2015年度からはじまった広島大学の必携PC制度について、初年度の学生(=2015年度の学部新入生約2500名)を対象に、開始後およそ1年経過した段階でアンケート調査を行いました。
本アンケートは無記名でおこなっておりますが、回答者のプロフィールとして質問1と質問2で所属部局と学年を聞いています。213件中211件で所属部局の記入がありました。
所属部局の分布は図のようになります。グレーの棒は母集団である2015年度入学者での分布です。回答者の所属部局は、おおむね母集団のものと同じように分布しているようです。
212名が「1年生」と回答しました。
広島大学では必携パソコンの要件としてMicrosoft Officeが動作することを挙げていますので、OSはWindowsもしくはOS X (macOS) となります。学生がどちらを使っているかをきいたところ、Windowsが57%、Macが42%という結果でした。Macの比率が高いのが広島大学の特徴です。
「ノートパソコンの必携化について」のページにあるように、広島大学では必携PCの条件としていくつかの要件を示していますが、具体的な機種は指定していません。広島大学生協ではこれらの要件にあうような機種を毎年選定(メーカーの提案をもとに学生スタッフの投票で決定する)し、広島大学生協オリジナルパソコンとして販売しています。そして、多くの新入生が生協で購入しています。
本アンケートでは、73%が入学時に生協で購入したと回答しています。残りの25%が入学前から使っていたもの、もしくは入学後アンケート実施時までに購入した、と答えています。
実際に生協で購入した学生は1,880名で、2015年度入学生の75%ですので、Web回答者はおおむねこの面では偏っていないといえます。
生協で購入した学生では53%がMacですが、それ以外の学生では18%がMacです。
必携PCの利用頻度を訪ねました。41%の学生が「毎日使っている」とのこと。週に4日以上使っているとした方を加えると、全体の6割近く、59%になります。いっぽう、ほとんどど使っていない、週1程度、という方も2割(21%)ほど。
前の問で「ほとんど使っていない」と回答した15名に、使っていない理由を自由記述で尋ねました。「調べ物などはスマホで十分」が5名、「大学に端末がありそれで足りている」が4名です。また、特に使う用途がない、という方が3名。「使う機会があまりない。あったとしても、課題は大学のPCで十分、調べ物はスマホで十分」ということのようでした。
必携PCの用途を聞いてみました。選択肢を示して、あてはまるもの全てを選んでもらう形式です。回答選択肢は、情報メディア教育研究センターで毎年行っている利用者アンケートの「端末室を利用する目的」のものと合わせて、少し娯楽方面を拡張しています。
自習が最も多く、「もみじ」や「Bb9」の利用が次に続くという結果は端末室の用途と同じようなものになりました。
必携PCの用途各項目の回答率と、質問5の利用頻度を組み合わせてみました。利用頻度が低いグループは全体に用途としての回答率も低いのが通常だと考えられます。ところが、「自習」や「Bb9」といった項目は、ほぼp利用頻度に関わりなく必携PCの用途として回答されていました。これらは宿題などとして課せられていて、どうしても使わなくてはいけないものなのでしょう。
「娯楽」や「もみじ」は利用頻度が下がると、使う割合も下がります。この関係はある意味当たり前なのですが、必携PCを使う頻度が低いグループは、「もみじ」をみたりするのをスマホで行っているのかもしれません。この点は要検証です。
15%の方が、週4-5日、つまりほぼ毎日持ってきていると回答しています。一方41%が、ほとんど持ってくることがなかったと回答しています。次の問でその理由を聞いています。
前の問(質問8)で、必携PCをほとんど大学に持ってくることがなかった、と回答した87名に、理由を自由記述で書いてもらいました。
最も多かった理由は、重い、かさばるなど「持ち運びに不便である」というものでした。37%の方がそのように回答しています。
次に多かったのは「大学で使う用事がない」「授業で使わない」です。これらをあわせて大学で使う用事がない、と言い換えてもいいかもしれません。そうすると53名(61%)がこの理由を上げていることになります。
また、用事があるにしろ、図書館に設置してある「大学の端末」で事足りるとの回答が21名(24.1%)ありました。
「重い」という回答が多くあったので、機種に関係するだろうと考え、生協モデル(TOSHIBA Dynabook R63/MacBook Air 12インチ) を購入したグループとそうでないグループで持ってくる頻度を比較してみました。すると、図のように生協モデルのグループよりも、そうでないグループのほうが「持ってこない割合」が2倍近くになりました。
学生は、必携PCを使いこなせていると考えているでしょうか。70%の学生が、「使いこなせている」または「ある程度使いこなせている」と回答しています。使えていると考えているほうが多数派です。
必携PCに限定せず、パソコンの利用方法についての授業は、情報科目を筆頭にいくつかありますが、もっとあったほうがよいと考える学生は半数以下であるという結果になりました。
パソコンの使い方を教えるのではなく、使えることを前提にパソコンを利用した授業がもっとあったほうがよい、と考える学生は、116名(54%)でした。
質問10の「必携PCをつかいこなせていると考えるか否か」で質問11と質問12の回答がどう変化するかを見てみました。予想通り「使いこなせている」と考えるグループのほうが、使い方を教える授業はなくてよい、活用した授業があったほうがよい、と回答していました。
この質問と次の質問で、必携PCの授業での利用頻度を調べました。学生が持参して自主的にノートテイクとかで利用することもあるはずですが、ここでは教員から持参することを指示された回数を調べています。
まず、「毎回持ってくるように」指示された授業がどの程度あるのかを聞きました。そういう授業は一つもなかったとする学生が149名 (70.0%) です。52名(24.4%)が、そういう授業が1つもしくは2つあったと回答しています。
次に、必携PCを持参するように(一度でも)指示されたことがある授業がいくつあるかを尋ねました。
64名(30%)の学生が、必携PCを使用すると言われた授業が1年の間に一つもなかったと回答しています。利用したことがあったものでも、60%が1つの授業でしかつかっておらず、まだまだ授業での活用は進んでいません。
多かった回答がWi-Fiに繋がりにくい、重くて持ち運びが不便、充電場所がない、といったものでした。
学内Wi-Fiにつながらないことが数回あり不便だった。 また、学内なのにWi-Fiが使えないところがあるのも不便。(教育学部)
推奨機種への不満としては「DVDが使えない」「HDD容量が少ない」「タッチパネルがほしい」「スペックがいまひとつ」などでした。
その他、いくつか実際に書かれた回答をあげておきます。
大学の教授が必須PCであることを理解していない時がある。必須PCになっているならば授業中にパソコンを操作してメモを取ったり、調べたりしても良いのではないか。その方が効率よく学べる授業もあると思う。(工学部)
使うとなると机の大きさが教室により様々なので場所により使いづらいと思った。(工学部)
セキュリティのシールを見えるところに貼るように言われたこと。せっかくのシンプルなデザインが台無し。できることなら剥がしたい。もしくは目立たないところに貼り替えたい。(工学部)
利用しやすくするためには、前の質問ででた不満を解消するようWi-Fiや充電設備の充実、が上位にあがっています。
次に多い意見として、生協や西図書館に相談しやすい窓口を設置して欲しい、というものがありました。また、Bb9などを活用して授業資料を電子的に配布することが広がってほしいという意見も複数ありました。
質問15の回答にあった、必携PCを授業で使ったときに教員に怒られないようにして欲しいという意見がここでも出ていました。また、その他授業や学習で活用するための提案も。
用途に対応したソフトウェアの紹介、配布、使い方の説明。画像編集→GIMP 等
せっかく必携PCを持っているのに、レポートを書くためだけの機械になり下がるのは勿体無いと思う。PCを使いこなしていろんな作業や仕事をできるようになりたい人はたくさんいると思うし、そういう人の自主学習を支援するサービスがあってもいいんじゃ無いかと思う。
工学部生としては、CADのソフトを配布して欲しいです・・・(工学部)
反転授業を試してみてもいいのではないか(理学部)
直接、必携PC制度の印象を尋ねてみました。
やや肯定論が多いですが、ほぼ半数ずつという結果に。その理由を次の質問で聞いています。
「思う」派では、120名中48名が、「思わない」派では、90名中69名が理由を書いてくれました。自由記述から要約して、それぞれ多かった理由を図にあげます。
「思う」派からいくつか回答を掲載しておきます。
学内の情報を入手しやすい。英語学習に便利。授業内容、資料がBb9でよく分かる。 ある程度どこでも利用できうので、スキマ時間を有効に使える。(生物生産学部)
必携でなければパソコンを入学時に買おうとは思わなかっただろうから。実際はゼミの資料やレポートを作成するのにかなりの頻度で使っており、持ち運べるパソコンを持っていて良かったと感じる。(教育学部)
1年生の間では使いませんでしたが、実際のところ、これから学年が上がるにつれて、WordやExcelを使用する機会はどんどん増えてきますし、自分のではないパソコンや必要になって急いで買った慣れないパソコンで、論文などの大切なデータを扱うことに対して、不安しかないからです。(理学部)
レポートの製作や、発表の準備などにPCは必要だと思うから。しかし、もともとPCを持っていない人にとっては、入学金や授業料を払う、お金のいる時期にPC購入を必要とされるので、経済的に苦しいと思う。なので、必携化するなら、PC購入の期間を入学までにするのではなく、入学後何カ月間かにするなどの猶予を持たせた方が良いと思う。(総合科学部)
以下に「思わない」派の回答をいくつかあげます。
個人的には、自宅に自分のPCがあると圧倒的に便利なので、満足している。しかし、授業などで自分のPCが必要となったことはこれまで一度もなく、図書館のPCを上手に活用すれば、自分のPCを持っていなくても事足りるのではないかと思う。ほとんどの学生がスマートフォンなどでインターネットを使える環境にあるので、もみじやメールなどのチェックにはPCは必要ない。経済的に負担の大きい学生もいると考えると、必携化する必要性は感じられない。(教育学部)
まず、必須PCを持つことは良いことだと思う。しかし、必須になったからといって、大学内で自由に使えるPCを減らすのはやめてほしい。今回特に目立ったのは西図書館のPCが半分以上無くなったことだと思うが、元々図書館にあったPCを減らす理由が分からない。PCを持ち運ぶのは大変で荷物になるため、できれば大学内では図書館のPCなどを使いたいし、実際その機会の方が圧倒的に多い。必須PCには賛成だが、だからといって大学内のPCが減るのはおかしいと思う。減ることによって、人が多い時にはPCが使えないなどの状況も生まれ、非常に不便だった。(工学部)
あろうがなかろうが、パソコンは買っていた。 パソコンを買うのを急かされる感じがあってあまり嬉しくはなかった。生協がパソコンを選んでくれるのは嬉しいのだが。 先生たちはまだ手探りな感じがあったので、正直に言えば今年はあまり変化はなかったのではないかと。ある専門の授業で、必携ということになったので、Mathematicaを、使ってみましょうか、という授業は有って、少し使いましたが、実際に私たちがパソコンを持っていく必然性のある授業ではなかったので、変化はなかったようなものだと思います。(理学部)
iPadじゃだめなのでしょうか。今やWordもExcelもPowerPointもダウンロード可能で、持ち運びにも便利です。ネットに繋げば、大きな画面で情報を手に入れられます。(文学部)