高校生向け物理教育の中で計算機シミュレーションが有効と考えられる概念を抽出し、系統立てて教材開発を進め、開発成果の科学的な評価を行う方針で以下の研究を進めている。 1. 高校生向け物理教材開発 教育現場で実際に領される計算機シミュレーション教材を開発するためにも、物理教育の現状を十分に把握した上で教材開発の対象を決定することが望ましい。そこで、高校物理T、物理Uの学習指導要領の各項目について、生徒が理解しにくい項目を、開発教材を利用した実験授業実施を予定している高等専門学校で調査することから研究を開始した。調査結果に、挙げられた12の具体的な項目についての計算機シミュレーションの有効性を検討し電子教材開発の可能性についての検討を進めてきている。10月20日の段階で、「瞬間の速さ、加速度」、「力の分解」、「弾性力による位置エネルギー」の3項目について電子教材の枠組みと開発方針が決定しており、前者2項目については教材例まで完成している。完成した教材は、項目調査を行った高等専門学校の教育現場で順次確認し、現場の意見を取り入れた形での教材開発を進めており、年度末までにさらに2、3項目で教材例を完成させる予定である。 2. 教材のパッケージ化 教材開発者の手を離れて各種電子教材が利用されていくためには、独立した教材としてのパッケージ化を進めていく必要がある。また、前述した項目調査の結果で、指導要領中の「原子と原子核」、「課題研究」まで学期内に進むのは困難であるという時間的な問題も指摘されており、教材は授業とはできるだけ独立し学習者個人で自主学習できる形で提供するのが望ましい。このため、これまでに開発した教材について、背景にある概念の解説、電子教材利用時の視点、簡単な問い、関連する他の教材についての簡単なテキストを執筆している。10月20日の段階で、4教材についてテキストの執筆を完了しており、これらの情報を整理し教材配信サイト上で取得できる様、サイト構成の変更を進めている。年度末に向けて、全ての教材について学習に必要な情報を配信できるよう、テキストの執筆を進める予定である。 3. 実験授業による評価 本プロジェクトで作成した電子教材の一部を利用した実験授業を1月下旬から2月初旬にかけて行う予定で、現在、高等専門学校の現場と調整を進めている。これと並行して、実験授業で開発成果の科学的な評価を実施できるよう、コンテンツ評価法についての検討を進めている。また、教育現場での教材開発、教材の改良を促す目的で、本プロジェクトで利用しているActionScriptによる電子教材開発の入門講座を11月中旬に予定しており、年度末までに、教材開発に必要な情報の配信を開始する予定である。