TQFT 2018 Abstracts
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- 下地 寛武 (広大院理)
--- NJL模型における有限サイズと境界条件の効果
自発的対称性の破れを引き起こす簡単な模型としてNJL模型がしばしば調べられてきた。本発表では1方向をコンパクト化したD次元のNJL模型を扱い、一般的な位相を伴う境界条件について有効ポテンシャルを評価し真空期待値と相構造について議論する。
- 西村 淳 (KEK理論センター)
--- 複素ランジュバン法による符号問題の解決とその適用範囲について
近年、符号問題の解決法として複素ランジュバン法が注目を集めている。本講演では、この方法に関する最近の発展をレビューし、その適用範囲について議論する。特に有限密度QCDの計算に応用した結果を紹介し、今後の展望について述べる。
- Hirakida Takehiro (九大院理)
--- Persistent Homologyによる閉じ込め・比閉じ込め相の解析
QCDにおいて、低温領域でクォークはハドロン内に閉じ込められ、高温領域に入ると閉じ込めから開放される。これは「非閉じ込め相転移」と呼ばれ、quenched QCDではPolyakov loopが秩序変数として用いられる。しかし、クォークの寄与を考慮すると、これは厳密な秩序変数としては用いられない。本研究ではPolyakov loopの格子空間での分布に対して、persistent homologyによる解析を適用し、その構造を解析した。
- 柳原 良亮 (阪大理)
--- 応力テンソルによるクォーク間相互作用の微視的伝達機構の探索
静的なクォーク・反クォークが存在する系では、カラー電場はフラックスチューブと呼ばれる1次元構造に集約されると考えられている。本研究では、勾配流法と呼ばれる手法を用いて、クォーク・反クォーク周辺のエネルギー応力分布を格子数値計算により測定した。さらに可能であれば、双対超伝導描像に基づく模型計算によって応力分布を調べ、模型の妥当性や限界について言及する。
- 梶本 詩織 (阪大理)
--- カラー自由度を含む確率論的ポテンシャル模型を用いたクォーコニウム束縛状態の解析
重イオン衝突実験において、クォーコニウムの収量抑制は、クォーク・グルーオン・プラズマ(QGP)生成に対する有用なプローブの一つである。我々は、カラー自由度を取り入れた確率論的シュレーディンガー方程式を用いて、QGP中のクォーコニウムのふるまいを記述する。ただし、今回は簡単のため、SU(2)カラーを考える。得られた結果とカラー自由度を取り入れる前の計算とを比較し、カラーがクォーコニウム束縛状態にもたらす影響を調べる。
- 山本 剛史 (東大物性研)
--- 熱浴と結合した二準位系における熱輸送
近年の技術進歩により、ナノスケール素子を介した熱輸送の測定が可能となってきており、実験と理論の両面から活発な研究が行われている。熱輸送を記述する模型の中でも、二準位系を介した熱輸送は最もシンプルな模型でありながら、近藤効果と類似した輸送過程をもつという興味深い現象が明らかにされ[1]、注目されている。熱浴は周波数の冪(s乗)に比例するスペクトル密度によって特徴付けられ、オーミック熱浴(s=1)はこれまでの多くの研究が行われてきたが、非オーミック熱浴であるサブオーミック熱浴(s<1)とスーパーオーミック熱浴(s>1)では、十分な研究がなされてこなかった。
本講演では、二準位系を介した熱輸送を全ての種類の熱浴に対して、数値的計算および解析的近似式を用いて調べた結果を報告する[2]。極低温における漸近的に厳密な熱コンダクタンスの表式を新たに導出し、その温度依存性がT^(2s+1)であることを示す。また、連続時間量子モンテカルロ法[3]を用いて熱コンダクタンスを任意の熱浴の種類に対して数値的に調べた結果を示す。特に、noninteracting-blip近似(NIBA)[4]がインコヒーレント領域をよく記述することを明らかにし、その適用範囲について議論する。
[1] K. Saito and T. Kato, Phys. Rev. Lett. 111, 214301 (2013).
[2] T. Yamamoto, M. Kato, T. Kato, and K. Saito, arXiv: 1803.07987.
[3] A. Winter, H. Rieger, M. Vojta, and R. Bulla, Phys. Rev. Lett. 102, 030601 (2009).
[4] U. Weiss, Quantum Dissipative Systems, 4th ed. (World Scientific, Singapore, 1999).
- 三浦 崇寛 (阪大理)
--- クォーク・グルーオン・プラズマ中でのクォーコニウムの相対運動のマスター方程式
クォーク・グルーオン・プラズマ中でのクォーコニウムに関する物理の研究が発展している。重いクォークの束縛状態であるクォーコニウムは、量子開放系の枠組みで、密度行列の方程式であるマスター方程式で記述される。特に、密度行列の正定値性を保つLindblad型のマスター方程式は有用である。今回の発表では、二体系クォーコニウムのマスター方程式の重心座標部分を積分することによって、相対座標に関するマスター方程式を導き、どのような条件で、それがLindblad型であるかを議論する。
- 谷口 裕介 (筑波大学計算科学研究センター)
--- QGP粘性係数導出に向けたNf=2+1 QCDエネルギー運動量テンソル相関関数の研究
格子QCDを用いてクォーク・グルーオン・プラズマの粘性係数の導出に挑戦する。
粘性係数はエネルギー運動量テンソルの相関関数から線形応答関係式を使って導出されるが、格子上では(1)エネルギー運動量テンソルを保存カレントとしては定義できず非自明な繰り込みが必要となる、(2)線形応答関係式から導出される久保の応答関数を直接計算することができない、という二つの困難があり、
これまでの研究はクォークを含まないquench近似に限られていた。
本研究では格子上でエネルギー運動量テンソルを定義するために必要な非摂動論的な繰り込み定数の計算にgradient flowを用いる。
その利点を活かすことで、Nf=2+1 クォークを含むfull QCDを対象として、粘性係数の計算を試みる。
年次大会での公演から更に統計数を増やすことで、より広い温度領域に対して、より精度の高い解析が行えることを期待している。
- 一ノ瀬 祥一 (静県大)
--- Statistical Fluctuation in Stick-Slip Motion: Continuous-Time Approach versus Step-Flow Method
簡単な摩擦モデルを使い、その振る舞いを連続時間(CT)を使った方法とステップの流れ(step-flow,SF)を用いた方法で調べ、比較した。前者は通常のもので、ハミルトニアンに履歴項(hysteresis term)を「含む」。後者は3連続ステップ位置座標の漸化式が運動方程式で、ハミルトニアンは履歴項を「含まない」。摩擦項としては(a) 速度に比例する場合と (b) Burridge-Knopoffタイプの場合を調べた。前者(a)は(古典的に)可解である。物理現象としてはstick-slip現象(地震や雪崩で重要)に興味があるので、4つのパラメータはそのように取った。まず前者を使い、CT法とSF法が「同じ」物理量(位置、速度、加速度、摩擦力、弾性力、摩擦エネルギー、など)を与えることを数値的に示す。後者(b)の場合はCT法はRunge-Kuttaアルゴリズムを使い数値的に結果を出す。SF法は漸化式が数値的に解かれる。CT法もSF法も物理量は「ゆらいでいる」。その分布は両者で「異なる」。分布はBox-Counting法を使い調べた。SF法がCT法より優れた結果を出している。
参考 Tribology International 93PA,446(2016);
物理学会 東京理科大野田 2018.0323, 23pK704No3
- 金谷 和至 (筑波大宇宙史センター)
--- グラジエントフローによる2+1フレーバーQCDの状態方程式 -- 格子間隔依存性の検証
We study thermodynamic properties such as the energy-momentum tensor in Nf=2+1 QCD applying the method of Makino and Suzuki based on the gradient flow. Extending our previous study at a ≃ 0.07 fm using a nonperturbatively O(a)-improved Wilson quark action and the renormalization group-improved Iwasaki gauge action, we are performing simulations on a coarser lattice with a ≃ 0.10 fm. I report on main results of the test of the lattice spacing effects obtained so far.
- 大塚 高弘 (阪大理)
--- クォーク・グルーオン間の散乱がカイラル輸送現象に与える影響の考察
近年、電流が磁場に対して平行に流れるカイラル磁気効果などの、フェルミオンの担うカイラリティが源となって発生するカイラル輸送現象が理論・実験の両側面から注目されている。そこで、本研究ではフェルミオンとゲージボソンの散乱を衝突項として考慮したボルツマン方程式を用いて、この散乱過程がカイラル輸送現象に与える影響を考察する。特に、クォーク・グルーオン間の散乱を考慮し重イオン衝突実験で作られるクォーク・グルーオン・プラズマ中でのカイラル輸送現象に与える影響を議論する。
- 瀬戸 治 (北大)
--- Gravitational wave from a cosmological phase transition for neutrino mass generation
The U(1)B−L gauge symmetry is supposed to be broken at some high temperature in very early Universe and generate Majorana masses of right-handed neutrinos. We show that the first order phase transition of the U(1)B−L gauge symmetry breaking can generate a large amplitude of stochastic gravitational waves radiation.
- 関野 裕太 (東工大)
--- 3体引力相互作用する1次元ボソンの量子液滴とその普遍性
冷却原子気体では系の様々なパラメータを実験的に幅広く制御できることから、新規な量子少数・多体現象を探る研究が実験・理論共に盛んに行われている。近年、2 体の相互作用ポテンシャルは存在しないが 3 体ポテンシャルで相互作用するボ ース系を実現する方法が提案された。このような 3 体相互作用が働く系では、2 体ポテ ンシャルで相互作用する系では実現されない現象が起こることが強く期待される。
そこで、我々は弱い 3 体引力が働く 1 次元ボース系において、粒子数が多い場合にどの ような束縛状態が現れるのかを調べた。その結果、漸近的自由性という量子効果によって束縛状態は安定化し、基底状態のエネルギーは粒子数が増えるに従って指数関数的に増 大するという普遍的な性質を持つことがわかった。本公演では、このような 1 次元ボース 系を実現する提案についても紹介する。
- 國見 昌哉 (京大基研)
--- 冷却原子系における有限温度超流動体の超流動流の減衰
近年、冷却原子系において、温度に依存する超流動流の減衰が実験的に観測されている。
有限温度では超流動流の減衰の起源を特定することは絶対零度と比べて容易ではなく、実験結果の解釈に議論の余地が残されている。本講演では、最近のLENSグループ(イタリア)の実験とNISTグループ(アメリカ)の実験を理論的に解析した結果をそれぞれ示す。前者では、Kramers公式を用いた計算で熱的活性化による位相すべりが超流動の減衰に支配的であることを示した。後者では、Gross-Pitavskii方程式の計算により3体ロスが誘起する超流動の減衰の可能性があることを理論的に示した。
- 藤井 啓資 (東工大院理,理研iTHEMS)
--- 時空に依存した散乱長の下での流体力学
冷却フェルミ原子気体では,相互作用が散乱長という長さスケールひとつで特徴付けられるシンプルな強相関系が実現でき,散乱長を変数として加えた熱力学が活発に研究されている.さらには,この散乱長を実験的に制御し,時間および空間的に変化させることが可能である.本研究では,こうした熱力学の拡張に伴い,局所熱平衡の仮定に基づく流体力学がどのように拡張されるかを調べた.具体的には,時空に依存した散乱長を外場として含む流体力学を構築した.講演では,構築した流体力学と,散乱長によるスケール不変性および共形不変性の破れとの関連についても議論する.
- 橋爪 洋一郎 (東理大理)
--- 熱場ダイナミクスを用いた熱力学的距離の導入と非散逸カレントの寄与
熱場ダイナミクスにおいては,カノニカルアンサンブルに基づく状態分布が拡張されたヒルベルト空間(オリジナル空間とそれに同型なチルダ空間の直積空間)における1つの熱的状態ベクトルとして表現される.我々は,この状態ベクトル(TFD状態ベクトル)を用いて,熱力学的な状態の変化量を有限温度においても定量的に取り扱えることを示した.これは量子距離(quantum distance)を拡張することによって可能になる.こうして得られる,熱力学的な状態の変化量をここでは熱力学的距離と呼ぶ.本研究では,この熱力学的距離を用いると,平衡相転移の臨界指数や量子/古典クロスオーバー温度などの準静的な特徴量を得られるだけでなく,フラックスのような非散逸カレントが存在する場合にも,エントロピーの揺らぎとカレントの揺らぎを直接とらえられることが分かった.
発表ではこれらの具体的な取扱いを通して,熱力学的距離と多体系の物理量との関係について議論する.
本研究は発表者(橋爪洋一郎)と鈴木増雄(理研),中嶋宇史(東理大理,JSTさきがけ),岡村総一郎(東理大理)の共同研究である.
- 清水 啓太 (名工大院)
--- 人工磁場クエンチによる動的量子相転移
近年、実験技術の発展により、冷却中性原子系において人工的に磁場の効果を印加することが可能となった。本研究では、光格子中において人工磁場が時間依存する場合を考える。人工磁場が静的の場合は、観測される物理量はゲージ不変となる。しかし、時間依存する場合は、磁場が「人工」のためマクスウェル方程式が成り立たず、ゲージ依存の物理現象が現れる。本発表では、得られた計算結果からゲージ依存性について議論する。
- 森川 雅博 (お茶大物理)
--- スクイーズ度状態を介したコヒーレント状態の発展 ―赤外発散する初期宇宙密度揺らぎの古典化―
ほとんどの分野で量子力学の記述は完璧であるが,唯一の例外が,宇宙初期における量子揺らぎからの構造形成の問題である.基本的なスペクトルは観測に合致するが,揺らぎが大きすぎること,重力波の量子性,揺らぎが赤外発散を含み摂動論が破たんすることなど,ミクロとマクロの接点において基本的な問題がある.これらを整合的に解決する一般化された有効作用分離の方法を議論していきたい.核となるのは,スクイーズド状態を経てからのコヒーレント状態の確立である.この視点から,曲がった時空の粒子生成やアンルー効果など,曲がった時空の関連する現象を統一的に議論していきたい.
- 岩崎 愛一 (二松学舎)
--- 高速電波バーストと暗黒物質アクシオン
高速電波バーストは2007年に発見されて以来30例ほどが観測されている。バーストの持続時間1ミリ秒程度で、数十億光年先に発生源がある。そのため、1ミリ秒で解放されたエネルギーは太陽1日分にあたる。このような強い電波は強磁場によるシンクロトン放射と考えられるが、何桁にもわたる周波数の電磁放射でなく、電波(~1GHz)のみの放射でる。そのため、未だ発生機構、発生場所が不明である。ここでは、暗黒物質アクシオンの星が、中性子星本体、あるいはブラックホールの膠着円盤との衝突による発生機構を提案する。このモデルを用いて、電波バーストのほぼすべての特徴的な性質が説明出来る。
- 久野 義人 (京大理)
--- 光格子冷却原子系におけるDirac fermion量子シミュレータの構築法とそのトポロジカル物性
1次元光格子冷却原子気体を用いたDirac fermion量子シミュレータの提案として、Wilson Diracモデル量子シミュレータの最新の実験手法を組み込んだ理論提案を行う。そして、そのモデルのもつトポロジカル物性について議論する。このモデルは1次元トポロジカル絶縁体の基礎モデルである。また、格子Dirac fermion系の理論検証の観点からもその量子シミュレータの構築が望まれている。理論提案で導入される実験手法からモデルは通常のWilson Diracモデルよりより多くのパラメータ自由度もち、通常トポロジカル絶縁体よりも広いパラメータ空間において非自明なトポロジカル相が出現する。
- 西村 健太郎 (慶応大)
--- 回転する高密度バリオン物質におけるカイラルソリトン格子
渦度を持つ相対論的な流体には、渦度と平行な方向に軸性カレントが存在することが知られており、カイラル渦効果と呼ばれている。本研究では、QCDの低エネルギー有効理論であるカイラル摂動論に対して、カイラル渦効果を再現する新しい有効理論を導出した。この理論を用いて、十分速く回転している高密度QCD物質の基底状態は、「カイラルソリトン格子」と呼ばれる、パリティ対称性が自発的に破れ、トポロジカルソリトンが周期的に並んだ状態になることを示した。また、エネルギーの異常ホール効果や磁化と角運動量の交差応答のような新奇な物理現象を理論的に予言した。
- 本郷 優 (理研 iTHEMS)
--- 場の量子論的視点からの流体力学
流体力学は局所熱平衡状態に近い多体系のマクロなふるまいを記述するために古くから使われてきたが,近年では重イオン衝突で生成されるクォーク・グルーオン・プラズマや物質中の強相関電子系などの量子多体系のダイナミクスを記述するためにも広く応用されている.本講演ではこのような応用を念頭に,流体力学の(場の)量子論的な基礎づけ,ならびにその低エネルギー有効理論として側面について,最近の理論的進展を紹介する.
- 森 勇登 (京大院理)
--- 経路最適化法を用いた場の理論における符号問題の研究
有限密度QCD等において現れる符号問題を回避するために、我々は経路最適化法と呼んでいる手法を提案した [1-3]。
この方法はLefschetz thimbleのような勾配流によって積分経路を与える方法ではなく、積分経路をパラメータを持った関数で与え、そのパラメータを変分する方法である。
特に最小化すべき関数として符号問題の程度を表す平均位相因子を用いることで、符号問題を最適化問題に帰着させることができる。
これまでにこの方法を1次元積分 [1]、有限密度複素スカラー場 [2]、PNJL模型 [3]に適用し、いずれにおいても平均位相因子を大きくすることができた。
本発表では複素スカラー場 [2]および0+1次元QCDへの適用について紹介する予定である。
[1] Y. Mori, K. Kashiwa, A. Ohnishi, Phys. Rev. D 96 (2017), 111501(R).
[2] Y. Mori, K. Kashiwa, A. Ohnishi, PTEP 2018 (2018), 023B04.
[3] K. Kashiwa, Y. Mori, A. Ohnishi, arXiv: 1805.08940 [hep-ph].
- 横田 猛 (京大院理)
--- 汎関数くりこみ群に基づいた密度汎関数理論による一次元核物質の基底・励起状態の微視的記述
汎関数くりこみ群に基づいた密度汎関数理論(DFT-RG)は、エネルギー密度汎関数の微視的な構成を可能にする枠組みである。我々はDFT-RGを一次元スピンレス核子で構成された密度が有限の無限個の粒子の系に適用した。我々は基底エネルギーの密度依存性、つまり状態方程式と、密度密度相関のスペクトル関数の計算を行った。状態方程式の密度に対する最小点から得られた飽和エネルギーは、モンテ・カルロ法の結果と比較して2.7%程度しか違わず、よく一致した。また、我々の密度密度スペクトル関数は、スペクトル関数の台の低エネルギー側の端で特異性が現れるという非線形朝永・ラッティンジャー流体の特徴をよく再現した。我々の結果は空間次元が一次元以上の場合に対するDFT-RGによる解析の初めての成功例であり、DFT-RGが実用的かつ強力な解析手法となることを示唆している。
- 筒井 翔一朗 (KEK)
--- 複素ランジュバン法によるQCD相図の探索
4フレーバーQCDは、有限密度領域で一次相転移を起こすことが、再重み付け法やカノニカル法によって示されている。本研究では、複素ランジュバン法に基づく数値シミュレーションを行い、物理量のヒステリシスを解析することで、この手法によって一次相転移を検出することが可能かどうかを検証する。
- 板垣 翔太 (新潟大院自然)
--- 再重み付け法によるSU(3)ゲージ理論の重いクォーク領域における一次相転移終点でのハドロン質量の計算
重いクォーク領域におけるSU(3)ゲージ理論の有限温度相転移は、ある臨界質量で相転移の次数が1次からクロスオーバーへと変化する。
本研究ではホッピングパラメタ展開で近似した再重み付け法を用いることにより臨界点を決定し、その点でのハドロン質量を計算し臨界質量を求める。
それにより臨界質量の格子間隔依存性について調べる。
- 曽我部 紀之 (慶大理工)
--- カイラル磁気効果はQCDの動的臨界現象に影響を与えるのか?
重イオン衝突実験は次の二つの物理現象の観測を目指している。一つは相対論的フェルミオンが持つカイラリティに起因したカイラル磁気効果であり、もう一つはいわゆるQCDの相図に存在する可能性が示唆されている臨界点近傍の臨界現象である。一般に、系のギャップレスモードは動的な臨界現象のユニバーサリティクラスが決まる要因になりうるため、カイラル磁気効果に起因したカイラル磁気波と呼ばれる流体力学的モードが、QCDの臨界ダイナミクスに影響を与える可能がある。またさらに、秩序変数であるカイラル凝縮の存在下では、カイラル磁気効果の輸送係数が有限に保たれるかどうか自体、自明ではなくなる。以上の疑問に答えるため、本発表では、磁場中のカイラル相転移の動的な臨界現象を考え、カイラル磁気伝導率のくりこみの効果や動的臨界指数について議論する。
- 白銀 瑞樹 (新潟大自然)
--- gradient flowで粗視化した有効作用における有限温度相転移点
gradient flow を用いて、粗視化した有効作用を定義して、その作用で有限温度相転移を起こす有効結合定数を、SU(3)ゲージ理論の数値シミュレーションを行うことにより求める。
粗視化により系が変わらないような結合定数の変化を求める。
スケールを変えたときの有効結合定数の微係数が熱力学の計算に必要である。
結合定数のスケールを変えたときの変化を求めることによってその係数を非摂動論的に求めたい。
- 富谷 昭夫 (CCNU)
--- Phase structure of three flavor QCD in external magnetic fields using HISQ
本講演では、磁場中のカイラル相転移を改良型スタッガード定式化(HISQ)をもちいた格子QCDシミュレーションで調べた結果を報告する。ゼロ温度で磁場を印加した場合、カイラル凝縮が磁場に比例して大きくなるが、相転移温度付近では、減少することが知られている(逆磁気触媒効果)。我々は(逆)磁気触媒効果および相転移温度を、格子化誤差の影響及び、質量依存性について調べた。また、その起源を調べるため、Diracスペクトルとカイラル凝縮における、海クォークと価クォークの影響も議論する。
- 今井 良輔 (早大基幹理工)
--- 散逸Dicke模型における緩和現象とSpin-boson模型に対する量子マスター方程式との関係
2準位原子が単一光モードと相互作用するDicke模型は、駆動散逸を伴う形式で冷却原子を用いて実現され注目を集めている。我々は、散逸の効果を調べるため光子場との結合したDicke模型を解析した。原子準位が十分に小さい場合には光子の増減による状態遷移が基底状態・第一励起状態内で近似的に閉じるため、その部分空間に注目すると散逸Dicke模型はS=1/2のspin-boson模型となる。講演では、このspin-boson模型についての非マルコフ型量子マスター方程式を数値的に解析した結果を紹介し、散逸Dicke模型での緩和現象との関係について議論を行う。
- 高橋 淳一 (早大基幹理工)
--- 冷却フェルミ原子系における対凝縮と有限サイズ効果
本研究では、トラップポテンシャルに捕捉された冷却フェルミ原子系を想定し、この系で実現された対凝縮に対する有限サイズ効果を議論する。これを行うために、まずは非一様系に対する対凝縮理論を場の量子論の立場から定式化する。このようなアプローチはBCS-BECクロスオーバーを議論する上でも関係するであろうと考えている。
- 太田 敏博 (阪大理)
--- AdS/CFT対応を用いたクォーク間力のカオスの解析
AdS/CFT対応によると、ある曲がった時空中での開弦のエネルギーは対応するゲージ理論でのウィルソンループに等価であることが知られている。そこで我々はピュアヤンミルズ理論に対応する曲がった時空である、D4ソリトン時空中での開弦の運動を調べた。D4ソリトン時空中での開弦の運動はカオス的となることを明らかにし、AdS/CFT対応に基づいてクォーク間に働く力のカオスのリアプノフ指数を評価した。
- 安井 繁宏 (慶應日吉)
--- LSポテンシャルによる中性子3P2超流動における強磁場効果
重力波による中性子星合体の観測をはじめとして中性子星内部を観測的に調べる機運が高まりつつある。中性子星の表面で付近の中性子1S0超流動に対して、内部に存在すると考えられている中性子3P2超流動は内部自由度(スピン2)のために豊富な相構造をもつことが知られている。本研究では強磁場がこれらの相構造にどのような影響を与えるのかを議論する。
- 星野 裕一 (釧路高専)
--- QED3のカイラル凝縮の温度依存性
QED3のカイラル凝縮の温度依存性を調べた。フェルミオンループを含まない場合は光子の温度分布と赤外の切断、フェルミオンループを含むときには光子の遮蔽質量の温度とフェルミオンのフレーバー数依存性を明らかにした。
- 森下 天平 (山梨大院工)
--- 量子熱力学に基づく量子ナノ系の散逸緩和理論
量子情報デバイスでは,量子デコヒーレンスをいかに低減するかが問題である.このようなミクロの不可逆過程をマクロ熱浴を考慮せず,孤立系内のみで記述するには,マクロ熱力学と対応するような量子熱力学(Quantum Thermodynamics : QT)の開発と,それによる議論が必要があると考えられている.本研究では,量子情報デバイスの基本単位である二準位系の不可逆な散逸緩和過程を,最急エントロピー上昇(Steepest-Entropy-Ascent:SEA)QTに基づき,エントロピー生成と占有率の時間変化から緩和過程を議論する.
- 佐藤 龍平 (慶大理工)
--- BCS-BECクロスオーバー領域における冷却フェルミ原子気体の等温圧縮率に対する強結合効果
本研究では、常流動相にてBCS-BECクロスオーバー領域における冷却フェルミ原子気体の等温圧縮率の計算を行う。この系の研究に従来用いられるT行列近似では等温圧縮率が超流動転移温度で発散してしまうことが分かっているが、対形成揺らぎを自己無撞着T行列近似の範囲内で取り入れることによりこの発散を取り除くことができることを示す。これは自己無撞着T行列近似の枠組みでは分子対間の斥力相互作用が含まれるためであることを指摘し、圧縮率が分子対間斥力相互作用の研究に有用であることを議論する。
- 真辺 幸喜 (慶大理工)
--- 強結合冷却Bose-Fermi混合気体の1粒子励起における質量インバランス効果
近年,冷却原子気体を用い,Bose粒子-Fermi粒子間の対形成現象が研究されている.特に,この系の1粒子励起スペクトルは,従来型のFermi粒子同士の対形成との統計性の差異を強く反映することが先行研究で理論的に指摘されている.本発表では,現在実現しているBose-Fermi混合系がBose,Fermi成分間に幅広い範囲の質量インバランスを有することに着目し,この系の1粒子励起にもたらす質量インバランスの効果を議論する.さらに,光原子分光スペクトルを用いたこれらの効果の観測可能性についても言及する.
- 馬場 惇 (筑波大数理)
--- Gradient flowを用いたカイラル感受率の測定
格子ゲージ理論では、カイラルフェルミオンを素朴に用いるとダブラーという余計な自由度が現れてしまう。そこで、ウィルソンフェルミオンというフェルミオンを用いる方法が開発された。しかし、これはカイラル対称性を明白に破るフェルミオンであるため、例えばカイラル凝縮のくりこみについて、非自明な加法くりこみを行う必要がある。そこで、グラディエントフローを用いることで加法くりこみをせずに正しく繰り込まれたカイラル感受率を定義することができる。
本研究では、ウィルソンフェルミオンによるNf=2+1のfull QCDを用いてT=178~348の温度領域での測定を行う。また、従来の一点関数によるdisconnectedなダイアグラムの寄与だけではなく、二点関数によるconnectedなダイアグラムの寄与も含めたカイラル感受率の解析を行う。
- 新田 宗土 (慶應大日吉物理)
--- Quark-hadron continuity under rotation: vortex continuity or boojum?
This talk is based on the work with C.Chatterjee and S.Yasui: arXiv:1806.09291 [hep-ph].
Quark-hadron continuity was proposed as crossover between hadronic matter and quark matter without a phase transition, based on matching of symmetry and excitations in both phases. In the limit of light strange quark mass, it connects hyperon matter and color-flavor locked (CFL) phase exhibiting color superconductivity. Recently, this conjecture was proposed to be generalized in the presence of superfluid vortices penetrating the both phases in arXiv:1803.05115 [hep-ph], in which they suggested that one hadronic superfluid vortex in hyperon matter could be connected to one non-Abelian vortex (color magnetic flux tube) in the CFL phase. Here, we argue that their proposal is consistent only at large distances: Instead, we show that three hadronic superfluid vortices must join together to three non-Abelian vortices with different colors with the total color magnetic fluxes canceled out, where the junction was called a colorful boojum. We rigorously prove this both in a macroscopic theory based on the Ginzburg-Landau description, in which symmetry and excitations match including vortex cores, and a microscopic theory based on the Bogoliubov de-Gennes equation, in which the Aharanov-Bohm phase of quarks around vortices match.