマートホンみたいなのでWebCTの画面を視ている学生は居ましたので、その程度の軽量タイプであれば、必携と言いやすいような気がします。必ずしも授業で使用しないのにノートPCを常備させるのは、物理的な負担になったり、学生用のロッカーもないので盗難に遭いそうな心配がまだあります。
授業中の内職を防止するために、PC操作画面を一望監視できるようなシステム(図書館の座席や貴センターの利用状況表示のような感じ)があるとよいかなと思います。これはBb9へのアクセス状況確認でできそうな気もしますね。
あと駆動時間8時間というのは、自分のもっている数年前のノートではちょっと考えられないので、サイトで動画を視たりしている際に本当に保つのかどうか未確認です。もし本格的にPC必携を要求するのであれば、インフラとして全席に電源コードが要ることになるでしょう。(教育学研究科・講師)