TQFT 2017 Abstracts
TQFT 2017 home
- 菊池 勇太 (京大理)
--- Mixed Anomaly and Global Consistency, Mixed Anomaly and Global Consistency
量子力学系における量子異常について議論する。量子異常が存在する系では、エネルギーレベルの縮退に関して一般的な条件がかけられる。本講演では、量子力学系においてどのように量子異常が現れるかを演算子形式と経路積分形式の二つの方法で説明し、エネルギーレベルがどのような特徴を持つかを見る。
時間があれば、関連する場の量子論における量子異常に関しても議論する。
- 安井 繁宏 (東工大)
--- 強い相互作用における近藤効果 -カラー, アイソスピン, ヘビークォークスピン対称性の織りなす不純物物理-, Kondo effect in strong interaction -impurity physics by color, isospin, heavy quark spin symmetries-
強い相互作用をする物質(クォーク物質, 核物質)においてチャームクォークやチャームハドロンが存在するとき、不純物効果として近藤効果が起こることが理論的に予言されている。もともと近藤効果は、電子系に埋め込まれた磁性不純物が大きな電気抵抗を与える現象を指す。近藤効果は、重い不純物がある系において(i) フェルミ面の存在, ii) 粒子-ホールの生成, (iii) 非可換相互作用、の3条件が満たされればどのような系についても見られる普遍的な現象である。本発表では、チャーム(あるいはボトム)クォークを含む高密度物質において近藤効果が発現することを議論する。ここで非可換相互作用としては、スピン対称性ではなく、クォーク物質においてはカラー対称性、核物質においてはスピン対称性あるいはヘビークォークスピン対称性が重要な役割を果たすことを示す。非摂動効果として平均場近似に基づいて基底状態の性質について議論をする。特に最近明らかにされたゼロ質量フェルミオン系における近藤効果によるトポロジカルな性質を紹介する。
- 武田 悠佑 (名古屋大院理)
--- パリティ2重項模型を用いてデルタ物質の解析, Delta matter in a parity doublet model
パリティ2重項模型を用いて、核子とデルタバリオンの解析を行いデルタ物質が構成されていることを示す。デルタバリオンが物質として構成される密度は、標準原子核密度の2倍から3倍であることを明らかにする。また、質量や圧力、対称エネルギーの密度依存性も示す。
- 森竹 貫人 (総研大(KEK))
--- 複素ランジュバン法によるカイラルランダム行列模型の数値シミュレーション, Complex Langevin analysis of the Chiral Random Matrix Model
複素Langevin法を有限密度QCDに適用する際、閉じ込め相で軽いクォーク質量の
領域では、正しい結果を与えないことが知られている。
その原因は、ディラック演算子の固有値が零に近い値を持つことにより、
ドリフト項の特異点に近づくためであることが知られている。
この問題を避けるために、ディラック演算子をいったん変形してから外挿する
という方法が提案された。
本講演では、QCDを簡単化した模型であるカイラルランダム行列理論に
この方法を適用することにより、この方法の有用性を検証する。
- 那須 譲治 (東京工業大学理学院)
--- Kitaevスピン液体の熱的性質とそのダイナミクス, Thermodynamic properties and spin dynamics in the Kitaev spin liquid
2006年にA. Kitaevによって導入されたKitaev模型は、固体物理や量子情報などを含む幅広い分野で注目を集めている。この模型は蜂の巣格子上で定義された量子スピン模型で、厳密に解くことができ、その基底状態は分数化されたフェルミ励起を素励起に持つスピン液体である。このスピン液体の性質がどのように高次元/有限温度に拡張されるかは興味深い問題である。本研究では、2次元及び3次元Kitaev模型に対して、有限温度の熱力学量と動的磁気応答を計算した。量子スピンが創発マヨラナ準粒子に分数化することを反映して、比熱やスピンダイナミクスに顕著な特徴が現れる。3次元系では高温の常磁性から低温の量子スピン液体へ有限温度相転移を示し、これがトポロジカルな性質の変化として特徴付けられることを見いだした。
- 菊池 勇太 (京大理)
--- Mixed Anomaly and Global Consistency, Mixed Anomaly and Global Consistency
量子力学系における量子異常について議論する。量子異常が存在する系では、エネルギーレベルの縮退に関して一般的な条件がかけられる。本講演では、量子力学系においてどのように量子異常が現れるかを演算子形式と経路積分形式の二つの方法で説明し、エネルギーレベルがどのような特徴を持つかを見る。 時間があれば、関連する場の量子論における量子異常に関しても議論する。
- 鈴木 増雄 (理研)
--- 動的イジング模型の可解性ーTFDによる定式化, Solvability of kinetic Ising models - - - formulation by TFD
Glauber モデルを含む、より一般の動的イジング模型の可解性とクラスを調べるために、それらのTFDによる定式化を行う。これにより、多くの厳密に解ける模型のクラスがあることが分かつた。これらの成果の概要を説明したい。
- 白銀 瑞樹 (新潟大院自然)
--- Gradient flow法でみるSU(3)ゲージ理論における1次相転移付近の熱力学量, Thermodynamic quantities near the first phase transition point in SU (3) gauge theory with gradient flow method
SU(3)ゲージ理論の一次相転移点付近で、gradient flow 法により熱力学量を計算する。熱力学の体積依存性、格子間隔依存性、配位を高温相と低温相に分けることによる熱力学量のヒステリシスカーブなど、相転点近傍での熱力学量を詳しく調べることにより、gradient flowによる解析方法の確立の一歩とする。
- 板垣 翔太 (新潟大学自然科学研究科)
--- 格子QCDの重いクォーク領域における臨界質量の連続極限について, Continuum limit of critical mass in the heavy quark region of lattice QCD
SU(3)ゲージ理論において、クォークが重い領域での有限温度相転移は、ある臨界質量において相転移の次数が一次転移からクロスオーバーに変化する。
本研究では格子間隔をいくつか変えてシミュレーションを行い、ホッピングパラメータ展開で近似した再重みつけ法を用いることにより臨界質量を決定する。それにより臨界質量の格子間隔依存性を調べ、連続極限について考察する。
- 島田 徳三 (明治大理工物理)
--- 質量異方性のあるケプラー問題での量子カオス, QuantumChaos in the AnisitropicKepler Problem
Anisotropic Kepler Problem is one of the old testing grounds for the quantum chaos.
For the high anisotropic region, existence of a periodic orbit realising a given binary code is given
by Devaney but the uniqueness of it has remained an unsolved problem for almost 40 years.
We report our recent resolution of this issue-- in general uniqueness holds but there are exceptional cases in which a transition occurs where Self-retracing Unstable PO (S-U) goes into (S-S) and (NSR-U), all with the same binary code. In addition, we will comment on the followings.
(1) the relation of the intermediate spectral statistics regime of AKP to the Anderson Transition.
(2) Inverse chaology as applied on the quantum spectrum of this fundamental model.
- 開田 丈寛 (九州大学)
--- Effective Polyakov-line modelにおける符号問題に関する研究, Sign problem of effective Polyakov-line model
QCD相図の解明は、物質の誕生や中性子星などに関わる、重大な課題である。格子QCD計算はこの課題に対する強力な手法としてよく用いられるが、有限密度領域では符号問題により計算が実質不可能となる。
この問題に対する新しい手法として、QCDにZ3対称性を厳密に取り入れたZ3-QCDを用いるものがある。これは有限密度における符号問題が緩やかになると予想され、特に低温高密度領域におけるQCDの情報を獲得できると期待される。
本研究では、格子QCDの有効模型であるeffective Polyakov line模型を用いて、Z3対称性と符号問題の関連性について、数値計算を行った。その結果、Z3対称性を取り込むことで符号問題が弱まることが分かった。
- 柳原 良亮 (阪大理)
--- クォーク・反クォーク系におけるエネルギー運動量テンソルの勾配流法を用いた格子QCD数値解析, A lattice study of energy-momentum tensor between quark and anti-quark using gradient flow
カラー電荷をもつクォーク・反クォークが空間に配置されると、QCDの非可換性のためにエネルギーが空間全体に広がることができず、カラー電磁場は1次元的なチューブに集約される。この構造はフラックスチューブと呼ばれ、その存在はクォーク閉じ込め描像を与える。
本研究では、勾配流法という手法を用いた格子QCD数値解析により、フラックスチューブ周辺のエネルギー運動量テンソルの測定を行い、クォーク・反クォーク系における相互作用を明らかにする。
- 早田 智也 (中大理工)
--- ベリー曲率と異常輸送現象, Berry curvature and anomalous transport phenomena
ベリー曲率は運動量空間における波動関数のねじれを現す量であり、量子ホール効果やカイラル磁気効果に代表される異常輸送現象において重要な役割を果たすことが知られている。
本講演では、それに関連した我々の研究、ワイル半金属における断熱ポンピングおよびカイラル磁気効果や光のカイラル磁気(渦)効果などについて紹介する。
参考文献:
[1] Hiroaki Ishizuka, Tomoya Hayata, Masahito Ueda, Naoto Nagaosa, arXiv:1607.06537 [cond-mat.mes-hall]
[2] Tomoya Hayata, Yuta Kikuchi, Yuya Tanizaki, arXiv:1703.02040 [cond-mat.mes-hall]
[3] Tomoya Hayata, arXiv:1705.09926 [physics.optics]
[4] Tomoya Hayata, arXiv:1706.05787 [cond-mat.mes-hall]
- 末永 大輝 (名大院理)
--- 励起状態の反D中間子を用いた核物質中でのカイラル対称性の探求, Search for chiral symmetry in nuclear matter by means of excited anti-D mesons
核子の質量やパイ中間子の軽さを説明する有力な考え方の一つは「カイラル対称性の自発的破れ」である。すなわち、高エネルギーでQCDが(近似的に)持っていたカイラル対称性は低エネルギーでは自発的に破れており、核子やパイ中間子の力学系は自発的に破れたカイラル対称性により記述される。この立場に立てば、主にパイ中間子交換によって多体系を作っている核物質を考える際にもカイラル対称性の情報が重要となることが予想される。そこで本発表では、まず「カイラル対称性の自発的破れ」を基にしたハドロン有効模型の構築法を説明し、さらにその有効模型を用いて核物質を構築する方法について述べる。そして、核物質中での励起状態反D中間子のスペクトル関数を通して、反D中間子の「核物質中でのカイラル対称性の部分的回復」等を観測するプローブとしての有用性に関して述べる。
- 金谷 和至 (筑波大CiRfSE)
--- グラジエントフローによるNf=2+1 QCDの状態方程式 -- 物理点での評価に向けて, Equation of state in Nf=2+1 QCD using gradient flow -- towards the physical point
We study the energy-momentum tensor and the equation of state and the chiral condensate in Nf=2+1 QCD applying the method of Makino and Suzuki based on the gradient flow. Extending our previous study with a heavy ud quarks, we report on our study at the physical point, for which we adopt a nonperturbatively O(a)-improved Wilson quark action and the renormalization group-improved Iwasaki gauge action and perform finite-temperature simulations in the range T ≃ 155 - 544 MeV (Nt = 4-14 including odd numbers) at a ≃ 0.09 fm based on the fixed-scale approach.
- 谷口 裕介 (筑波大計算科学研究センター)
--- Gradient flowで捉えるNf=2+1有限温度QCDのエネルギー運動量テンソル相関関数, Energy-momentum tensor correlation function in Nf=2+1 full QCD at finite temperature using gradient flow
gradient flowを課したWilsonフェルミオンを用いてエネルギー運動量テンソルの相関関数を格子QCDで計算する。
今回設定した第一の目標は2点相関関数を通じてエネルギー運動量テンソルが保存するという性質を捉えることである。
第二の目標は比熱やエントロピー密度といった熱力学量をエネルギー運動量テンソルの2点関数から導き出すことである。
最終目標としては、2点関数を通じた粘性係数の計算を設定している。
- 山本 直希 (慶大理工)
--- QCDにおけるカイラルソリトン格子, Chiral Soliton Lattice in QCD
カイラルソリトン格子は、トポロジカルソリトンが格子状に並んだ基底状態であり、物性系のカイラル磁性体で現れることが知られている。本講演では、QCDの系統的な低エネルギー有効理論に基づき、強磁場中の有限密度QCDでカイラルソリトン格子が(核物質よりエネルギーの低い)基底状態として実現することを示す。さらに、このQCDカイラルソリトン格子が新奇なフォトニック結晶となっており、特に、非相対論的なフォトンが出現することを議論する。
- 山中 由也 (早大基幹理工)
--- 平衡及び非平衡下の非一様量子場系の繰り込み条件, Renormalization condition of inhomogeneous quantum field system in equilibrium and nonequilibrium
全運動量の非保存となる非一様系では、熱的伝搬関数や自己エネルギーが量子数に対して対角化でないため"on-shell"条件が明確でない。一般に伝搬関数の定義や意味は定式化毎に異なるものであるが、我々が用いるThermo Field DynamicsTFDでは、(1) その準粒子描像及び(2) 粒子数期待値のような巨視的量が励起エネルギーのような微視的量に与える影響の因果的制限の2条件から、一意的に"on-sehll" 自己エネルギーが定められる。実際、それに課せられた繰り込み条件は矛盾なく、平衡系ではエネルギーカウンター行列を定め、非平衡系では時間依存のエネルギーカウンター行列を定めると同時に粒子数の量子輸送方程式を与える。非平衡系では、場の演算子の時間依存波動関数完全系によって展開されるが、今回の枠組みではその波動関数が長時間極限で平衡系定常波動関数に緩和することも確認できる。
- 渡辺 花乃 (高知大院理)
--- トラップ中のボーズ・アインシュタイン凝縮体に埋め込まれたフェルミオン不純物の基底状態, Bose polaron in a harmonic trap
原子気体のボーズ・アインシュタイン凝縮(BEC)は制御性の高い現象である。
冷却原子気体は原子数や系を閉じ込めるポテンシャルなど
ほぼ全ての物質パラメーターおよび外部変数を変化させることが可能である。
本研究ではボソンとフェルミオンの混合系を考え、
ボソンがトラップポテンシャル(等方的3次元調和振動子型)にBECしている中に
異種粒子としてフェルミオンを1つ投入した場合の基底状態をポーラロン的描像で記述した。
この時相互作用はボソン-フェルミオン間のみ考慮した。
その結果、変分法で近似した基底エネルギーを、結合定数の2次の項まで求められた。
また、フェルミオン励起に引きずられ起こるボソン励起の傾向も見ることができた。
- 岩崎 愛一 (二松学舎)
--- モノポール凝縮によるカイラル対称性の破れ, chiral symmetry breaking by monopole condensation
電荷を持つ質量のないフェルミオン系で、真空中に電荷を置くとその電場で、Schwinger mechanismによるフェルミオンの対発生が起こる。その時、右向き、左向きのフェルミオンは同数発生し、カイラリティ(カイラル対称性)の破れはない。ところが、モノポール凝縮のある真空では、発生する右向き、左向きフェルミオン数に差が生まれる。すなわち、カイラル対称性は破れる。このことを、QCDにおけるAbelian dominance仮説のもとで、カイラル異常項を用いて示す。以前の研究で示したように、QCDモノポールの回りには局所的なカイラル凝縮が存在する。それゆえ、モノポール凝縮はカイラル対称性の破れを引き起こすと考えられる。今回の研究はそのことを強く支持するものである。
- 清水 啓太 (名工大院)
--- 冷却原子系における動的量子相転移現象, Dynamical quantum phase transition in system of cold atoms
初期宇宙に起こった相転移では、それぞれ位相がランダムなドメインが生成され、それらが成長しぶつかり合う境界においてトポロジカルな欠陥が生成されると予想されている。またその後、液体ヘリウムにおいても同様の機構でトポロジカルな欠陥が生成されると予想された。この機構はキッブル・ズレック機構と呼ばれている。そこで本研究では、二次元光格子上における量子相転移現象に着目して研究を行い、この機構における相転移の性質について議論する。
- 森 紳悟 (総研大)
--- CPを破るグルーオン相関関数のインスタントン効果, Instanton effects on CP-violating gluonic correlators
非摂動ダイナミクスの背後にあるインスタントンの役割を調べるため、SU(2) Yang-Mills理論のグルーオン二点相関関数へのインスタントン効果について調べた。擬スカラー・擬スカラー、擬スカラー・スカラー相関関数について温度を変えて格子計算を行い、インスタントン模型を用いた解析計算の結果との比較を行った。この結果から、異なる温度でのインスタントン効果の現れ方の違いを議論した。
- 藤井 啓資 (東工大院理)
--- 超流動3He-B相の低エネルギー有効理論, Low-energy effective field theory of superfluid 3He-B
強結合領域を扱うことの可能な有効場の理論の手法を用い、超流動3He-B相の低エネルギー有効理論を構築し、解析した。特に、3He液体が隠れた対称性として局所化されたガリレイ対称性を持つことを明らかにし、有効理論を構築する際に利用した。この局所的なガリレイ対称性を用いることで、従来予言されていた磁気回転効果に加え、ホール粘性が軌道角運動量密度で一意に表されることを明らかにした。発表では,これらの帰結について議論する。
- 西村 和也 (高知大院理)
--- フォノン間相互作用を考慮したボース・アインシュタイン凝縮体内のポーラロン基底エネルギー, Cold atomic Bose polaron with phonon-phonon interaction
ボース・アインシュタイン凝縮しているボソン内にフェルミオンを入れると,ボソン-フェルミオン相互作用によりフェルミオンはフォノンの雲をまといポーラロンを形成する.本研究では,1つのフェルミオンを注入したときのポーラロンの基底状態のエネルギーをフォノン-フォノン間の相互作用を考慮して求める.
- 今井 良輔 (早大基幹理工)
--- 環境と結合した有限サイズ Dicke 模型における量子相転移, Quantum phase transition in finite size Dicke model coupled to an environment
Dicke 模型は光学共振器のモードと原子集団の相互作用を記述する基礎的な模型であり、熱力学極限では対称性の自発的破れを伴う相転移を示すことが知られている。近年、冷却原子を用いて Dicke 模型が実験的に実現され対称性の破れの実時間観測に成功している。しかし有限サイズでの性質については理論的に十分に知られておらず、実験結果の解釈は容易ではない。本講演では、有限サイズ Dicke 模型の厳密な基底状態の性質を調べそれが対称性を破らないことを示す。また、環境系との結合による対称性の変化について議論する。
- 岡本 和久 (名大院理)
--- 新しい相対論的粘性流体模型の構築 ー高エネルギー重イオン衝突実験解析に向けて, A new relativistic viscous hydrodynamic model ーTowards quantitative analyses of high-energy heavy-ion collisions
RHICやLHCでクォーク・グルーオンプラズマ(QGP)の物性に敏感な新しい観測量が複数提案されており、これらの観測結果からQGP物性の詳細を解明できると考えられている。特に、QGPの粘性とその温度依存性に注目が集まっている。ここで我々は、高統計、高精度の実験結果の解析からQGP物性の定量的な解明を目標に相対論的粘性流体方程式の新しい数値計算アルゴリズムを開発した。この流体コードを用いてLHCでの横運動量分布、ラピディティ分布、フローなどについて議論する。
- 梶本 詩織 (阪大理)
--- 波動関数デコヒーレンスに起因するクォーコニウムの動的解離, Dynamical dissociation of quarkonia by wave function decoherence
重イオン衝突実験において、重いクォーコニウムの収量抑制はQGP生成の重要なシグナルの一つである。媒質中でのクォーコニウムのダイナミクスを記述する模型として、クォーコニウムを量子開放系として扱う確率論的ポテンシャル模型がある。本研究では、この模型で導出される確率論的Schrödinger方程式を数値的に解き、熱揺らぎがクォーコニウムの存在確率や崩壊率に与える影響を議論する。
- 赤松 幸尚 (阪大理)
--- 流体揺らぎの運動論に基づく体積粘性係数のくりこみ, Hydro-kinetic theory for nonconformal fluid and bulk viscosity renormalization
流体力学は平衡状態近くの有効理論であり、相対論的重イオン衝突で作られる超高温物質の記述に適用されてきた。最近では流体中の熱揺らぎが注目を集めている。本発表では、与えられた背景流中での流体揺らぎの運動論的記述を用いて、体積粘性係数のくりこみと長時間テイルについての計算結果を紹介する。
- 本郷 優 (理研iTHES)
--- 非相対論的幾何学,対称性,流体力学, Non-relativistic geometry, symmetry, and hydrodynamics
シュレディンガー場によって記述される非相対論的な量子多体系の時間発展を考え,その低エネルギー有効理論を構築する方法を議論する.とくに,巨視的なダイナミクスは非相対論的な流体力学の運動方程式によって記述されることに注目して,微視的な量子論に基づいて流体力学を正当化する手法を与えたい.そのために本講演では,非相対論的な量子多体系を記述するために便利な幾何学的方法(ニュートン・カルタン幾何学)と付随する対称性を概観した上で,非平衡統計力学に基づいた流体方程式の導出法を提示する.
- 曽我部 紀之 (慶大理工)
--- カイラル磁気効果による新しいQCD動的臨界現象の可能性, Does the chiral magnetic effect affect the dynamic critical phenomena in QCD?
カイラル磁気効果は、相対論的フェルミオンが持つカイラリティに起因する輸送現象であり、カイラル磁気波と呼ばれる流体力学的モードを生み出す。系のギャップレスモードは、動的臨界現象のユニバーサリティクラスにとって重要であるため、カイラル磁気効果が臨界ダイナミクスに影響を与える可能性がある。本発表では、カイラル磁気効果が有限温度QCDの臨界現象に及ぼす影響について議論する。
- 星野 裕一 (釧路高専)
--- 有限温度QEDのフェルミオン伝搬関数とカイラル凝縮, infrared behavior of the fermion propagator at finite temperature QED and chiral condensate
Based on the spectral function we evaluate the short distance fermion propagator at finite temperature QED. Perturbative infrared divergence and their cancellation is also discussed. Chiral symmetry breaking at fixed coupling is analyzed by full propagator.
- 一ノ瀬 祥一 (静岡県大)
--- 散逸系の幾何学的アプローチとステップフロー解析, Geometrical Approach to Dissipative Systems and Step-Flow Method
スティクスリップ運動を例にとり、散逸系を幾何学的に取り扱う。対象は摩擦を伴うブロックである。ブロックの運動はステップ番号で表される。運動方程式はn-,(n-1)- and (n-2)-step での位置座標の漸化式で記述される。結果は通常の場合(連続時間変数での運動方程式をRunge-Kutta4で数値解析)と比較する。ヒステリシス部分の扱いが、両者で異なる。位置変化、速度変化、摩擦力、散逸エネルギーなどの物理量のSimulation結果を報告する。小さなスケールでみると、速度、摩擦力等に揺らぎがある。体系の計量(メトリック)はエネルギー表式から得られる。
- 棚橋 典大 (阪大理)
--- ブラックホール地平面における粒子と弦のカオスの普遍性, Universality in Chaos of Particle and String Motion near Black Hole Horizon
ブラックホール地平面付近で運動する粒子について、その軌道にはブラックホール重力を起源とするカオスが発生し、そのカオス強度を特徴づけるリアプノフ指数はブラックホールの表面重力によって上限づけられることが判明した。この上限は、粒子をブラックホール近傍にとどめる外力の種類・強さなどに依存せず、また近年Maldacenaらによって導出された有限温度の量子系におけるリアプノフ指数の上限と一致するという特徴がある。本発表では、この上限の導出とその意義について述べるとともに、AdS時空中で運動する弦の運動への拡張について紹介する。
- 三浦 崇寛 (阪大理)
--- 重いクォークの熱媒質中の量子状態からの古典化, Classicalization of heavy quark quantum states in the hot matter
重イオン衝突実験でつくられるクォーク・グルーオン・プラズマ(QGP)中でのクォーコニウムの物理を探る研究が進展し、クォーコニウムとQGP中の粒子との衝突によるデコヒーレンス過程が注目されている。デコヒーレンスとは波動関数の離れた位置の相関が消えていくことであり、QGP中の粒子と衝突することを通して波動関数が局在化して波束のように振舞うようになる。局在化した波束は古典的な粒子として捉えることができる。その漸近的な波束状態の出現すること、すなわち古典化を、量子開放系のマスター方程式を反映した非線形なシュレーディンガー方程式を用いて記述する。今回は、簡単のため、QGP中でカラーをもつ重いクォークの場合にそれを適用する。重いクォークが量子状態から古典状態に移行する過程を通して、波動関数の成分ごとに独立な局在化した波束があるかどうかという点から、重いクォークを古典的に扱う妥当性を議論する。
- 松田 英史 (京大理)
--- 相対論的重イオン衝突における古典ヤンミルズ場のデコヒーレンスとエントロピー生成, Decoherence entropy in classical Yang-Mills fields at heavy ion collisions
相対論的重イオン衝突後の場の配位はMV初期条件と呼ばれるコヒーレントな古典ヤンミルズ場でよく与えられる。したがって、相対論的重イオン衝突後の熱化過程はデコヒーレンスの過程であるといえる。本研究では特にデコヒーレンスに着目し、古典場のダイナミズムのみでエントロピーの生成量を計算している。計算結果から、熱化過程における古典場の寄与を議論する。
- 森 勇登 (京大院理)
--- 経路の変形による符号問題の最適化, Optimization of sign problem by path modification
複素作用を持つ系のモンテカルロ計算をする際に現れる符号問題を軽減するために経路最適化法を考案した。符号問題の程度を表す指標である平均位相因子は、正則関数ではないために複素平面上での積分経路による。つまり積分経路を試行関数、平均位相因子を目的関数とみなすことで符号問題を最適化問題に帰着できる。この講演では類似の方法であるLefschetz thimbleとの比較を行いながら、そのアルゴリズムを解説し、toy modelや多変数の系での計算例を紹介する。
- 安斎 貴昭 (東工大院理)
--- 反平行磁場中の2次元フェルミ気体, Two-dimensional Fermi gas in antiparallel magnetic fields
冷却原子系では相互作用や空間次元を自在に制御できるだけでなく,光と原子の相互作用を用いることにより冷却原子に人工磁場を印加することが可能である.また近年では,異なるスピンを持つ原子に対して反平行な向きを持つ人工磁場を印加することも可能になった.発表では,反平行磁場中の2次元フェルミ気体の理論研究で得られた結果について議論する.
- 鏡原 大地 (慶大理工)
--- 冷却フェルミ原子気体からみたKSS予想, The KSS conjecture from the viewpoint of an ultracold Fermi gas
フェルミ原子気体のずり粘性率とエントロピー密度の比は、ユニタリー極限において観測された値が、Kovtun, Son, Starinetsにより予想(KSS予想)されたこの比の下限値の数倍にまで迫っているとして注目されている。近年では、相互作用依存性も観測可能となりずり粘性率とエントロピー密度の比はユニタリー極限のものより強結合側に最小値がある可能性が指摘された。本研究では、常流動相に着目し、自己無撞着T行列近似を用いてずり粘性率およびエントロピー密度を解析する。BCS-BECクロスオーバー領域においてずり粘性率とエントロピー密度の最小値を探しKSS予想の下限値と比較するとともに強結合効果や多体効果がどのようにこの比に影響するのを議論する。
- 筒井 翔一朗 (KEK 素粒子原子核研究所)
--- 複素ランジュバン法によるQCD相図の探索, Search for the QCD phase diagram with complex Langevin method
有限温度・有限密度下のQCDは、臨界終点の存在をはじめとして非自明な相構造をもつことが予想されており、それを理論的に決定することは、重イオン衝突実験などとの関連で重要な問題である。しかしながら、格子QCDに基づく第一原理計算は、符号問題のために困難であり、再重み付け法やカノニカル法で得られた従来の結果は必ずしも十分なものとはいえない。本発表では、符号問題を回避する有望な計算手法である複素ランジュバン法をこの問題に適用し、有限密度領域におけるカイラル相転移の転移温度と相転移次数の決定に向けた計算の初めての結果を紹介する。
- 東川 翔 (東大院理)
--- ワイルフェルミオンの被断熱なトポロジカルポンプとニールセン・二宮の定理の破れ, Nonadiabatic topological pumping of a Weyl fermion and the violation of the Nielsen-Ninomiya theorem
周期駆動された格子系の特徴的な点は平衡状態にある格子系では実現不可能なバンド構造が実現できる点である。
平衡状態にある格子系における重要な定理として、ニールセン二宮の定理(右巻きと左巻きのフェルミオンは必ず同数現れる)がある。
今回我々は、
周期駆動された3次元格子系を考えることで、ブリルアンゾーン内に左巻きのワイルフェルミオンをただ1つ持つようなバンド構造が実現できることを発見した。
このワイルフェルミオンではスピン運動量固定が起こっており、1周期駆動されると1サイト分だけ重心がスピンと平行な方向に移動する。
発表では、
光格子中の冷却原子を用いた上記の系の実験実現方法、
及びカイラル対称性のある系でのニールセン二宮の定理と上記の系の2次元版との関係についても議論する。
- 長尾 一馬 (京大基研)
--- 3次元光格子中の冷却Bose気体におけるHiggs振幅モードの応答, Response of the Higgs amplitude mode of ultracold Bose gases in 3D optical lattices
Higgs振幅モードは、系が連続対称性の自発的破れを示し、なおかつ有効的な粒子・正孔対称性を持つ時に現れる普遍的な準粒子励起の一つである。光格子中の冷却Bose気体において、Higgsモードを観測可能量における十分に鋭い共鳴ピークとして観測することは、極低温冷却気体の研究分野における基本的課題である。本研究では、特に3次元光格子中のBose気体に着目して、Higgsモードの共鳴ピークとしての観測可能性を論じる。具体的には、Higgsモードの観測可能性を特徴づける応答関数への量子及び熱ゆらぎの効果、そして空間非一様な捕捉ポテンシャルの効果を調べる。我々の結果は、捕捉ポテンシャルを考慮した典型的な温度の有限温度系において、Higgsモードが安定な準粒子励起として存在できる可能性を示唆する。
- 堀田 健司 (北海道大学 大学院 理学研究院 宇宙理学専攻 素粒子論研究室)
--- Unruh Effect in Superstring Theory, Unruh Effect in Superstring Theory
Previously, Unruh effect in open bosonic string field theory was discussed by Hata, Oda and Yahikozawa. However, it is natural to argue this effect for the closed strings which can propagate bulk spacetime. We investigate Unruh effect in the case of closed strings on the basis of light-cone gauge string field theory proposed by Kaku and Kikkawa. By superposing the solutions of the Klein-Gordon equation in Minkowski spacetime, we construct the superstring fields which satisfy the Klein-Gordon equation in Rindler spacetime. Using these string fields, we show that the Minkowski vacuum is a thermal state for closed superstrings in the Rindler wedge. We also investigate Unruh effect in the case of open superstrings on D9-brane-anti-D9-brane pairs, and discuss the relation between open string system and closed string one.
- 鎌田 紀彦 (東北大学理学研究科)
--- 格子上のエネルギー運動量テンソルを用いた熱力学量計算における離散化誤差の影響, Discretization effects in thermodynamic quantities via the lattice energy-momentum tensor
[arXiv:1609.07115]では、格子SU(3)純ヤン-ミルズ理論にヤン -ミルズ勾配流を適応した際に生じる離散化誤差の影響を、五次元上のエネルギー密度の期待値に対し議論した。本研究では前述の研究を拡張し、ヤン -ミルズ勾配流を用いて格子上に構成したエネルギー運動量テンソル(EMT)による熱力学量計算に適用する。特に先行研究で議論されているエントロピー密度およびトレースアノマリーに着目し、離散化誤差の影響を議論する。
- 若林 直輝 (新潟大学自然科学研究科)
--- SU(3)格子ゲージ理論の一次相転移における境界面, Surface tension in the first phase transition of SU(3) lattice gauge theory
SU(3)格子ゲージ理論における一次相転移点での高温相・低温相の二相共存状態を研究する。モンテカルロシミュレーションで確率分布関数を測定し、相転移の秩序変数を拘束した有効ポテンシャルの解析を行う。また、二相共存状態での有効ポテンシャルの体積依存性を調べることで、二相間の境界面を議論する。
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