TQFT 2020 Abstracts
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- 別所 拓実 (京大基研)
--- フロケ系・非エルミート系における拡張されたニールセン=二宮定理, Extended Nielsen-Ninomiya theorem for Floquet and non-Hermitian systems
近年トポロジカル相の非平衡系への拡張として、周期的駆動により実現されるフロケ系のトポロジカル相や、着目系の散逸・流入がある場合に実現される非エルミート系のトポロジカル相が注目を集めている。
こうしたフロケ系・非エルミート系ではニールセン=二宮の定理を破るモデルが実現可能なことが先行研究により知られている。
本研究では、フロケ系・非エルミート系で成り立つ、ニールセン=二宮の定理に代わる一般的な定理を与える。
- 関野 裕太 (理研仁科センター)
--- 強結合フェルミ気体におけるメゾスコピックスピン輸送, Mesoscopic spin transport between strongly interacting Fermi gases
本ポスター発表では、2 つの強結合フェルミ気体間を流れるスピン流の理論研究につい て報告する[1]。線形応答理論と拡張 T 行列近似を用いることで、強い粒子間相互作用が スピン輸送に与える影響を明らかにした。スピンバイアスが小さく、超流動転移 温度よりも高い場合、浴内のフェルミ気体の1粒子状態密度には擬ギャップが現れる。擬 ギャップが形成された結果、相互作用がない場合と比べてスピン流は大きく抑制されるこ とがわかった。一方で、スピンバイアスが大きく、浴内のフェルミ気体は大きくスピン偏 極している場合、励起状態としてフェルミ・ポーラロンが現れた結果、相互作用がない場 合と比べてスピン流は増幅されることが明らかになった。上記の結果から、冷却原子気体におけるスピン輸送測定は擬ギャップやポーラロン励起状態に敏感なプローブになり得る ことが提言できる。
[1] Y. Sekino, H. Tajima, and S. Uchino, Phys. Rev. Research 2, 023152 (2020)
- 秋山 進一郎 (筑波大数理)
--- テンソル繰り込み群による4次元有限密度複素スカラー場の理論の研究, Tensor renormalization group approach to four-dimensional complex \phi^4 theory at finite density
実空間繰り込み群の一種であるテンソル繰り込み群(TRG)は、モンテカルロ法が前提とする確率解釈を一切仮定しない、決定論的な数値手法である。そのため、TRGには原理的に符号問題が存在しない。さらに、その計算コストはシステムサイズに関して対数的にスケールするため、熱力学極限に匹敵する格子体積上で各種物理量を評価することができる。本研究では、Anisotropic TRGと呼ばれるTRGアルゴリズムを用いて、4次元有限密度複素スカラー場の理論を最大1024^4サイズの格子上で解析し、符号問題がある4次元系に対するTRGアルゴリズムの有効性を議論する。
- 金谷 和至 (筑波大宇宙史センター)
--- Improvement of the SFtX method based on the gradient flow in the study of finite temperature N_f_=2+1 QCD, Improvement of the SFtX method based on the gradient flow in the study of finite temperature N_f_=2+1 QCD
We study thermodynamic properties of lattice N_f_=2+1 QCD with improved Wilson quarks, adopting the SFtX method (small flow-time expansion method) based on the gradient flow. Extending the studies presented at previous JSPS meetings at Yamagata and Nagoya, in which preliminary studies on the renormalization scale and 2-loop matching coefficients are made using on-going simulations at the physical point, we revisit the case of N_f_=2+1 QCD with slightly heavy ud quarks to study the issue with the full statistics. We find that the mu_0_ renormalization scale of Harlander et al. improves the applicability and reliability of the SF¥textit{t}X method. On the other hand, no apparent improvements are seen with the 2-loop matching coefficients on this lattice, while contamination of O(1/N_t_^2^) discretization errors is suggested at N_t_ ¥le 10 in the equation of motion which was assumed in the calculation of Harlander et al.
- 岡 隆史 (東大物性研)
--- シュィンガー効果における幾何学効果, Geometric effects in the Schwinger effect
We study the nonperturbative pair production of particles induced by strong
rotating electric fields [1]. The excitations by tunneling become strongly
chirality dependent due to nonadiabatic geometric effects. The threshold,
i.e., Schwinger limit, even vanishes for particles with an optically
allowed chirality. We explain these phenomena through the twisted
Landau-Zener model proposed by M. V. Berry, and provide a quantitative
understanding in terms of the geometric amplitude factor. As a condensed
matter application, we make a nonperturbative analysis on the optically
induced valley polarization in 2D Dirac materials. Furthermore, in 3D Dirac
and Weyl materials with spin-orbit coupling, we predict the generation of a
nonlinear spin or charge current in the direction of the laser propagation.
- 渡辺 展正 (筑波大学)
--- Partial deconfinement for some bosonic matrix models, Partial deconfinement for some bosonic matrix models
We provide evidence for partial deconfinement by using lattice Monte Carlo simulations of some bosonic matrix models.
Partial deconfinement is the phenomenon that coexists the confined and deconfined phases in the system, in particular of several large-N gauge theories, at finite temperature.
By appropriately fixing the gauge, we observe that only submatrices deconfine in the analysis of the gauged-Gaussian matrix model and the Yang-Mills matrix model.
We also discuss the applications to QCD.
- 森 崇人 (総研大/KEK)
--- 非ガウシアン状態のvon Neumannエントロピーの一般公式, A general formula for the von Neumann entropy of a generic non-Gaussian state
von Neumannエントロピーは量子情報、物性、量子重力、非平衡物理とあらゆる分野で重要となる指標である。特にエンタングルメントエントロピーの計算においては、縮約密度行列のvon Neumannエントロピーの計算が本質的である。しかしながら、その解析計算は一般には非常に困難である。CFTなど対称性の高い場合にレプリカ法で計算するか、ガウシアン状態の強い制限を使った公式などが知られているが、一般の(相互作用込みの)非ガウシアン状態の(状態の摂動展開によらない)直接的なエントロピー公式は、知られていない。本研究では2PI有効作用定式化を利用したエントロピーの一般公式を提案する。
- 多田 靖啓 (東大物性研)
--- (2+1)次元系におけるmagnetic catalysisの量子臨界性, Quantum criticality of magnetic catalysis in (2+1)-dimensions
磁場中のディラックフェルミオンは、相互作用が弱くても絶対零度でカイラル相転移することが知らられており、この現象はmagnetic catalysisと呼ばれている。本発表では、(2+1)次元の具体的なモデルに対する数値計算結果をもとに、その量子臨界性について議論する。
- 河村 泰良 (慶大理工)
--- 非平衡フェルミ原子ガスにおける超流動状態の性質, Properties of a driven-dissipative non-equilibrium Fermi superfluid
励起子ポラリトン系や超伝導回路系等で実現する散逸下の量子多体系で見られる新奇現象が、近年大きな注目を集めている。冷却原子分野でも非平衡現象に関する実験技術が進展、制御可能な散逸を導入することが可能となっている。この実験の進展を受け、原子・エネルギーの流出入の存在する非平衡開放フェルミ原子ガスにおける超流動状態の性質を調べた。具体的には、熱平衡フェルミ原子ガスにおけるBCS-Leggett理論を非平衡Green関数法を用いて非平衡開放系へ拡張することで、非平衡定常状態として実現する超流動状態の性質を明らかにする。
- 藪中 俊介 (九大物理学部門)
--- 汎関数繰り込み群によるO(N)模型におけるBardeen-Moshe-Bander現象の有限Nでの起源の研究, The finite N origin of the Bardeen-Moshe-Bander phenomenon and its extension at N=∞ by singular fixed points
3次元のO(N)模型で成分数Nが無限の場合、三重臨界点に対応する繰り込み群の固定線の終点がBardeen Moshe Bander固定点と呼ばれ、有効ポテンシャルが特異的になることが知られている。我々は汎関数繰り込み群を用い、この現象の有限のNでの起源を調べた。その結果これまで知られている固定線の終点の先にさらに他の固定線が存在し、Nが無限に近づくにつれこの固定線上の有効ポテンシャルは特異性を獲得することを示した。
- 内藤 智也 (東大物理/理研仁科)
--- 汎関数くりこみ群に基づいた密度汎関数理論による三次元電子ガス計算に基づく局所密度近似相関汎関数の第一原理的構築, Ab-initio construction of the correlation energy density functional in the local density approximation with the functional-renormalization-group aided density functional theory
量子多体問題を解く効率的な手法のひとつとして密度汎関数理論がある. 密度汎関数理論の計算精度は交換相関汎関数の精度に依存するが, その第一原理的構築は発展途上である. そのための手法の一つとして近年発展しているのが汎関数くりこみ群に基づいた密度汎関数理論 (FRG-DFT) である. 今回電子系の局所密度近似での相関エネルギー汎関数を構築を目指し, 我々は FRG-DFT を3次元一様電子ガスに適用した. FRG-DFT により導かれた相関エネルギーは高密度側では厳密解を再現し, 中〜低密度領域では Monte Carlo 計算による結果とよく一致した. また, この計算結果を用いて局所密度近似での相関エネルギー汎関数を構築し, ベンチマーク計算として孤立原子系の電子状態計算を行った. 我々の汎関数は従来の経験的に構築され実用的に使われてきた汎関数に匹敵する精度を示した. 本研究は FRG-DFT の3次元系への初めての適用であり, FRG-DFT が現実的な系の解析に役に立つ手法となることを示唆している.
Reference: T. Yokota and T. Naito. To be submitted.
- 古澤 拓也 (東工大)
--- Finite-Density Massless Two-Color QCD at Isospin Roberge-Weiss Point and 't Hooft Anomaly, Finite-Density Massless Two-Color QCD at Isospin Roberge-Weiss Point and 't Hooft Anomaly
本講演では、純虚数アイソスピン化学ポテンシャルがある場合の有限密度・有限温度の 2カラーQCDという符号問題のないセットアップに着目し、その対称性と’tHooftアノマリ ーを議論する。純虚数アイソスピン化学ポテンシャルが特別な値をもつアイソスピン Roberge-Weiss 点において、この系はセンター対称性を持つ。このセンター対称性とアイソ スピンカイラル対称性・バリオン対称性の間には、’t Hooft アノマリーがあることを示す。 特に、このアノマリーは任意の温度・密度において存在するため、アイソスピン Roberge- Weiss 点における有限密度・有限温度の相図に強い制限を与えることがわかった。さらに、対称性とアノマリーの観点か ら、2 カラーQCD と反強磁性体の類似性についても議論する。
- 森田 健 (静岡大学)
--- ラージN行列量子力学における負の比熱状態, Negative specific heats in large-N matrix quantum mechanics
超弦理論におけるゲージ・重力対応では、ゲージ理論の熱力学が、ブラックホール熱力学と関係していると期待されている。しかし、最もありふれたブラックホールであるSchwarzschildブラックホールは負の比熱という通常の統計系ではありえないような性質を持つため、どのように負の比熱がゲージ理論で実現されるのかを解明することは重要な問題である。本研究では1次元Large-N reduced model(Bosonic BFSS model)と呼ばれる、かなり単純なゲージ理論で、負の比熱状態を得ることができることを紹介する。
- 大山 京尋 (早大基幹理工)
--- 4 × 4 行列形式非平衡 TFD による時間依存非凝縮粒子分布をもつ Bose-Einstein 凝縮系, 4 × 4 matrix formulation of nonequilibrium TFD for BEC with time-dependent noncondensate particle number distribution
秩序パラメーターは時間依存しないが、非凝縮粒子分布 (normal と anomalous の両方) が時間依存する空間一様な Bose-Einstein 凝縮系の非平衡過程を対象とする。2×2 Bogoliubov 変換で定義される準粒子に Thermo Field Dynamics(TFD)の熱的自由度二重化および 2×2 熱的 Bogoliubov 変換を導入するという手法ではなく、今回は元の場の演算子に対する 4×4 行列変換の導入という新手法を試みる。その中で、非摂動Hamiltonian の確定、4 × 4 行列構造の propagator を用いた Feynman diagram 計算の整備、Self-energy の繰り込み条件から quantum kinetic equation や counter terms のパラメーター決定という順に定式化を行う。
- 杉山 祐紀 (広大院理)
--- リンドラー時空とカスナー時空の重力波からのUnruh効果, Unruh effect from GWs in Rindler and Kasner spacetime
一様加速度aで運動する観測者は、静止系の真空状態を、aに比例する有限温度の熱的状態として観測することが知られている(Unruh効果).本研究では、カスナー時空における重力波の自由度をRegge-Wheelerゲージによるゲージ固定を用いて抽出し、カスナー時空の解を解析接続によりリンドラー時空へと接続することでリンドラー時空の重力波の解を構成した.さらにこれらの解を用いて粒子数期待値を計算し、Unruh効果を導出した.
- 横田 猛 (東大物性研)
--- 格子QCDによるカラー超伝導の解明に向けて --- 摂動論の予言と複素ランジュバン法, Towards color superconductivity on the lattice --- perturbative predictions and the complex Langevin method
The phase structure of QCD at finite density is expected to be revealed by the complex Langevin method (CLM), which is a promising approach to overcome the sign problem. In particular, we discuss the possibility of investigating the color superconductivity (CSC) on the lattice by the CLM. Towards that end, we predict the parameter region in which CSC occurs in lattice perturbation theory based on the gap equation. Our perturbative calculations are justified by considering a small spatial volume due to the asymptotic freedom. Most notably, we can predict the explicit form of the Cooper pairs without imposing any ansatz. Our explicit results for Nf=4 staggered fermions suggest that CSC can be observed at large beta on lattices with large aspect ratios such as 4^3x100 and 8^3x128 when the quark chemical potential is tuned to bring the Fermi surface close to one of the discrete energy levels of quarks. We also present some preliminary results obtained by the CLM with the same setup.
- 中野 裕義 (京都大学理学研究科)
--- 一様せん断流下での二次元O(2)モデルの有限サイズスケーリング, Finite-size scaling of the two-dimensional O(2) model in the presence of shear flow
二次元O(2)モデルはマーミン・ワグナーの定理に従い、平衡状態の有限温度では長距離秩序を実現しない。その代わりに、コステリッツ=サウレス転移点が存在し、低温領域では準長距離秩序が実現する。一様せん断流はこの状況を一変する。すなわち、一様せん断流によってオーダーパラメータが流されるとき、マーミン・ワグナーの定理は破れ、有限温度でさえ長距離秩序が安定化する。本ポスターでは、この結果を数値シミュレーションと有限サイズスケーリングを用いて明らかとする。また、ゴールドストーンモードの振る舞いについても簡単に紹介する。
- 世田 拓也 (京大物二)
--- 3 次元超対称QEDにおける量子相転移とLefschetz thimble 解析, Quantum phase transition in 3dim SQED and Lefschetz thimble analysis
3 次元QED は,QCD の高温極限と関連し,カイラル相転移や閉じ込めの性質を示すため,
古くから議論の対象となってきた.近年,3 次元超対称QED における量子相転移がLandau-
Ginzburg-Wilson paradigm を超える相転移の例となっていると指摘されたことは,特に注目に
値する.
本講演では,FI 項を持つN = 4, 3 次元SQED を考える.FI パラメータを変化させた際に起
きる量子相転移を,Lefschetz thimble 解析の観点から議論する.そして量子相転移が,経路積分
の主要な鞍点の移り変わりとして理解されることを見る.また,ラージフレーバー数展開におけ
るリサージェンス構造についても議論する.
- 西村 健太郎 (慶應義塾大学)
--- 回転するバリオン物質におけるトポロジカル項、QCD anomalyとη'カイラルソリトン格子, Topological term, QCD anomaly, and the η' chiral soliton lattice in rotating baryonic matter
回転する低密度ハドロン物質とカラーフレーバーロッキング相における基底状態を調べた。その結果、十分に速い回転下では両者とも、η'中間子に対するトポロジカル項とQCD anomalyの競合によって、カイラルソリトン格子(CSL)とよばれるη'中間子の非一様凝縮相になることを示した。特に、バリオン数化学ポテンシャルがアイソスピン数化学ポテンシャルよりも十分大きい場合には、このη'CSLが実現する臨界角速度は以前調べた中性パイ中間子のCSLに対する臨界角速度よりも十分に小さくなる。また、フレーバー対称な場合には、低密度と高密度におけるη'CSLは連続的につながっていると予想できる。これはクォーク・ハドロン連続性を回転系に拡張したものである。
Reference: Kentaro Nishimura and Naoki Yamamoto, 2003.13945 [hep-ph]
- 越智 一成 (高知大理工)
--- 異なる質量をもつ2バンド系における超伝導/超流動BCS-BECクロスオーバー, Superfluid/superconducting BCS-BEC crossover in two-band systems having different masses
引力相互作用の変化に伴い起きる、BCS超流動/超伝導から束縛分子のBECへ移行するBCS-BECクロスオーバーが冷却フェルミ原子気体や鉄系超伝導体に対して議論されている。2バンド系ではこのクロスオーバーが多彩になることが期待され、本研究では異なる質量とバンドオフセットをもつ2バンド系での超伝導/超流動を調べた。特に、バンド間でペア交換を引き起こすペア散乱相互作用がある時に、一方のバンドに対して他方のバンドがどのような有効相互作用を及ぼすかを調べてクロスオーバーの特徴を明らかにした。
- 林 優依 (千葉大理)
--- Landauゲージのグルーオン伝播関数の解析的構造へのクォーク化学ポテンシャルの影響, Effects of quark chemical potential on analytic structure of Landau-gauge gluon propagator
物質中でのグルーオンの振る舞いを知るため,LandauゲージのYang-Mills理論の有効模型である有質量Yang-Mills模型にクォークを加えた模型を用いて,有限のクォーク化学ポテンシャル下でのグルーオン伝播関数の解析的構造を調べた。特に,閉じ込めと関係することが期待される複素極に注目した。その結果,グルーオン伝播関数は,真空のものに似た複素極のペアに加え,化学ポテンシャルがおよそクォークの有効質量とグルーオンの有効質量の間のときにはとても小さい虚部をもったもう一つの複素極のペアを持つことがわかった。これら複素極の解釈について議論する。また,複素極がある場合の松原グリーン関数の解析接続の一意性についても議論する。
- 西野 尚吾 (千葉大理)
--- ダイオン:新奇な非自己双対解と従来の自己双対解 -閉じ込め・非閉じ込め相転移の理解へ向けて-, Dyon: a novel non-self-dual and a known self-dual solutions --towards understanding confinement/deconfinement transitions
有限温度におけるSU(2) Yang--Mills理論における興味深い物理現象の一つに閉じ込め・非閉じ込め相転移がある。
この現象は自己双対ダイオン解を構成要素とするKraan-van Baal-Lee-Lu (KvBLL)カロロン解によって再現されることが示されている。
最近,スカラー場の動径自由度を固定したある種のゲージ・スカラー模型における場の方程式の解が,ゲージ不変な質量項を持つYang--Mills模型における場の配位に対応することが見出された。ゲージ不変な質量項を持つYang--Mills模型は,質量ギャップを持つYang--Mills場の量子論の低エネルギー有効理論と見なせることが明らかになってきている。この対応を用いて,我々はこの有効理論における非自明な磁荷・電荷を持つ非自己双対なダイオン型の配位を構成した。
この講演では,有限温度でのゲージ不変な質量項を持つYang--Mills模型における非自己双対なダイオン型の配位が,閉じ込め・非閉じ込め相転移に寄与し得るかを,KvBLLカロロン解や自己双対ダイオンとを比較しつつ議論する。
- 松本 信行 (京大理)
--- 焼き戻しレフシェッツ・シンブル法のカイラル行列模型への適用, Application of the tempered Lefschetz thimble method to a chiral random matrix model
有限密度QCDに対するモンテカルロ計算は符号問題によって阻まれている。これに対して、焼き戻しレフシェッツ・シンブル法(TLT法)[Fukuma-Umeda(1703.00861)]は符号問題を解決するためのアルゴリズムである。このアルゴリズムでは「経路積分の積分面を複素空間へ連続変形すること」および「フロー時間による焼き戻し」によって符号問題とエルゴード性の問題を同時に解決する。本ポスターでは、TLT法をカイラル行列模型に適用した結果についてまとめる。カイラル行列模型とは、QCDにおけるカイラル対称性の破れをランダム行列により記述する模型であり、実際ラージNにおいて真空のカイラル凝縮は有限の値をもつ。ここでは特に、小さなNに対してではあるがTLT法により演算子の期待値を正しく評価できること、およびNを次第に大きくした時の計算コストのスケーリングについて議論する[Fukuma-NM-Umeda(in preparation)]。
- 星野 紘憲 (インド工科大学ロパール校)
--- 非平衡定常状態の固有有効温度, Proper effective temperature of nonequilibrium steady state
近年、ホログラフィーを用いた非平衡定常状態の記述が進展している。非平衡定常状態とは、例えば、外部定電場を印加した熱浴中に荷電粒子を置き、一定速度で運動させている状態である。この非平衡定常状態を特徴づける量として、有効温度が知られている。また、有効温度が熱浴の固有温度よりも低くなる状態を構成することが可能である。しかし、これは系のエネルギーが増すと”温度”が増加するという直感に反する。本研究では、相対論的な非平衡定常状態の”静止系”、およびローレンツ不変な有効温度(固有有効温度)を定義する。その結果、広範囲のホログラフィックなモデルに対して、固有有効温度は熱浴の固有温度よりも高いことが示される。
- 江尻 信司 (新潟大理)
--- 有限密度格子ゲージ理論におけるセンター対称性による符号問題の回避法を用いた粒子密度確率分布関数, Particle Density Probability Distribution Function with Avoidance of Sign Problem by Center Symmetry in Finite Density Lattice Gauge Theory
格子ゲージ理論の相転移を理解するうえで重要な「センター対称性」を考えることにより、高温高密度での格子ゲージ理論における「符号問題」の回避方法を提案する。U(1)ゲージ理論を例に、その回避方法を用いて、熱浴中での粒子密度の出現確率を表す、粒子密度の確率分布関数を相転移点付近で数値計算する。
- 石垣 秀太 (中大理工)
--- ゲージ・重力対応を用いた散逸系における南部ゴールドストーンモードの解析, Analysis of Nambu-Goldstone modes in holographic dissipative system
ゲージ・重力対応とは超弦理論から予想されるゲージ理論と重力理論の間のある種の対応関係である。この対応関係を用いた荷電粒子多体系のモデルでは、外部磁場の印加の下で系のカイラル対称性が自発的に破れることが知られている。また、有限温度でこの系は散逸を伴う。本研究ではこのモデルを用いて、散逸系の自発的対称性の破れに伴い生じる南部ゴールドストーンモードについて、それが満たす分散関係の解析を行った。
- 松本 匡貴 (KEK)
--- ゲージ重力対応を用いた非平衡定常状態における熱力学的性質の研究, Thermodynamic property of non-equilibrium steady state in gauge/gravity duality
ゲージ重力対応において、外部電場の印加により定常電流が存在する荷電粒子多体系を実現することができる。この系では電流電場特性が非線形な振る舞いを示し、電場をコントロールパラメータとした相転移が現れる。本研究では、この非平衡定常状態における相転移近傍の熱力学的性質を調べた。特に平衡系における"エントロピー"に対応する量を定義することにより熱浴の温度および非平衡定常状態に特有な有効温度に対する振る舞いを調べた。
- 筒井 翔一朗 (理研仁科センター)
--- 粒子数インバランスのある1次元2成分引力フェルミ原子気体の複素ランジュバン法による解析, Complex Langevin study of an attractively interacting two-component Fermi gas in 1D with population imbalance
We investigate an attractively interacting two-component Fermi gas in 1D described by the Gaudin-Yang model with population imbalance. While the Gaudin-Yang model is known as a solvable model based on the thermodynamic Bethe ansatz, the binding energy and mass of poralon at finite temperature and moderate impurity density are still unknown. Moreover, in such a system, quantum Monte Carlo simulation suffers from the sign problem because the population imbalance makes the fermion determinant non-positive definite. In this study, we apply complex Langevin method, a holomorphic extension of the stochastic quantization to overcome the sign problem. We first confirm our numerical results satisfy a criteria for correct convergence[1], and present how the polaron energy depends on temperature and density of impurity. We also compare our results with a recent study based on a diagrammatic approach[2].
[1] K. Nagata, J. Nishimura, S. Shimasaki, Phys. Rev. D 94, 11 (2016).
[2] H. Tajima, S. Tsutsui, T. M. Doi, arXiv:2005.12124
- 南 佑樹 (浙江大学)
--- 非平衡定常流下での南部・ゴールドストーンモード, Namb-Goldstone mode under a nonequilibrium steady flow
せん断流下でのO(N)スカラー模型を考え、そこでの対称性の破れO(N)→O(N-1)に伴う南部・ゴールドストーンモードを議論する。せん断流下では、対称性の破れに伴い、無限個のギャップレスモードが現れ、平衡系にはない分数べきの分散関係ω~k^{2/3}を持つことを示す。また無限個のギャップレスモードは異なる群速度を持つことも示す。
- 田島 裕之 (高知大理工)
--- 有効距離を有する強結合フェルミオン系のクロスオーバー理論, Generalized crossover in strongly interacting fermions with finite effective range
Feshbach共鳴により散乱長を制御できる冷却フェルミ原子気体は、中性子星の低密度領域における希薄中性子物質の量子シミュレーターとしての活用が期待されている。一方、冷却フェルミ原子気体と中性子物質では、2体散乱における有効距離が異なる。前者では、Broad Feshbach共鳴ではほぼ無視でき、narrow Feshbach共鳴の場合は負の有効距離が実現される一方、後者の中性子-中性子散乱における有効距離は正である。本研究では、このような背景を踏まえ、任意の散乱長、有効距離における超流動相転移の解析を行った。従来知られている散乱長制御ではなく有効距離の変化に応じた新しいタイプのBCS-BECクロスオーバーについても議論する。Ref. H. Tajima, J. Phys. Soc. Jpn. 88, 093001 (2019).
- 末永 大輝 (阪大RCNP)
--- Massive Yang-Mills理論に基づいたカラー超伝導相におけるグルーオン二点関数の解析, Gluon propagator in color superconductivity phase based on the massive Yang-Mills model
本研究では、摂動論的QCDが適用出来ない中間的な密度領域も含め、QCD物質中のグルーオン二点関数を調べた。QCDの非摂動効果を取り入れるため、massive Yang-Mills理論を低エネルギーQCDの有効模型として採用した。特に本研究では、格子QCD計算結果が存在する2カラー・2フレーバーQCD物質中のグルーオン二点関数を、1ループレベルで調べた。またその際、格子QCD計算結果が示唆するように、カラー超伝導の効果も対称性に注意しつつ取り入れた。その結果、massive Yang-Mills理論によるグルーオン二点関数は、ゼロ質量Yang-Mills理論に基づいた計算を改良し、より格子QCD計算結果を再現することを示した。
- 馬場 惇 (筑波大数理)
--- SFtX法を用いたカイラル感受率の測定, Measuring chiral susceptibility using SFtX method
有限温度QCDの相転移温度の測定において広く用いられているカイラル感受率をgradient flowに基づくSFtX(Small Flow-time eXpansion)法を用いて測定する。従来の研究では無視されがちであったconnectedなダイアグラムの寄与を含めた解析によって真のカイラル感受率の評価を目的としている。
本研究では、SFtX法における新しいスケールの導入とそれに合わせたより長いflow timeでの測定を行うことで、これまでの解析で現れていた系統誤差を減らすことを目指す。
- 上田 大輝 (東京大学)
--- 熱力学エントロピーによる有効場の理論への制限, Thermodynamic entropy constraint in effective field theory
熱力学エントロピーは系の自由度を特徴づける物理量の一つである。系へ質量の大きな粒子を新たに加えることで、エントロピーは増加する。また低エネルギー領域において、質量の大きな粒子の効果は有効場の理論の高次の演算子として現れる。本ポスターでは、UV理論から生成された高次の演算子の効果はエントロピーを増やすことを示す。この結果を次元8の演算子を含むスカラー場の理論、4フェルミオン理論等の有効場の理論に適応することで、高次の演算子の係数は任意な数をとることは出来ず、制限が現れることを示す。
- 竹内 宏光 (阪市大理)
--- ネマチックスピン状態にあるボース・アインシュタイン凝縮体における非軸対称な量子渦, Non-axisymmetric vortices in spinor Bose-Einstein condensates with a nematic-spin order
ネマチックスピン秩序をもつボース・アインシュタイン凝縮体において自発的に軸対称性を破った量子渦が実現することを示す.この量子渦では「特異点」が帯状に分布しており,この帯の構造は最近超流動3Heで観測されたKibble-Lazarides-Shafi壁と類似している.講演では,この渦状態の平衡・非平衡状態について議論する.
- 下地 寛武 (広大理)
--- 有限温度・有限密度Gross--Neveu 模型におけるCasimir 効果とその安定性, Casimir effect and its stability in finite temperature and density Gross--Neveu model
量子色力学における相構造の探索においてカイラル対称性は重要な指標である。低エネルギー領域は非摂動論な性質のため一般的な解析が難しく、とくに有限密度では符号問題が生じるため格子量子色力学による数値的な解析も難航している。本研究ではカイラル対称性の自発的破れを記述できる簡単な模型、Gross--Neveu 模型を用いて有限温度・有限密度における相構造の解析を行った。このとき有限サイズの寄与を考慮するために空間1方向をS^1にコンパクト化し、フェルミオンにU(1) 型の境界条件を課した。またカイラル凝縮は一様なものと仮定した。相の性質を見る上で有限サイズの効果としてよく知られるCasimir 力を計算し、その安定性に有限密度と境界条件とが与える影響について紹介する。
- 南川 拓哉 (名大H研)
--- パリティ二重項模型を用いた中性子星のMR曲線とカイラル不変質量の制限, MR relation of neutron stars using a parity doublet model and a constraint to the chiral invariant mass
パリティ二重項模型では、核子質量の起源としてカイラル対称性の自発的破れからくる寄与に加え、カイラル不変な質量が含まれる。カイラル対称性は高密度領域で回復すると考えられているが、この模型における核子質量は高密度でも大きくは変わらない。この性質が中性子星の状態方程式に与える影響や、LIGO-VirgoやNICERによる観測結果を用いたカイラル不変質量に対する制限について発表する。
- 北沢 正清 (阪大理)
--- ヤンミルズ理論における非等方有限系の非等方圧力, Anisotropic pressure induced by anisotropic boundary conditions in Yang-Mills theory
非等方な境界条件が課された量子場の理論では、カシミア効果に代表されるように非等方な圧力(応力)が存在する状態が実現する。本研究では、非等方な周期境界条件が課された有限温度SU(3)ヤンミルズ理論における応力テンソルを格子数値計算によって解析し、この系の境界条件への応答を定量的に調べる。特に臨界温度より高温での振る舞いを詳しく調べ、この系が自由場の理論とは全く異なる境界条件への応答を持つことを示す。
- 森川 億人 (九大理)
--- コンパクト化された時空における摂動論の不定性とリサージェンス構造, Perturbative ambiguity in compactified spacetime and resurgence structure
場の理論における摂動級数は典型的に摂動次数の階乗程度で発散し、これにより摂動論の予言に不定性を生じると考えられている。その原因としてファインマンダイアグラムの数の爆発(PFD)とリノーマロンによるものがある。一方でインスタントンのような非摂動論的効果に付随した不定性もあり、双方の不定性が相殺するリサージェンス構造により理論の整合性が満たされる。近年バイオンというソリトンに由来する不定性とリノーマロンが相殺するという予想が注目されている。本ポスターでは、この予想に反し、バイオンの不定性はPFDによる摂動論の不定性が相殺することを示す。特にバイオンが存在するS^1コンパクト化された時空において、PFDの不定性が有限温度系のLinde問題と類似のメカニズムで変更を受けることを議論する。また、S^1コンパクト化のもとでリノーマロン不定性が存在しないという結果を与える。
- 島崎 拓哉 (東大理)
--- 格子ゲージヒッグス理論における't Hooft surface(ボルテックスの世界面), ’t Hooft surface, or world sheet of vortices, in lattice gauge Higgs theory
Z_Nトポロジカルオーダーを持つ格子ゲージヒッグス理論は超伝導、及びカラー超伝導のモデルである。その理論には分数磁荷を持つボルテックスが現れる。我々はその世界面、つまり't Hooft surfaceに注目した [1]。
我々の研究成果は大きく二つある。まず't Hooft surfaceを格子ゲージ理論で定式化した。't Hooft surfaceは双対格子上に存在するにも関わらず、我々の定式化は元の格子上の変数のみで表される簡潔なものである。
次にシミュレーションを実際に行い、ボルテックス間のポテンシャルを導いた。そのポテンシャルの振る舞いは分数磁荷を持つボルテックスが閉じ込められることを示している。このことは、整数磁荷を持つボルテックスのみが物理的であることと無矛盾である。
[1] TS, A. Yamamoto, arXiv:2006.02886 [hep-lat]
- 森下 天平 (山梨大院工)
--- 内因性量子熱力学に基づく量子ナノ系の散逸緩和ダイナミクス, Quantum Relaxation dynamics based on Intrinsic Quantum Thermodynamics
量子系における不可逆な散逸緩和現象を議論する際,従来は熱浴を注目系に対する外因的な不可逆性因子と見なすことで記述してきた.これに対し,熱浴を想定せずとも,ミクロな孤立系自体に不可逆性が内在するという前提に立った内因性量子熱力学(Intrinsic Quantum Thermodynamics : IQT)と呼ばれる理論体系がある.本研究では,Steepest-Entropy-Ascent(SEA)仮説に基づくIQT理論であるSEAQTによって,量子ナノ系の散逸緩和ダイナミクスを議論し,SEAQT及びIQTの有効性,問題となる点などを議論する.
- 吉田 恒也 (筑波大数理)
--- 非エルミート系における分数量子ホール状態, Fractional quantum Hall states in non-Hermitian systems
Recent experimental works provides a new arena of topological physics. Along with the extensive works on non-Hermitian topological insulators (a non-Hermitian counter part of short-range entangled states), long-range entangled states for non-Hermitian systems have not been explored yet. Under this background, we numerically show that a fractional quantum Hall state can emerge for open quantum systems with two-body loss.
- 柳原 良亮 (阪大理)
--- 有限温度系における静的カラー電荷周辺のエネルギー応力分布, Stress energy distribution around static color charge at finite temperature
本研究では、勾配流法を用いたSU(3)ゲージ理論の格子数値解析により、非閉じ込め相における静的カラー電荷周辺のエネルギー応力テンソルの空間分布を調べる。連続極限までとった定量的な解析を行い、分布のソース近傍・遠方でのふるまいを考察する。また分布の温度依存性も調べ、これらを摂動論の最低次の結果と比較する。
- 横倉 諒 (KEK)
--- アクシオン電磁気学における高次対称性と3群, Higher-form symmetries and 3-group in axion electrodynamics
4次元における電磁場に結合したアクシオン系における高次対称性を議論する。運動方程式やビアンキ恒等式からこの系におけるテンソル的保存流の存在が導かれる。この保存流に対する対称性は高次対称性と呼ばれる。本講演では、保存流のカレント代数から、この系には「3群」と呼ばれる数学的構造が存在することを示す。また、アクシオンひもや磁気モノポールなどのソリトン的物体に関する異常ホール効果やウィッテン効果を3群の観点から議論する。
- 松田 英史 (京大理)
--- 古典ヤンミルズ場のずり粘性, Shear viscosity of classical fields in Yang-Mills theory
格子上の古典的ヤンミルズ(CYM)場のずり粘性をグリーン・久保公式を用いて調べた。CYM場のスケーリングに基づく解析を行うことで、CYM場のずり粘性が持つ結合定数依存性を明らかにした。興味深いことに、得られた結合定数依存性は、乱流により誘起される赤外場下の粒子が持つずり粘性の結合定数依存性[1]と一致した。
[1] M. Asakawa, S. A. Bass and B. M\"uller, Phys. Rev. Lett.96, 252301 (2006);
Prog. Theor. Phys. 116, 725 (2006).
- 藤本 悠輝 (東大理)
--- Continuity from neutron matter to two-flavor quark matter with 3P2 superfluidity, Continuity from neutron matter to two-flavor quark matter with 3P2 superfluidity
現実的な中性子星環境下で、クォーク・ハドロン連続性の可能性を論じる。標準核密度以上で実現される中性子のスピン三重項P波(3P2)超流動が、2フレーバーのクォーク物質の2SCカラー超伝導相に連続的に繋がっていることを示す。このカラー超伝導相では、従来知られていた2SC凝縮に加えて、dクォーク同士のダイクォーク凝縮が3P2チャンネルで生じることを指摘し、その動的な機構について定性的な観点から説明する。この新奇クォーク相での対称性の破れのパターンは中性子超流動相と同一であり、連続性は、これら2つの相が既知の秩序変数では弁別できないことによって担保される。このクォーク・ハドロン連続性は、現在の中性子星現象論から制限される状態方程式の理解に、微視的な基礎付けを与える。
- 加須屋 春樹 (京大基研)
--- 汎関数くり込み群に基づく超流動系の密度汎関数理論, Functional-renormalization-group aided density functional theory for superfluid systems
構成粒子間の相互作用から第一原理的に密度汎関数理論を構成する試みの1つに、汎関数くり込み群に基づく密度汎関数理論 (FRG-DFT) がある。FRG-DFTにおいてこれまで、超流動をはじめとする自発的対称性の破れを伴う現象がどのように記述されるかはわかっていなかった。今回我々は、非局所ペア密度場を陽に考慮することにより、FRG-DFTを局所性や対称性に仮定を置かない一般のペアリングを伴う超流動系を記述する枠組みに拡張し、密度とペア密度に対するエネルギー汎関数を決めるフロー方程式を導出した。フローの出発点でのペア密度場に対する外場 (一般化されたKohn-Shamポテンシャル) は、相関項を無視する近似では、平均場におけるペアギャップと同一視され、BCS理論におけるギャップ方程式を再現する。この結果は、我々の枠組みが超流動系を記述する正当なものであり、今後FRG-DFTのために開発された系統的手法を用いることで、超流動系を解析するための密度汎関数理論を実際に第一原理的に構成できる可能性を示している。
- 柴田 章博 (KEK 計算科学センター)
--- 双対超伝導描像に基づく高次元クォークの閉じ込め・非閉じ込め相転移, Confinement/deconfinement phase transition for quarks in the higher representation in view of dual superconductivity
双対超伝導描像はクォーク閉じ込め機構の最も有力なシナリオの一つである。双対超伝導描像を確立するには磁気モノポールが閉じ込めに中心的な役割を果たすことが示されなければならない。この目的のために、我々はゲージ場のゲージ共役な分解の方法によって抽出した制限場がクォークの閉じ込め中心的な役割を果たす格子上のヤンミルズ理論の新しい定式化を提唱した。さらには、非可換ストークスの定理に基づく考察から任意表現のウイルソン・ループに対して拡張し、閉じ込めに寄与する自由度を直接抽出する演算子を構成することに成功した。また提案された演算子が元のウィルソンループ平均で予想される挙動をよく再現することを数値シミュレーションにより実証した。
本発表では、双対超伝導の観点から、任意表現のクォークの閉じ込め・非閉じ込めの有限温度相転移について、数値シミュレーションとゲージ場のゲージ共役な分解の方法を用いて議論する。
- 曽我部 紀之 (Institite of Modern Physics)
--- 揺らぐカイラル流体力学, Anomalous hydrodynamics of charge fluctuation
We study the fluctuating hydrodynamics of a vector charge and an axial charge with a damping rate under an external magnetic field. We find that charge fluctuation leads to a nontrivial magnetic-field dependence of the conductivity beyond the bare anomalous hydrodynamics. We discuss its possible relevance to the longitudinal negative magnetoresistance observed in the table-top experiments as a consequence of the chiral magnetic effect.
- 森 勇登 (京都大学)
--- 経路最適化法を用いたU(1)ゲージ理論における符号問題の研究, Study of the sign problem in U(1) gauge theory via the path optimization
有限密度QCD等において現れる符号問題を回避するために、我々は積分領域を複素空間内で変形し、符号問題を緩和する手法である経路最適化法を提案・開発している。本講演ではこの方法のゲージ理論への適用例として、プラケットを一つだけ含むようなU(1)ゲージ理論に適用した結果を報告する予定である。