強相関量子多体系において、低エネルギー自由度に基づく有効ハミルトニアンの構成は、複雑な多体現象を理解するための重要な手法となっている。しかし、励起状態間の強い混成や avoided level crossing が存在する場合、摂動論に基づく従来の方法では、低エネルギー部分空間の選択や準粒子描像の維持が困難になることがある。
本講演では、状態空間の「最小変形」の原理に基づき、非摂動的に有効ハミルトニアンを構成する数値的手法について紹介する。本手法では、有限クラスター上でのブロック対角化と numerical linked-cluster 展開(NLCE)を組み合わせることで、相互作用によって変形した低エネルギー状態を安定に追跡し、有効模型を系統的に導出する。特に、低エネルギー部分空間と参照状態空間との距離を最小化する条件を用いることで、状態混成が強い領域においても、連続的な準粒子描像を保ったまま有効理論を構成できることを示す。
さらに、量子スピン系やダイマー磁性体への応用を通じて、本手法が従来の摂動的有効模型では記述が困難な領域に対しても有効であることを議論する。
相互作用が2点間の距離の冪r^{-\alpha}で減衰する長距離相互作用系は重力、プラズマ、磁気双極子、Lennard-Jonesポテンシャルなど、自然界に偏在し、多様な物理現象の根幹を支えている。また、近年は冷却原子系、Rydberg原子系、イオントラップなどの、実験技術の飛躍的進展により、様々な冪指数の長距離相互作用を持つスピン系が実現され、量子多体系の熱平衡化や情報伝播などの統計物理学の根幹をなす問題を実験的に検証することが可能となった。
このような背景を踏まえ、本研究では、長距離相互作用スピン系におけるエネルギー・スピン拡散を解析する。
まずは、典型的な長距離相互作用古典スピン系として、長距離相互作用横磁場IsingモデルおよびXYZモデルを対象とし、熱力学的示量性を満たす冪指数 $\alpha > D$ の領域におけるエネルギー拡散を調べた。一次元系では、通常拡散と異常拡散の両方が観測され、異常拡散はエネルギーカレント同時刻相関の異常な増大に起因することが示された。任意次数の結合キュムラントに対する「キュムラントクラスタリング定理」を一般次元において証明し、これをエネルギーカレント同時刻相関に適用することで、一次元系における通常拡散の十分条件が、モデルによらず $\alpha > 3/2$ であることを導出した。また、ゆらぐ流体力学の枠組みにより、$\alpha < 3/2$ において Lévy 拡散を示すことを確認し、この条件が最適であることを示唆している。さらには、$D \geq 2$ の高次元においては、$\alpha > D$ の範囲で通常拡散が生じることを示した。[1]
次に、長距離相互作用XXZモデルについて、$\alpha > D$の領域におけるスピン拡散を調べた。こちらもエネルギー拡散の同様の理論構築が可能であり、1次元、高次元のいずれの場合においても、エネルギー拡散と同様のスケーリングが得られた。[2]
これらの理論的な枠組みは、幅広いクラスの長距離相互作用系における輸送現象にたいして適用可能であると期待している。
[1] HN and K.Saito, Phys. Rev. Lett. 135, 147102 (2025).
[2] HN and K.Saito, in preparation.
有限温度・有限密度QCDにおいて、一次相転移線とその端点であるQCD臨界点の存在が期待されているが、格子QCDでは有限密度領域で符号問題が生じるため、その決定には至っていない。しかし、近年、複素パラメータ空間における分配関数の零点であるリーヤンゼロ(LYZ)と、その熱力学極限に対応するリーヤンエッジ特異点(LYES)を用いた相構造の解析が注目されている。しかし従来の解析では、有限体積で得られるLYZを無限体積で定義されるLYESと直接同一視しており、有限体積効果の扱いに検証の余地がある。
そこで講演者らは、2つのLYZの虚部の比として定義するリーヤンゼロ比(LYZR)を導入し、有限サイズスケーリングに基づいて臨界点を特定する手法を提案してきた。本講演では、LYZ/LYESを用いた相図研究の現状を概観し、LYZR法を紹介する。そのうえで、重クォーク極限の格子QCDへの応用、有効模型を用いたLYZとLYESの定性的関係の解析、さらに現実質量QCDへ向けた展望について議論する。
我々は、対象系にフォンノイマン型測定装置とCaldeira-Leggett的環境を結合させた、系全体の量子実時間発展を数値的に計算する新しい方法を開発した。これは近年発展してきた、経路積分をレフシェッツ・シンブル法で実行する方法を格段に上回るものであり、巨大な自由度をもつ環境と長時間発展に対する計算を可能にする。この方法を用いて、波束の収縮を弱値の観点から理解できることを示す。
Wilsonフェルミオンを用いた単一フレーバー格子Gross–Neveu模型の相構造について、角転送行列繰り込み群法を用いて得られた結果を報告する。パリティ対称性の秩序変数である擬スカラー凝縮およびエンタングルメント・スペクトルを解析することで、自明相、Aoki相、トポロジカル絶縁体相を同定し、それらの相境界と対応するユニバーサリティ・クラスを議論する。さらに、フレーバー数無限大極限の相図と単一フレーバーの場合との顕著な違いについても言及する。
We investigate the role of generalized symmetries in driving non-equilibrium and non-linear phenomena, specifically focusing on turbulent systems. While conventional turbulence studies have revealed inverse cascades driven by conserved quantities integrated over the entire space, such as helicity in three spatial dimensions, the influence of higher-form symmetries, whose conserved charges are defined by integration over subspaces, remains largely unexplored. We demonstrate a novel mechanism where higher-form symmetries naturally induce a self-similar inverse cascade. Taking axion electrodynamics with non-linear topological interaction as a paradigmatic example, we show that the conserved charge associated with its 1-form symmetry drives the system toward large-scale coherent structures through a universal scaling behavior characterized by analytically determined scaling exponents. Our findings suggest that higher-form symmetries can provide a fundamental organizing principle for understanding non-equilibrium phenomena and the emergence of coherent structures in turbulent systems.
超新星爆発や連星中性子星合体では、ニュートリノがエネルギーなどを伝搬する役割を担うことで爆発ダイナミクスや元素合成などの天体物理を左右していることが知られている。一方でそのような高密度環境下では、ニュートリノ同士の自己相互作用が集団振動と呼ばれる非自明なフレーバー混合をもたらすと考えられている。そのため天体内部をニュートリノが伝搬する際には、単なる衝突過程による非平衡な輸送現象だけでなく、フレーバー間の干渉も含めた量子運動論として理解しなければならない。
本発表では、高密度なニュートリノ系が見せる非線形なニュートリノ振動現象が、その系のフレーバー分布をどのように変化させ、どのようにフレーバー変換に対し安定化していくか議論する。
汎函数繰り込み群を線形シグマ模型に適用して、 Nf=2, Nc=2のQCD物質における相構造、ハドロン質量、トポロジカル感受率を、特にU(1)軸性アノマリー効果に着目して調べた。その結果、メソンに対するU(1)軸性アノマリー効果が、有限温度・有限密度中で増大することを見出した。また、このアノマリー増大にもかかわらず、高密度領域におけるトポロジカル感受率は、カイラル対称性の回復に伴い、温度に関わらず常に抑制されることが分かった。また、カイラル対称性の回復により、高温度および高密度領域においてカイラルパートナーの質量縮退が実現されることも示した。ここで得た知見は、符号問題のない2カラーQCDの格子計算に対して、媒質中における軸性アノマリーの性質に関する有用な情報を提供すると期待される。 (参考文献: 2606.31040 [hep-ph])
宇宙の物質反物質の非対称を説明する電弱バリオン数生成のシナリオにおいては、時空に依存した真空期待値を背景とするプラズマ中での粒子数輸送を取り扱う必要がある。通常、これは準粒子描像を用いたボルツマン方程式によって記述され、CPを破る背景が準粒子の分布を変化させることで非対称性が生まれる。本講演では、このボルツマン方程式を場の理論から導く従来の手法について説明し、そこでは取り扱われてこなかった効果や問題点について議論を行う。さらに、近年我々が提案した、より見通しが良く一般的な系に適用可能な系統的な導出手法についての説明を行う。
有限温度・有限密度のほか、磁場・電場・アイソスピン・回転など様々な外場のもとでのQCD系の性質がQCD相構造を明らかにするために考察されてきた。加速系もその一つである。加速系の重要な性質として、加速系には時空のホライゾンが存在し、それによって有限加速度系の真空はウンルー温度と呼ばれる温度を持つことが知られている。これは対称性の破れた真空状態を加速すると、対称性が回復する相転移が起こることを意味する。近年には加速系における臨界温度の変化がモデルや格子計算から解析されている。我々は高温摂動QCDによる解析から加速度が熱状態に与える変化について計算しその結果を発表する。
近年の対称性の一般化やそれに伴うゲージ理論の理解の発展により、シータ項をもつ 4d Yang-Mills 理論の可能な gapped phase をperimeter law に従う 線演算子で分類することができるという理論的予測 (Wilson-'t Hooft classification)に確証を与えている。その分類から、N=4 ではSPT stacking のない、S,T 変換で自身に戻る exotic なgapped phase の存在が予言されている。これは、\mathcal{N}=4 Super YM 理論の S-T orbit からもconsistent な存在で興味深い研究対象である。
そこで、本研究では full の SL(2,Z) duality をもつ Cardy-Rabinovici model をより SU(N) YM 理論に近い拡張をすることにより、その exotic gapped phase の実現を目指す。従来の Abelian 型 CR model では、このようなgapped phase は実現できなかったが、YM 理論に近いset up として N 次対称群 S_{N} でゲージ化する semi-abelianize することで exotic gapped phase が実現しうるポテンシャルの構成ができる。
アクシオン電磁気学は、動的なアクシオンと電磁場の相互作用を記述する有効理論であり、素粒子論・宇宙論・物性物理学にわたって広く研究されてきた。特にゼロ温度では、高次形式・高次群・非可逆対称性など、多様な一般化対称性が現れることが知られている。しかし、非平衡ダイナミクスにおいては、どのような散逸効果が支配的となるかを含め、その低エネルギー有効場理論は未だ得られていない。
本講演では、非平衡系の実時間発展を記述するSchwinger–Keldysh形式を用いて、アクシオン電磁気学の低エネルギー有効場理論を構築し、この系に現れる散逸効果を系統的に導出する。また、局所平衡系における揺動散逸関係を、θ項に代表される非線形効果まで含めて解析する。更に、この有効場理論が有する対称性構造を解析し、非平衡系において新奇な一般化対称性が創発する可能性について議論する。本研究は、アクシオンと同様の電磁相互作用をもつギャップレス自由度に普遍的な非平衡現象を、一般化対称性の観点から理解するための新たな視点を与える。
3次元強磁性体における強い双極子相互作用と立方異方性の競合は、極めて豊かで複雑な相構造を生み出す。1970年代のAharonyとFisherの議論以降、くりこみ群などを用いた理論的研究が進められてきたが、その解析的な難しさゆえに相転移の性質を完全に決定づけるのは困難であった。本研究の目的は、モンテカルロシミュレーションを用いてこの複雑な相構造の可能性を直接的に制限することである。
我々は、オーダーパラメータの横波制約を忠実に実装した格子模型を導入し、制約を保存する局所的なメトロポリス更新とゼロモードのグローバル更新を組み合わせたMCMCアルゴリズムを構築した。最大 48^3 の立方格子上でシミュレーションを実行した結果、理論的に許容されるシナリオを大きく絞り込むことに成功した。
本発表では、主要な臨界指数やビンダーパラメータ、そして回転対称性の創発を評価するためのオーダーパラメータを数値的に計算し、他の手法との比較および臨界点における回転不変性の創発について議論する。
3次元量子重力の球対称セクターに注目し、その分配関数における
AdS_3とdS_3の間の解析接続に伴うStokes現象を議論する。
より具体的には、バルクのミニスーパースペースと境界のゼロモード
の分配関数が同じ解析関数で記述され、同一のStokes現象を示すとい
う結果を得た。
Riemannゼータ関数の非自明零点を固有値とする1次元Schrodinger作用素を,逆スペクトル変換により数値的に構成した.さらに,得られたポテンシャルを調和振動子基底で行列化し,その幾何構造を解析した.その結果,Riemann零点から得られる行列幾何は,GUE固有値列から同様に構成した場合と同じ普遍クラスに属し,GOE・GSEとは明確に異なることを見出した.この結果は,Riemann零点のGUE普遍性を点列の相関ではなく,逆スペクトル行列幾何として捉える新たな視点を与える.この発表は,東京理科大学の堺和光氏との共同研究に基づく.
格子カイラルゲージ理論の構成における中心的課題の一つは、連続理論のゲージアノマリー相殺機構を有限格子間隔で実現することである。本講演では、非可換ボゾン化に基づき、二次元非可換カイラルゲージ理論に対応するボゾン理論の格子定式化を提案する。このボゾン化を経由したアプローチでは、フェルミオンによる記述に伴う技術的な微妙さを避けつつ、アノマリーを古典的な作用の性質として明示的に扱うことができる。この定式化に基づき、連続理論と同じアノマリー相殺条件のもとで、アノマリーを記述する格子作用のバルク依存性が有限格子間隔で相殺することを説明する。
Inspired by the discovery of triangular equivalence, called the infrared triangle, and its universality (Strominger, 2017), the infrared physics has been intensively studied in various areas of physics, including gauge theories in asymptotically flat spacetime. The infrared physics has also been investigated in the context of cosmology, namely inflation (Tanaka and Urakawa, 2017, 2026). However, the spacetime during inflation is not asymptotically flat but contains causally isolated regions. In this talk, I show the correspondence of the infrared physics in QED with that in cosmology. Then, I extend the formulation in QED by separating asymptotic region, which imitates the separate universe approach in cosmology.
At asymptotically high baryon density the QCD coupling becomes small and quark matter is expected to form a colour superconductor. In the two-flavour colour superconducting (2SC) phase the standard picture leaves the some quarks unpaired due to repulsive interaction.
We utilise the renormalization group (RG) analysis of quarks near the Fermi surface and evaluate possibility of these repulsive quarks forming cooper pairs by what is known as the Kohn-Luttinger effect. We show that the crossed one-loop diagram causes enhancement of certain channels due to the long-range interaction generated by the dynamically screened magnetic gluons. Decomposing the RG equations into partial waves labelled by spin and orbital angular momentum, we find that this Kohn-Luttinger-type contribution is attractive precisely in the (S,L)=(1,J-1) for J=2 channels for which the marginal tree-level term of the colour-symmetric interaction is also attractive at leading order. Among the pairings of quarks that are symmetric in both colour and flavour, such as the $dd$ pairing proposed for the 2SC+$dd$ phase, the ${}^3P_2$ partial wave is thereby singled out as the channel most strongly driven towards the BCS instability. The selected channel coincides with the pairing channel of neutron superfluidity and suggests a form of quark--hadron continuity in two-flavour symmetric matter.
In this work, we investigate whether hadrons dissociate into quarks and gluons in highly curved de Sitter spacetime. As a candidate observable for distinguishing the phases of QCD matter, we compute a Euclidean energy density and compare its behavior in the hadronic and quark–gluon phases. We find that, in the low-temperature regime, the Euclidean energy density of a hadron gas is lower than that of conformal quarks and gluons, indicating that the hadronic phase is preferred according to this observable. The connection between this observable and the hadron-to-quark-gluon crossover is left for future work.
近年、冷却原子・冷却分子による系が量子現象探索のプラットフォームとして注目されている。量子少数系の特異な現象の代表例がEfimov効果である。Efimov効果とは、s波散乱長がFeshbach共鳴によって増大した際、離散スケール不変性を示す3粒子束縛状態が可算無限に現れる現象である。
本研究では、このEfimov状態について、1/r^3に比例する磁気双極子相互作用を含む系におけるEfimov状態の普遍性を明らかにした。1/r^3ポテンシャルおよび引力的な 1/r^2ポテンシャルを含むシュレーディンガー方程式の解析解を、Quantum Defect Theoryと呼ばれる手法を用いて求め、束縛エネルギーや波動関数の解析表式を導出した。
The relaxation dynamics of subsystems in isolated quantum many-body systems is a central problem in nonequilibrium quantum physics. In recent years, symmetry restoration has emerged as a useful perspective for characterizing such relaxation. However, how the band structure and geometric properties of a system affect symmetry restoration remains largely unexplored. Here, we investigate the restoration of space-inversion symmetry in the nonequilibrium dynamics of free fermions on a honeycomb lattice, using the entanglement asymmetry (EA) as a quantitative measure of symmetry breaking. We prepare the initial state as the ground state of an inversion-symmetry-broken Hamiltonian with a finite sublattice energy offset \(M \neq 0\), and study the time evolution of the EA after a quantum quench to the inversion-symmetric point \(M=0\). We find that, despite the inversion symmetry of the post-quench Hamiltonian, inversion symmetry is not restored at the subsystem level. We show that this absence of symmetry restoration is controlled by the geometric properties of the subsystem. Furthermore, by employing a semiclassical effective theory, we demonstrate that the suppression of symmetry restoration originates from quasiparticles associated with a flat band.
QCD研究の終着点のひとつとして、Phase Diagram (PD)の完成が挙げられる。Lattice QCD (LQCD)では、符号問題の回避策が徐々に編み出されつつあり、ある程度は信頼のおける有限密度領域の計算結果が得られている。しかし、ハドロン物質やクォーク物質における物理的描像の詳細を解明するためには、現象論模型での解析が不可欠である。そこで、本研究では、熱力学幾何学と呼ばれる相構造の解析方法を紹介する。従来の相構造の解析手法と異なり、この方法は、本来order parameterの概念が存在しないはずの、ハドロン共鳴ガス(HRG)模型の範囲内でもPDを計算できる、非常に有用なツールである。具体的には、熱力学ポテンシャル\phi=P/Tから構成されたmetricから得られるスカラー曲率の、R=0という基準を、ハドロンからクォークへの転移点とみなし、PDを作成する手法を採用する。ちなみに、体積排除効果(EVE)を導入した先行研究はあったが、高密度領域や虚数化学ポテンシャル領域において実行したのは、我々が世界初である。重要な帰結としては、Roberge-Weiss転移温度でR=0となることを確認したのち、実数領域でLQCD計算と無矛盾な結果が得られた。さらに、付随的にHRGのバリオン感受率とQCDのCritical Pointとの興味深い関係を発見できた。
キタエフハニカム模型は、厳密可解な量子スピン液体を記述模型として注目され、近年は α-RuCl_{3} がその候補物質として実験も進んでいる。
キタエフハニカム模型の奇跡的な点は2つあり、
(1) 各プラケット上の \mathbb{Z}_{2} フラックス演算子が全て可換で保存する
(2) フラックス演算子の値を固定するとフリーフェルミオンになる
という点である。我々は、キタエフハニカム模型の自然な拡張として、(1)を満たす超対称なスピン-マヨラナフェルミオン模型を構築することに成功した。
残念ながら(2)は満たさず、相互作用によって可解模型にはならないが、この超対称な拡張キタエフ模型を、超場形式による平均場近似や摂動論によって解析した結果を解説する。
量子臨界系に不純物欠陥を導入すると、欠陥上に繰り込み群流れが誘起され、新たな赤外固定点に流れる場合がある。このような赤外固定点は欠陥共形場理論(defect CFT)によって記述されることが知られている。本研究では、三次元 N フレーバーゲージ理論に SU(N) スピン不純物を導入した模型を考える。近年発展しているアノマリーの理論と、ラージ N 展開やラージ電荷展開などの半古典的手法を組み合わせることで、この模型の赤外固定点に現れる defect CFT の性質を調べる。
ハミルトニアン形式の格子ゲージ理論は符号問題を回避できうる枠組みとして期待されているものの、連続極限との接続などまだわかっていないことが多い。本研究では連続極限に近い設定でのゲージ理論の解析手法を提案、具体計算を行った。この設定ではゲージ理論は量子誤り訂正符号の理論で記述され、エニオンを用いたトポロジカルな操作によって解析ができることがわかる。
本研究では、カノニカル分配関数を用いることで粒子数に注目し、有限密度格子QCDの相構造を調べる。位相分布がある領域では、U(1)対称性をもつことを示し、さらに符号問題を回避しながらポテンシャルなどの量を計算する。
共形場理論(CFT)は、臨界現象を普遍的に記述する枠組みであり、相関関数やスケーリング次元などを通じて長距離物理を特徴づける。よく知られた応用では孤立した固定点を扱うものが多いが、CFT が exactly marginal 演算子を持つ場合には、その変形により連続的な定点の族、すなわち共形多様体が生成される。共形多様体は、従来、実結合を持つユニタリー理論の文脈で主に研究されてきたが、近年では開放量子系などにおいて、有効的な結合定数が複素値を取る状況が現れている。そこで本発表では、exactly marginal 変形により生成される共形多様体を複素化することで、非ユニタリーではあるが共形対称性を保つ理論族を議論する。さらに、この考え方を欠陥を持つ CFT にも拡張し、結合空間そのものが複素化されるとき、どのような新しい構造が現れるのかを考察する。
冷却原子系は、その操作性の高さが特徴であり、原子間の相互作用を自在に制御することが可能である。これにより、冷却原子系では様々な強相関系を実現してきた。その例として、ユニタリーフェルミ気体という強相関フェルミ気体が挙げられる。ユニタリーフェルミ気体の2体相関を特徴づける物理量として、Tanコンタクトという値を定義する事が出来る。Tanコンタクトによって、運動量分布や熱力学量に関する普遍的な関係式が導出された。近年、2体相関を越え、3体相関を特長づける3体コンタクトという物理量が理論的に提案され、普遍的な関係式が存在することが知られているが、2体相関に比べると理解が進んでいない。そこで、ユニタリーフェルミ系における3体コンタクトの測定を行い、本ポスターではその成果を発表する。
We propose a finite modular symmetric inflationary model in which a Coleman-Weinberg potential is generated by heavy vector-like quarks coupled to a complex modulus $\tau$ through modular forms. The imaginary part of the modulus is identified with the inflaton, while the real part plays the role of an axion-like field. We show that the model can yield inflationary predictions consistent with current cosmological constraints, including those from Planck, and discuss the cosmological role of the axion-like degree of freedom in this framework.
ヘリシティ(偏光)の自由度を考慮すると、フォトンのHamilton方程式はBerry曲率による補正を受けることが知られている。本講演では、この方程式がBerry曲率だけでなく、運動量空間における量子状態同士の“距離”を与える計量である量子計量によっても補正されることを説明する。さらに、現象論的応用として曲がった時空における光の重力レンズを考える。量子計量を考慮したHamilton方程式を用いることによって、重力場について非線形な応答を示す非線形Hall効果による補正項が量子計量に起因して現れることについて議論する。
宇宙初期のニュートリノ脱結合過程では、宇宙膨張に伴って弱い相互作用が熱平衡状態を維持できず、ニュートリノ分布は非平衡状態へと移行する。本発表では、この非平衡ニュートリノが電子や核子と相互作用することにより、電子系に磁場に沿った電流である「有効カイラル磁気効果」が誘起されることを説明する。さらに、この効果に伴うカイラルプラズマ不安定性を介した磁場生成機構について議論する。
I will present a new method for the finite-mode Caldeira-Leggett model with Gaussian initial states. Instead of constructing the large matrix required in the path-integral calculation, the method only requires solving the Heisenberg equations to evolve the covariance matrix of the system. For environments with a small number of oscillators, the results are in excellent agreement with existing path-integral results. We then apply the method to systems with a large number of oscillators, for which path-integral calculations become computationally expensive. These large-scale calculations show that both the diagonal and off-diagonal decoherence factors approach their thermal limits.
大分配関数を粒子数で展開したカノニカル分配関数に着目して、有限温度・有限密度SU(2)格子ゲージ理論の高密度領域における相構造や、状態方程式を研究した。クォーク質量が重いとした場合を考え、モンテカルロシミュレーションを行った。カノニカル分配関数を計算し、それを再構成することで粒子数密度や圧力、音速、カイラル凝縮などといった熱力学量を求めた。粒子数で分けることで符号問題を回避することに成功した。これらの熱力学量やPolyakov loopなどから相構造についても考察する。
中性子星内部は低温・高密度QCDを探る重要な場であり,クォーク物質の存在形態は中性子星の状態方程式と観測量に大きく影響する。これまで、ハドロン相からCFL相へのクロスオーバーやクォーキオニック物質の出現を考慮した中性子星状態方程式が調べられてきた。本発表では、2フレーバーカラー超伝導 (2SC) 相へのクロスオーバーを仮定した状態方程式とクォーキオニック物質のモデルについて、パラメータ依存性を評価し、中性子星の質量・半径関係と潮汐変形率を従来の状態方程式における結果と比較する。
カイラル磁気波(CMW)は、軸性電荷とゲージ場の揺らぎの相互作用によって生じる代表的なカイラル輸送現象である。本研究では、強結合系におけるCMWを調べるため、ゲージ・重力対応を用いて準固有振動(QNM)の解析を行った。特に、本研究で採用するD3/D7モデルは有限のフェルミオン質量を導入することが可能であり、QNMの質量依存性や電荷密度依存性を系統的に議論できるという強力な利点を持つ。本ポスターでは、QNMの電荷密度依存性に焦点を当て、その分散関係の振る舞いについて解析結果を報告する。
有限密度格子QCDにおいて、グラディエントフローによる粗視化を行ったときに、粗視化された配位で構成される分配関数が不変になるような、ボルツマンの重みの変化を議論する。大分配関数をフガシティー展開すると、化学ポテンシャルの効果はフガシティーを通してのみ物理量に影響を与えるので、その展開係数であるカノニカル分配関数が粗視化に対して不変であるとして、クォーク行列式の中のホッピング項の変化を調べる。
孤立量子系のダイナミクスはシュレディンガー方程式により記述され、ユニタリ時間発展と
して与えられる。一方、外部環境と相互作用する開放量子系のダイナミクスは一般に非ユニタリであり、全体系のユニタリ時間発展を環境自由度について縮約をとることで表現できる。開放量子系の記述としては、解析のしやすさなどの理由から時間非依存Gorini-Kossakowski-Sudarshan-Lindblad(GKSL)方程式[1,2]が広く用いられる。一方で、ミクロなハミルトニアンからGKSL方程式を導く通常の手続きでは、ボルン・マルコフ・回転波近似など複数の近似を要する。
本研究では、全体系のハミルトニアンおよび初期状態に物理的に自然な仮定を課した場合、GKSL方程式を全体系のユニタリ時間発展から近似なしで導くことは不可能であることを示した[3]。この結果は、GKSL方程式の導出に近似が必要となることが、単なる技術的な制約ではなく、厳密な縮約ダイナミクスとマルコフダイナミクスの構造的な相違に由来することを示している。
[1] V. Gorini, A. Kossakowski, and E. C. G. Sudarshan, Completely positive dynamical semigroups of N-level systems. Journal of Mathematical Physics, 17(5), 821-825 (1976).
[2] G. Lindblad, On the generators of quantum dynamical semigroups. Communications in mathematical physics, 48.2, 119-130 (1976).
[3] H. Nakabayashi, Exact Markovian dissipation requires singular energy resources, arXiv:2606.19510
巨大な中性子星の内部には、通常相のQGPとカラー超伝導相の2SCという、異なるクォーク物質が隣り合う「境界」が存在すると考えられる。本発表ではこの境界における物質の移動(輸送現象)に着目し、クォークが反射してホールに変わる「アンドレーエフ反射」等の現象を議論した。従来のBdG法とは異なり、非平衡グリーン関数を用いた相対論的定式化を行い、エネルギー差や運動量によって電流がどのように変化するかを解明した。本発表は、香港大のTingyu Zhang氏、Jagiellonian大のMariusz Sadzikowski氏、東京大の田島裕之氏、佐賀大の橘基氏との共同研究(arXiv:2606.30521[nucl-th])に基づく。
本発表では、大域的高次対称性の破れに伴う南部-Goldstoneモードを、空間・時間方向の背景場が同時に存在する下で一般的に分類する。従来研究では一方の背景場のみが考慮されてきたが、本発表では両方挿入した場合の分散関係とカウンティングルールを議論する。
近年、polarized IKKT行列模型を端緒として、ラージN還元型行列模型のホログラフィックな理解が進展している。しかし、超対称ヤン–ミルズ型行列模型では複素パフィアンに起因する符号問題のため、大きな行列サイズでの数値計算は容易でない。この点につき、有限次元行列を用いてラージN極限での振る舞いを系統的に近似する手法として、正則化マスターフィールド近似法がある。この手法は有限個のシュウィンガー-ダイソン方程式を可能な限り満たすという要請を課してラージNの理論を正則化するものであり、符号問題が原理的に存在しない。本研究ではこれを質量変形超対称ヤン-ミルズ型行列模型に適用し、効率的かつ高精度な数値計算が可能であることを示す。
AdS/CFT対応において、有限温度量子系の実時間応答は双対なAdSブラックホール背景上での摂動によって記述される。ブラックホール準固有振動は境界理論における遅延Green関数の極に対応し、熱平衡への緩和過程や非平衡ダイナミクスを特徴づける。本研究では、この準固有振動スペクトルを解析的・非摂動的に理解することを目的として、完全WKB解析を用いた定式化を行う。摂動方程式に対する複素平面上のStokesグラフと特異点構造を解析し、AdS境界および事象の地平面における境界条件を完全WKB解析の接続問題として捉える。これに基づき、準固有振動の量子化条件を構成する方法と熱的相関関数の極構造との関係について報告する。
ゲージ・重力対応におけるD3-D7モデルを用いた近年の解析により、電流駆動下の非平衡定常状態において、三重臨界点の存在が指摘されている 。この三重臨界点における臨界指数のほとんどは平均場理論の値と一致するが、一部の臨界指数は一致しないことが報告されている。そこで、本研究ではこの非平衡三重臨界点近傍における臨界現象と有効温度を詳細に解析した。本発表ではこれらの解析結果について報告する。
一般に非可積分なハミルトニアンの固有状態とそのエネルギー固有値を解析的に得ることは困難だが,制限スペクトル生成代数(Restricted Spectrum Generating Algebra, RSGA)が存在する場合,あるラダーオペレーターQ^†とseed state:|S_0>を用いて(Q^†)^n|S_0> (n=0,1,2,…) というエネルギーが等間隔になるような固有状態のセットを解析的に得ることができる.これらの状態は量子多体傷跡状態(Quantum Many-Body Scar, QMBS)と呼ばれる固有状態熱化仮説を破る特異な状態として近年注目されている.
RSGAを満たす系の構成は∀n, H_a(Q^†)^n|S_0>=0となるようなscar annihilator (ハミルトニアンの一部の項)H_aとQ^†, |S_0>の組を見つけることが肝になるが,QMBSを持ついくつかの系のH_aを注意深く観察すると,よりlocalなannihilatorに分解できることがわかる.すなわちH_a=Σ_j h_jとしたとき,∀j,∀n, h_j(Q^†)^n|S_0>=0 となるようなある種のQMBSに対するフラストレーションフリー的な分解が存在する場合がある.
本研究ではQMBSを持ついくつかの系のscar annihilatorのlocalな分解を提示し,そのようなlocal annihilatorを求めることで元の模型に対してRSGAを維持するような異なる相互作用やサイト依存するランダム性を加えられること,またもともとあった相互作用を長距離にしたものを加えられることなどを示す.またRSGAを満たす新たな模型を提示し,それがRSGAを満たす既知の模型のいくつかを特殊な場合として含んでいることを示す.
We construct non-Abelian vortices in a renormalizable four-dimensional SO(3) gauge theory Higgsed to the tetrahedral group A_4 by a Higgs field in the spin-3 representation. Since the vacuum manifold has a non-Abelian fundamental group, the resulting vortices can exhibit non-Abelian fusion and Aharonov–Bohm effects. We explicitly obtain axisymmetric finite-tension vortex solutions whose asymptotic holonomies correspond to order-two and order-three elements of A_4, and numerically analyze their profiles and tensions. In particular, we find that, at specific ratios of the Higgs and gauge-boson masses, the vortices exhibit behavior analogous to that of BPS vortices in the Abelian-Higgs model. We further show that, in the low-energy limit, these vortices are described as defects associated with a non-invertible one-form symmetry of the A_4 discrete gauge theory. Our construction provides an explicit finite-tension realization of vortices originating from a non-Abelian fundamental group, together with a renormalizable ultraviolet completion of defects associated with non-invertible symmetry.
結晶カラー超伝導(CCSC)クォーク芯はグリッチの角運動量貯蔵体の候補だが,従来の議論は剛性+ピン止めの静力学で止まっていた.一方,実際に観測されるグリッチに対応する観測量は,静的な角運動量のバンプだけではなく,時間に依存した星の角速度の時間変化である.本研究は渦の相互摩擦を初めて評価し,ギャップレスな Bogoliubov–Fermi 海の渦ホロノミー散乱によって,渦から解放された角運動量がどのように中性子星のコアへと伝わるか,その時間発展についての定量的評価を与える.さらに,コアに伝わった角運動量が,実際に観測にかかるクラストの角運動量にどのように転換されるのかを示し,観測量である星の角速度の時間発展との比較を目指す.
格子模型であるXY-模型及びU(1)格子ゲージ理論については、幾つかの次元で修正Villain定式化による厳密な双対変換が知られている. 本講演ではこれらの連続体模型であるCompact Scalar模型及びU(1)gauge理論についての双対変換とBF理論の関係性について考察する。
アーベリアン・ヒグス模型において、ヒグス場が非線形質量波動解を形成する場合を考える。この時間・空間依存背景の下でゲージ場の運動方程式を導出し、その安定性を解析する。特に、背景場との相互作用によって生じる不安定モードとその成長率を調べ、不安定性に伴うゲージ場の生成率を評価する。これにより、ヒグスの非線形波動のゲージ場への寄与と、時間依存背景における非摂動的粒子生成の機構について議論する。
QCDを重力理論によって記述するAdS/QCD模型は,2つの境界を用いることでQCDのカイラル対称性を記述できる.そのような代表的模型に,弦理論から出発して構成されるD4/D8模型と,QCD・ハドロン理論から出発する次元脱構築模型がある.しかしこれらの模型は有限温度への拡張に困難がある.本研究では通行可能なワームホール時空のトイモデルを用いて,有限温度にも拡張可能なAdS/QCD模型を現象論的に構築する.
光吸収と光散乱は相補な測定法で、両方に活性ならスペクトルのピーク振動数は一致するはずが、マイクロ波領域では一般に一致せず、常に吸収の方が低周波数側に出ることが実験的に確認された。しかしその理由についてはこれまで説明ができていなかった。従来古典論でしか扱われてこなかった誘電緩和(とラマンの最低振動数モード)を、非調和3準位を持ちBose粒子の交換関係に従う素励起とみなし、環境熱浴として輻射場である電磁場と相互作用させ、熱平衡状態を設定したあと、プローブ光を入れて吸収と散乱を測定する、という計算を行うと、吸収の方が低周波数側に出る結果となり、実験結果を説明できた。
We propose a mechanism, in which a hidden magnetic field is transferred to the magnetic field in the Standard Model through magneto-hydrodynamic turbulence of the thermal plasma in the radiation dominated era. As a concrete model, we discuss the gauged U(1)_{mu-tau}, which does not have a direct coupling with the U(1)_Y magnetic field but couples to the Standard Model plasma.
Recent advances in numerical algorithms for matrix function evaluations have significantly improved the
stability and efficiency of large-scale computations in quantum field theory. In this study, we investigate
their applicability to the calculation of the quark propagator in lattice QCD. The quark propagator, which
involves the inversion and functional evaluation of large sparse matrices derived from the Dirac operator,
poses a stringent test for numerical precision and algorithmic robustness. We compare several iterative and
polynomial-based approaches, including Krylov subspace and rational approximation methods, focusing on
their convergence behavior and numerical stability under realistic lattice conditions. Our results demonstrate
how recent developments in numerical linear algebra can enhance the accuracy and reliability of quark propagator
computations, providing valuable insights for future high-precision studies in lattice gauge theory
(1+1)次元格子 \phi^4-理論の零温度および有限温度の性質を、テンソルネットワーク法の一種である uniform matrix product state(uniform MPS)を用いて熱力学極限で非摂動的に調べる。零温度では、uniform MPSを変分的に最適化する手法(VUMPS)により基底状態を求め、さらに励起状態を構成した。有限温度では、補助自由度を導入した purification により Gibbs状態を作り、各種熱力学量および相関関数を計算した。本発表では、必要となるテンソルネットワーク手法を概説した後、これらの計算から現在までに得られた結果や今後の展望を紹介する。本研究は現在進行中である。
デコヒーレンス下のカラーコードおよびトーリックコードにおけるトポロジカル相転移を、スタビライザー形式を用いて調べる。準局所的なトポロジカル・エンタングルメント・ネガティビティを導入し、混合状態におけるトポロジカル領域の形成過程を可視化する。さらに、その空間構造とパーコレーション、1-form対称性および論理量子ビットの残存性との関係を議論する。