高校で物理学を選択した多くの学生が、学習する内容と現実世界とのギャップに悩むことになると思います。教科書には、物理学という学問体系の中で、最も重要な基礎概念と考え方が示されているのですが、物の大きさや摩擦を無視して考えたり、解析的な取扱いができないような現象には触れないため対象は非常に理想的な系での現象に限られてしまいます。実際に目にする自然現象を記述する際、何をどこまで理想化して考えたら良いのか、その理想化によって何を失ってしまうのかを理解するのは容易な事ではありません。
ここに挙げた教材例は、高等学校で物理を学習している方を対象に、計算機シミュレーションを利用することで、みなさんが物理学の面白さに気付き、物理の考え方に基づいて自然現象を考えるようになることを目標としています。実際に体験することの困難な状況、モデル化された系の振る舞いを計算機シミュレーションで視覚的にとらえる中で、自然科学の概念について具体的なイメージを描きながら考えてみてください。夢のある物理の世界の面白さを感じることができると思います。
2004年1月16日
稲垣知宏