TQFT 2014 Abstracts
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- 佐藤 大輔 (理研)
--- Nambu-Goldstone Fermion in Quark-Gluon Plasma and Bose-Fermi Cold Atom System, Nambu-Goldstone Fermion in Quark-Gluon Plasma and Bose-Fermi Cold Atom System
自発的に対称性が破れると励起エネルギーがゼロであるような励起(南部・ゴールドストンモード)が出現する事は、高エネルギー物理学と凝縮系物理学の両方の分野でよく知られている。
従来、破れる対称性としてはボソン的なものが考えられてきたため、出現するゼロモードはボソンであった。
しかし、対称性としてボソンとフェルミオンを入れ替える対称性である超対称性を考えると、南部・ゴールドストンモードはフェルミオン(ゴールドスティーノ)になる。
高温のクォークグルーオンプラズマにおいては、近似的な超対称性が存在し熱的効果によって破れるため、擬ゴールドスティーノが存在する事が示唆されていた。
しかしその励起はクォークと同じ量子数を持つため、重イオン衝突実験で直接観測する事は閉じ込めにより現在のところ困難である。
この発表では、最近提唱された超対称性をより実験が容易な冷却原子系に持たせるセットアップを考え、そこでのゴールドスティーノの分散関係を弱結合および低運動量領域で求める。
さらに、その分散関係が強磁性体中のスピン波とのアナロジーを用いて理解できる事を示す。
また、ゴールドスティーノの分散関係が実験的に測定できる量へ反映する可能性についても議論する。
- 高橋 史宜 (東北大学)
--- Implications of BICEP2 results for particle physics and cosmology, Implications of BICEP2 results for particle physics and cosmology
最近BICEP2実験がBモード宇宙背景輻射偏光を検出し、それが原始重力波による可能性が高いという発表を行った。この結果が本当であった場合、素粒子理論、宇宙論にどのような含意があるのか議論する。またインフレーション、宇宙背景輻射の温度揺らぎ、偏光、重力波について簡単なレビューを行う。
- 北沢 正清 (阪大)
--- gradient flowとエネルギー運動量テンソル, gradient flow and energy-momentum tensor
エネルギー運動量テンソル(EMT)は場の理論の最も基本的な物理量の一つだが、並進対称性を破った規格化を行う格子ゲージ理論においては、EMT演算子は定義からして非自明な対象である。近年、gradient flowと呼ばれるゲージ場の連続変換を利用することにより、格子上のEMT演算子を構成する方法が提案された。本研究では、この手法を用いてSU(3)格子ゲージ理論上で熱力学量等EMTと関連した物理量の測定を行い、この手法の妥当性及び実用上の優位性を調べる。特に、熱力学量の解析を通して、この手法が実用的な格子間隔において適切で、かつ統計的にも優れた測定方法を提供することを示す。
- 菊川 芳夫 (東大院総文)
--- Hybrid Monte Carlo on Lefschets thimbles, Hybrid Monte Carlo on Lefschets thimbles
- 山口 辰威 (慶大理工)
--- パリティを破った人工スピン軌道相互作用を有する冷却フェルミ原子ガス超流動における強結合効果とp波対振幅の誘起, Strong coupling effects and induced p-wave pair amplitude in an ultracold Fermi gas superfluid with synthetic asymmetric spin-orbit interaction
近年、冷却フェルミ原子気体において、パリティの破れたスピン軌道相互作用が実現した。この系では、超流動自体はs波であるにもかかわらず、パリティが破れる効果により、Cooper対の対振幅においてスピン一重項と三重項が混成する。
本発表では、冷却フェルミ原子気体系でまだ実現されていないp波超流動を実現する新しい手法として、このスピン軌道相互作用により誘起されたp波対振幅を利用するアイデアを理論的に提案、その実現可能性を探る。s波超流動状態において誘起されるp波対振幅の定量的な評価、および、超流動転移温度に対するスピン軌道相互作用の影響を強結合理論を用いてBCS-BECクロスオーバー全域で評価し、このアイデアを実現させるのに最適な条件を明らかにする。
- 江尻 信司 (新潟大学)
--- 多フレーバー格子ゲージ理論からの高温高密度QCD相転移の研究, Study of QCD phase transition at high temperature and density from many-flavor lattice gauge theory
QCDの有限温度相転移の次数はクォーク質量によって変化する。現実世界は非常に軽いクォーク2種類と中間的な質量のクォーク1種類、それ以外は重いという系であるが、本講演では、それを少し変更して、軽いクォーク2つと少し重いクォークが多数ある系に注目する。
重いクォークが多い系では、一次相転移が現れる臨界点が有限密度の場合も含めて容易に調べられ、重いクォークの種類が多くなるほど、有限密度では化学ポテンシャルが大きくなるほど、一次相転移の領域が広くなることが分かった。その研究から出発してその重いクォークの数を減らし、現実世界に近付けるというアプローチがあることを提案する。
さらに、その系は電弱相互作用の複合ヒッグス模型の一例と同等で、その相転移を調べることによって、電弱相転移でバリオン数の非対称性を作ることが可能かどうかの議論に重要な情報を与えられる。
- 岩崎 愛一 (二松学舎大)
--- Effects of Muon Magnetic Field on Proton Radius, Effects of Magnetic Field on Proton Radius
ミューオン原子のスペクトルから得られた陽子の半径が、従来の水素原子のスペクトルや電子散乱の解析から得られているものに比べ数%小さいという結果が近年大きな問題として浮上した。ここでは、陽子に対するミューオン磁場の影響を調べる。電子に比べ軌道半径の小さなミューオンは陽子により強い磁場をもたらす。特にカイラル凝縮はその磁場の影響を大きく受ける。ミューオン原子の2S状態は、ミューオン磁場の影響で陽子はその質量が小さくなることを示す。逆に2P状態は
質量が大きくなる。この差を考慮することで、「陽子半径問題」は解決することを指摘したい。
- 石見 涼 (新潟大自然)
--- 複数点再重みつけ法によるベータ関数の計算, Multipoint reweighting method and beta-functions for the calculation of QCD equation of state
シミュレーション点を複数にするreweighting法をフェルミオン行列式の中のパラメータを変える場合にも使えるように拡張した。パラメータを変えたときのヒストグラムの変化を調べ、1点でシミュレーションした時と違い、オーバーラップの 問題がなく、ヒストグラムが自然に変化していくことを示すことができた。その方法の応用例として、T=0でメソンの質量を計算して、π/ρ一定の線を求め、その線上で格子間隔(実際にはm_rho a)の変化を調べ、状態方程式の計算の準備となる計算ができることを示した。
- 末永 大輝 (名古屋大学)
--- Skyrmion crystal上での(D_0^*,D_1')と(D,D^*) メソンの質量, (D_0^*,D_1') and (D,D^*) masses on the Skyrmion crystal
パリティ+の(D_0^*,D_1')2重項とパリティ-の(D,D^*) 2重項間の質量の違いがカイラル対称性の破れからくるものとする模型があるが、カイラル対称性が部分的に回復していくと思われている有限密度系では、これらは縮退していくと考えられる。本研究では、HLSラグランジアンを元に作ったSkyrmionを格子状に敷き詰めて有限密度系を構築し、その上でのDメソンの質量差を上記の模型を用いて計算して、その振る舞いを見る。
- 菊池 勇太 (京大理)
--- Derivation of the hydrodynamic equation from the quantum transport equation, Derivation of the hydrodynamic equation from the quantum transport equation
Kadanoff-Baym方程式は輸送現象の微視的な性質を保持した量子的な輸送方程式である。我々はKadanoff-Baym方程式から、動的繰り込み群法を用いて赤外有効ダイナミクスとしての流体方程式を導出する。準備として、Chapman-Enskog法との比較により、動的繰り込み群法の妥当性を議論する。次にKadanoff-Baym方程式をもとに量子効果を考慮した流体方程式の導出を行う。さらに、この導出を多成分系に拡張する。最後に動的繰り込み群法による流体方程式の導出をユニタリーフェルミ気体に適用し、二次の流体方程式の輸送係数を求める。
- 西原 寛記 (名大理)
--- 非対称核物質中でのパイ中間子凝縮相への相転移の遅れ, Delay of the transition to the pion condensation phase in asymmetric nuclei
我々は、ホログラフィックQCD模型を用いて、非対称核物質中でのパイ中間子凝縮相の研究を行った。中間子の場のみを含む現象論的なホログラフィックQCD理論に核子の外場を加えることで、核子の持つアイソスピン数電荷が中間子の系に与える効果について研究した。
本研究の結果、我々は、非対称核物質中でのパイ中間子凝縮相への相転移が遅れる可能性を指摘した。さらに、非対称核物質中でのパイ中間子凝縮相における状態方程式やカイラル対称性の破れの強さについて議論する。
- 大久保 茂男 (大阪大学核物理研究センター/高知県立大学)
--- Bose-Einstein凝縮体に対するゼロモード量子状態と原子核におけるアルファ凝 縮模型への応用, Zero-mode quantum state of Bose-Einstein condensate and its application to alpha particle condensation in nuclei
Bose-Einstein凝縮系では大域的位相変換対称性が自発的に破れているため、ゼ
ロモード(南部-Goldstoneモード)が必ず存在する。ゼロモードの量子状態をナ
イーブに扱うと赤外発散が起こるため、多くの場合それは無視されてきた
(Bogoliubov近似)。我々は近年、非摂動ハミルトニアンの選び方を工夫するこ
とで、ゼロモードを取り入れつつも赤外発散の問題を解消する手法を提案した[Y.
Nakamura, J. Takahashi, and Y. Yamanaka, Phys. Rev. A. 89, 013613
(2014).]。本発表ではその手法を紹介するとともに、原子核におけるアルファ凝
縮模型への応用を示す。
- 古井 貞隆 (帝京大学理工学研究科)
--- QCDの中の八元数の選択律と宇宙物理学, Triality selection rules of Octonion in QCD and Astrophysics
Elie Cartanの八元数理論はQEDやQCDに適用することができる。この理論をπ中間子やη中間子の2つのγへの崩壊巾の大きさの違い(ηの崩壊巾が理論巾より大きい)や、宇宙にdark matterが23%, normal matterが4.6%, dark energyが72%程度存在する問題に適用すると現象を理解できることを示す。
電磁波の検出に八元数のTriality選択律がどのように関係するかを示したい。
- 石原 雅文 (東北大学AIMR)
--- Glueball instability and thermalization driven by dark radiation, Glueball instability and thermalization driven by dark radiation
AdS/CFT対応を用いて、負の宇宙項をもつ曲がった4次元時空上のグル―ボールの性質を、dualな5次元AdS時空での重力理論により調べた。研究の結果、負の宇宙項のもとではグル―ボールはmassiveになり安定に存在できるが、ある臨界温度で相転移がおこり、不安定になることが分かった。
- 中村 祐介 (早大基幹理工)
--- Bose-Einstein凝縮体に対するゼロモード量子状態と原子核におけるアルファ凝縮模型への応用, Zero-mode quantum state of Bose-Einstein condensate and its application to alpha particle condensation in nuclei
Bose-Einstein凝縮系では大域的位相変換対称性が自発的に破れているため、ゼロモード(南部-Goldstoneモード)が必ず存在する。ゼロモードの量子状態をナイーブに扱うと赤外発散が起こるため、多くの場合それは無視されてきた(Bogoliubov近似)。我々は近年、非摂動ハミルトニアンの選び方を工夫することで、ゼロモードを取り入れつつも赤外発散の問題を解消する手法を提案した[Y. Nakamura, J. Takahashi, and Y. Yamanaka, Phys. Rev. A. 89, 013613 (2014).]。本発表ではその手法を紹介するとともに、原子核におけるアルファ凝縮模型への応用を示す。
- 橋本 幸士 (阪大・理研)
--- クォーク非閉じ込め転移は高励起メソン凝縮, Quark deconfinement is higer meson condensation
AdS/CFT対応を用いて非閉じ込め転移を解析する.電場の引加や温度の上昇などの外的作用により、クォークの非閉じ込め転移を引き起こす際、ユニバーサルに高励起メソンが凝縮することが示される.これは、閉じ込め真空の弦理論的理解、そしてブラックホールのfuzz ball予想などと無矛盾であることを見る.
- 佐藤 芳紀 (京大理)
--- 閉じ込め相におけるホログラフィックSchwinger効果, Holographic Schwinger effect in confining theories
Schwinger効果は、外場中の粒子・反粒子の対生成であり、非摂動論的現象である。我々は、ゲージ/重力対応に基づいて、閉じ込め相にあるゲージ理論のクォーク対の生成率を求め、そして二つの臨界電場が存在することを示した。それらの臨界的な振る舞いに関わる臨界指数についても考察する。この発表は川井大輔氏、吉田健太郎氏(京大理)との共同研究であるPRD 89, 101901(R) [arXiv:1312.4341]及びwork in progressに基づく。
- 池田 惇郎 (大阪大学)
--- 拡張した最大エントロピー法による有限温度媒質中におけるチャーモニウムのスペクトル関数および分散関係の解析, Charmonium spectra and dispersion relations at finite temperature with maximum entropy method in extended vector space
有限温度および有限運動量におけるチャーモニウムの性質をクエンチ近似による格子QCDをもちいて解析した。
擬スカラーおよびベクターチャネルのチャーモニウムの媒質中における分散関係を、
解析の空間を拡張した最大エントロピー法を用いて調べた。
その結果、チャーモニウムの質量は温度の上昇とともに増加する傾向が見られるものの、分散関係は有限温度媒質中においても
Lorentz対称性から決まる関数形に従うという興味深い結果が得られた。
- 熊本 真一郎 (金沢大学)
--- Analysis of the dynamical chiral symmetry breaking by the viscous nonperturbative renormalization group equation, Analysis of the dynamical chiral symmetry breaking by the viscous nonperturbative renormalization group equation
カイラル対称性の力学的破れは、非摂動くりこみ群方程式により解析することができる。しかしこの方程式は非線形偏微分方程式であるため、カイラル対称性が自発的に破れる場合はその解が特異性を持ち、通常の差分法ではこの方程式を解くことはできなくなる。そこで解を正則化するために、この方程式に粘性項という人工的な項を付け加え、その正則な解の粘性項0極限をとることにより粘性解と呼ばれる解が得られる。今回の発表では、非摂動くりこみ群方程式の粘性解の計算方法と物理的性質について解説する。
- 入谷 匠 (基礎物理学研究所)
--- 厳密な中心対称性を保つ Nf = 3 QCD の有限温度相転移の解析, Finite temperature phase transition of Nf = 3 QCD with exact center symmetry
カイラル対称性の破れと閉じ込めは,QCDの特徴的な非摂動的性質であり,それらの相
転移や相関・競合は興味深い研究課題である.その際,閉じ込めは中心対称性から主に
論じられるが,カラー基本表現のクォークにより,この中心対称性は破れてしまい,
厳密な秩序変数は存在しない.その為,閉じ込め・非閉じ込めの定義やその議論には困
難が伴う.また,クォークがカラー随伴表現に属する場合では,中心対称性が厳密に保
たれるが,この理論ではカイラル転移と非閉じ込め転移が大きく異なる温度で生じるこ
とが報告されている.
本研究では,有限温度相転移の理論的側面の理解の為に,特に中心対称性に着目し,フ
レーバー毎に異なる境界条件を導入した Nf = 3 QCD を考える(Z3-QCD). この Z3-QCD
は,カラー基本表現のクォークのもとでも厳密な中心対称性を保つという性質を有す
る.本発表では,格子QCDを用いて,Z3-QCDの持つ厳密な中心対称性とカイラル対称性
の有限温度相転移を解析する.また,通常の Nf = 3 QCD や随伴表現の場合との比較に
ついても論じる.
- 一ノ瀬 祥一 (静岡県立大学食品栄養科学部)
--- 摩擦系のゆらぎの非平衡統計力学アプローチ, Non-equilibrium Statistical Approach to Friction Systems
物体が荒い表面を移動する時、地震で地面が揺れ動く時など、摩擦表面は熱を散逸する。この多体系を扱うには非平衡統計力学が必要である。時間と共に速度分布、(局所)温度分布、圧力分布などが変化し、十分時間が経つと定常平衝に達する。(統計)ゆらぎをどのように取り入れるかが大切な問題である。「離散モース理論」を使い、1次元(空間)粘弾性物質に対し、速度場の理論に基づいた定式化を行った。シミュレーション数値結果を見せる。 参考 arXiv:1404.6627(cond-mat)
- 松尾 泰幸 (三重大工)
--- 繰り込まれたエントロピーに対する揺らぎ定理: パリティ変換の役割と対称性の破れ, Role of parity transformation for the fluctuation theorem: Limit cycle and symmetry breaking
非線形多変数の系に対する揺らぎ定理について検討する。特に、リミットサイクルを持つ2変数の系を詳細に議論する。そのような系に対して”繰り込まれたエントロピー”が揺らぎ定理を満たすためには、時間反転不変性だけでなくパリティ変換も必要であることを示す。また、揺らぎの効果によってリミットサイクルが持つ対称性が破れうることも示す。
- 築地 秀和 (京大基研)
--- 量子カオス系におけるHusimi-Wehrlエントロピー, Husimi-Wehrl entropy in the quantum chaotic system -An efficient calculational method-
Early thermalization in heavy ion collisions still remains a theoretical challenge. It was suggested in the hydrodynamical analyses of the relativistic heavy-ion collisions at RHIC and later at LHC. There are many proposals for pinning down the underlying mechanism for it. Quantum fluctuations on top of the classical configurations (glasma) are found to induce instabilities. It may trigger the chaotic behavior of the gauge field and eventually give rise to en-
tropy production. In this work, we investigate thermalization of glasma by using the Husimi-Wehrl entropy. Quasi-distribution function defined in phase space should be useful to describe possible chaotic behavior of a quantum system. We adopt the Husimi distribution function to discuss entropy production of quantum systems. Husimi function is a minimally coarse-grained Wigner function and semi-positive definite. As a first stage of the study, we calculate the Husimi-Wehrl (H-W) entropy of a quantum Yang-Mills system[Tsai, Muller(2012)] with two-degrees of freedom. We propose a Monte-Carlo method to numerically calculate the time evolution of the Husimi function and the H-W entropy. We
also discuss an extension of the method to quantum field theories.
- 久野 義人 (名工大院)
--- 冷却原子系を用いた格子ゲージ理論のシミュレーション: U(1) gauge-Higgs modelのGross-Pitaevskii方程式による研究, Atomic simulation of lattice gauge-Higgs model: Phase diagram and time-evolution of atomic simulator
光格子上の冷却原子系を用いた格子ゲージ理論の量子シミュレーションついて議論する。
冷却原子系Bose-HubbardモデルがU(1)gauge-Higgsモデルにどのような設定で実現されるかについて解析的に議論する。さらにそのU(1)gauge-Higgsモデルが極低温原子系の上でどのように時間発展するのかをGP方程式で明らかにした。static charge間のconfinement fluxの時間発展を追うことでconfinement相、Higgs相の振る舞いを明らかにする。
- 鈴木 啓太 (名古屋工業大学)
--- 光格子上dipole-dipole長距離相互作用を含んだ2成分ボース粒子系の相構造, Two component Boson system with long range dipole-dipole interaction in an optical lattice
光学格子上2成分ボース粒子系において2成分原子間のdipole-dipole長距離相互作用を考慮することにより得られる新規の状態相について報告する。光格子上にトラップされたそれぞれ固有のdipoleの向きを持つ2成分原子系はその長距離相互作用の影響により様々なパラメーター設定下で新規の固体相、超個体相が形成されることが予言される。我々は経路積分量子モンテカルロシミュレーションを用いて、その系のグローバルな相構造を調べた。さらにそのモデルでの最近の実験報告との関係性について述べる。
- 齊藤 圭司 (慶應大学物理学科)
--- メゾスコピック系における電流ゆらぎの普遍性, Universal aspect in current fluctuation of mesoscopic systems
非平衡統計力学の分野において、発展し、また今なお進化している非平衡ゆらぎの理論
をメゾスピック電気伝導で考える。最初に概観を紹介し、理論実験双方によりな
された最近の研究を紹介していきたい。
- 日髙 義将 (理研)
--- 自発的対称性の破れと南部-Goldstoneモード, Spontaneous symmetry breaking and Nambu-Goldstoneモード
自発的対称性の破れと南部-Goldstoneモード(ボソン)についての最近の理論的発展と話題について紹介する.
- 赤松 幸尚 (名古屋大学 素粒子宇宙起源研究機構)
--- Heavy quark master equations in the Lindblad form, Heavy quark master equations in the Lindblad form
Understanding the quantum dynamics of quarkonia at finite temperature is essential in the description of bottomonia and charmonia in the quark-gluon plasma. So far, it has been quite naively assumed that their dynamics can be described by the Schrödinger equation with in-medium, screened potential. Such a naïve approach is incomplete, especially if one wants to study their time-evolution. After the discovery of imaginary part in the in-medium real-time potential, it is recognized that quarkoia should be viewed as open quantum systems in the environment of quark-gluon plasma.
In the open quantum system, master equation instead of the Schrödinger equation describes the quantum dynamics of quarkonia. Open quantum system techniques, such as influence functional approach, have been applied to quarkonia. In this presentation, I will summarize developments in this approach and show how to obtain the Lindblad-form master equation, which preserves the complete positivity of the density matrix of the system.
- 星野 裕一 (釧路高専)
--- チャンーサイモンQED3に於ける一次相点移の詳細解析, Detailed analysis of first order phase transition in Maxwell-Chern-Simon QED
チャンーサイモン項のあるQED3における有限値のC−S項でカイラル対称性の秩序パラメーターに一次相転移がみられる。Schwinger-Dyson方程式にもとついてC−S項の質量に対する効果と転移点の推定およびシミュレーションを行う。現在のところカイラル対称性の秩序パラメーターとパリテイーを破る秩序パラメーターによる真空のエネルギーが臨界点近傍で打ち消し合いこれ以上の値のC−S項では前者がゼロ、後者のみ非ゼロとなっている。C−S項無しのmassive QEDではカイラル対称性の秩序パラメータが消失する光子の質量はC−S項の値よりずっと大きい。
- 栗田 竜一 (東大院理)
--- (0+1)次元膨張座標系での揺らぎの定理, Fluctuation theorem in (0+1)-dimensional Bjorken expansion
高温高密度QCD物質中では、クォークやグルーオンは閉じ込めから解放され、クォーク・グルーオンプラズマ(QGP)を形成する。QGPは初期宇宙でも存在していたとされているが、RHICやLHCでの相対論的重イオン衝突実験を通して作り出すことができる。
実験的に作られたQGPのダイナミクスは相対論的流体力学で良く記述される。より詳細な記述に向けて、近年では衝突の際の原子核の形状の違いを反映し、イベントごとの初期揺らぎが取り入れられている。一方で、ダイナミクスの過程では熱的な揺らぎも存在し、その効果を取り入れた相対論的流体力学の枠組みが最近提案された[1]。この枠組みを適用する事で、エントロピーの時間変化を追う事ができる。
エントロピーは、確率的にまれだが減ることもありうる。エントロピーの増大する確率と減少する確率は"揺らぎの定理"[2]によって密接に結びついている。本講演では、この定理にもとづき、熱的揺らぎが与える終状態のハドロンの収量への寄与を述べる。また、小さい系で揺らぎが重要になることも合わせて述べる。
[1]K. Murase and T. Hirano, arXiv:1304.3243.
[2]D.J. Evans and D.J. Searles, Phys. Rev. E 52, 5839 (1995).
- 今井 良輔 (早大基幹理工)
--- 非平衡Thermo Field Dynamics に基づいた冷却フェルミ気体系における非平衡過程の解析, Analysis of Nonequilibrium Processes in Ultracold Fermionic Gas Systems Based on Nonequilibrium Thermo Field Dynamics
調和トラップ中に捕捉された2成分冷却フェルミ原子気体の緩和過程が観測されている。本発表ではその緩和過程に対する解析方法とその結果について述べる。解析は非平衡Thermo Field Dynamicsに基づいて導出された量子輸送方程式を用いて行う。実験との対応についても触れながら、解析の結果について説明する。
- 上門 和彦 (理研)
--- Chiral phase transition in a magnetic field, Chiral phase transition in a magnetic field
磁場中での強い相互作用をする物質のカイラル相転移について議論する。
強い磁場中では中性のパイオンであっても、クォークとの結合を通して磁場からの影響を受け、非等方性が現れることが知られている。本講演ではあるカイラル模型を非摂動くりこみ群の手法を用いることで、中性のパイオンの非等方性までを考慮してカイラル相転移について解析した結果を示す。パイオンの非等方性の磁場依存性や非等方性がカイラル相転移の磁場依存性に与える影響などについて議論をする。
- 桑原 幸朗 (早大基幹理工)
--- 光学格子中の冷却Bose原子気体系に対するMarkov型量子輸送方程式による緩和過程の解析, Analysis of relaxation process for ultracold atomic Bose gas system in optical lattice with Markovian quantum transport equation
我々は非平衡Thermo Field Dynamics (TFD)から導出された量子輸送方程式を用いて冷却Bose原子気体系の緩和過程を解析している。近年、我々は非エルミートなエネルギーカウンター項を繰り込むことで、準粒子のエネルギーを補正するパラメータだけでなく準粒子の寿命に対応するパラメータを取り入れた輸送方程式を導出した[Y. Kuwahara, Y. Nakamura, Y. Yamanaka, JPS Conf. Proc. 1, 012101 (2014)]。しかし、導出された輸送方程式はnon-Markov型であり、数値計算におけるコストが非常に高いため、巨大な系への適用は困難であった。本発表では、輸送方程式をMarkov近似して現実的に数値計算が可能としながら、一次元光学格子中の冷却Bose気体系に適用した緩和過程を解析する。
- 益田 晃太 (東大院理/理研)
--- Effects of Magnetic Field and Rotation on $^3P_2$ Superfluidity in Neutron Stars, Effects of Magnetic Field and Rotation on $^3P_2$ Superfluidity in Neutron Stars
中性子星内部で実現されると考えられる中性子トリプレットp波超流動体について議論する。始めにGinzburg-Landau(GL)方程式を導入し、スピン2-BECとの類似点について述べる。運動項と磁場、回転を表す項の影響を調べ、ある条件下で半整数量子渦が最も安定な状態として実現することを示す。更に、この半整数量子渦がもつ自発磁化の値を定量的に計算する。最後に中性子星の観測量にこのトリプレットp波超流動体が与えうる影響についてコメントする。
- 幡中 久樹 (韓国高等研究院)
--- 格子ゲージ理論での細谷機構による相転移と質量生成, Phase transition and mass generation in Hosotani Mechanism on the Lattice
素粒子現象論における「ゲージ・ヒッグス統合(gauge-Higgs unification)模型」では、コンパクト化した余剰次元方向のウイルソンループがヒッグス場としての対称性の自発的破れをおこす役割を果たす(細谷機構)。格子ゲージ理論では1次元方向の格子サイズが小さい非対称格子(ただし有限温度と違いフェルミオンは周期的境界条件)でその方向への非自明なポリヤコフループの動的生成に対応する。本研究では3次元+コンパクト化した1次元の非対称4次元格子での数値シミュレーションにおいて、ポリャコフラインの配置やヒッグスの質量について我々の新しい解析手法と結果を紹介し、連続理論での1ループ摂動論の結果と比較する。このトークはG. Cossu, Y. Hosotani, J. Noakiとの共同研究(arXiv:1309.4198, Phys.Rev.Dに採録)に基づきます。
- 岡本 和久 (名大理)
--- 重イオン衝突実験における相対論的流体模型へのリーマンソルバーの応用, A Riemann solver for relativistic hydrodynamics in heavy-ion collisions
流体方程式の数値計算スキームの一つであるリーマンソルバーは非相対論的流体力学において大きな成功を収めている。2000年以降、このリーマンソルバーの相対論的流体方程式への応用が可能になっており、我々は、リーマンソルバーを用いた重イオン衝突実験における相対論的流体模型の構築を目指している。今回、ラピディティー座標を利用したリーマンソルバーの構築、その計算テスト結果について紹介する。
- 丸山 智幸 (日大生物資源)
--- 強磁場中でのパイ中間子シンクロトロン放出, Pion Synchrotron Emission in Strong Magnetic Field
Soft Gamma Ray Repeaterから放出されるガンマ線の源として,強磁場中を運動する陽子からのパイ中間子シンクロトロン放出がある。本研究では、パイ中間子放出の大きさを従来の半古典計算ではなく,ランダウ準位を取り入れた微視的計算で示す。
- 山中 長閑 (理研)
--- Thermal history of the dark matter in the hidden gauge theory, Thermal history of the dark matter in the hidden gauge theory
素粒子標準模型との相互作用が非常に弱い「隠れた」非可換ゲージ理論が存在する場合、そのゲージ理論における最も軽いハドロンは暗黒物質の候補となりうる。
本研究では隠れた非可換ゲージ理論が大統一スケールで標準模型と統一すると仮定して、その熱史を議論する。
特に、ゲージ理論の閉じ込め相転移における時間発展を調べ、現在の観測から得られるゲージ理論への制限、およびその観測可能性を論じる。
- 坂井田 美樹 (大阪大学)
--- 保存電荷高次ゆらぎの時間発展に対する非マルコフ効果, Non-Markov effect on the time evolution of higher order fluctuations of conserved charges
重イオン衝突実験における保存電荷のゆらぎのラピディティ幅依存性は、QGPの性質を探る上で重要な観測量であることが、近年指摘されている。
我々は、これまでの理論解析で、マルコフ過程に従う拡散現象を記述する拡散マスター方程式を用いて、保存電荷の時間発展の様相を記述していた。しかし、重イオン衝突実験における保存電荷の拡散は本質的に非マルコフ過程である。本研究では、ゆらぎに非マルコフ性を取り込むために、クラマース方程式を用いて保存電荷ゆらぎの時間発展を記述するとともに、時間発展に対する非マルコフ性の効果を調べる。
- 内野 瞬 (ジュネーブ大学)
--- Unconventional superfluid in quasi-one dimension, Unconventional superfluid in quasi-one dimension
冷却原子気体の実験技術を用いて実現可能な非自明な超流動を有する模型を提案する。この超流動はフェルミオン間の斥力相互作用がある場合に生じ、一般にはスピン-シングレットとトリプレットのペアが混成した状態であることを示す。この混成は実験的に制御可能であることを示す。また、この超流動相が冷却原子気体の実験で測定され得ることを議論したい。
- 金 泰広 (大阪大学大学院理学研究科)
--- 格子数値解析を利用した非閉じ込め相のレプトン対生成率, Dilepton production spectra calculated with a lattice quark propagator
重イオン衝突実験において、観測されるレプトン対生成量は、レプトンが媒質による散乱を受けないため、非閉じ込め相からの直接的な寄与を含んだ特徴的な観測量である。
格子QCD数値解析より得られたクォークスペクトル関数を用いて、非閉じ込め相のレプトン対生成率を2つの温度で解析した。媒質中の仮想光子の自己エネルギーを計算する際、光子-クォーク頂点関数は、ゲージ不変性の帰結であるWard-高橋恒等式を満たす様にクォークスペクトル関数から決めた。
解析したレプトン対生成率は、van Hove特異性を示し、自由クォーク系の生成率と比べて低不変質量領域で10倍程度の増大が見られた。
- van Wyk Pieter (慶應義塾大学)
--- Specific heat and strong-coupling effects in the BCS-BEC crossover regime of an ultracold Fermi gas, Specific heat and strong-coupling effects in the BCS-BEC crossover regime of an ultracold Fermi gas
We theoretically investigate the specific heat in the normal state of an ultracold Fermi gas. Using a strong-coupling BCS-BEC crossover theory, we clarify how strong pairing fluctuations affect this quantity in the whole BCS-BEC crossover region. Recently, the specific heat has been measured in the unitarity limit of this system[1], exhibiting a lambda-like temperature dependence near the superfluid phase transition temperature, as opposed to the well-known T-linear behavior obtained in normal Fermi liquids. We examine whether this anomalous temperature dependence is due to strong pairing fluctuations. We also discuss effects of the so-called pseudogap phenomenon on the specific heat. Since the existence of strong pairing fluctuations is a crucial key in understanding the BCS-BEC crossover physics, our results would be helpful in elucidating their effects on the thermodynamic properties of an ultracold Fermi gas.
[1] Mark J. H. Ku, et al, Science Vol 335 p563 (2012)
- 田島 裕之 (慶大理工)
--- 強結合フェルミ超流動体のスピン帯磁率における超流動揺らぎと秩序の競合現象, Competition between pairing fluctuations and superfluid order in the spin susceptibility of a strongly correlated superfluid Fermi gas
BCS-BECクロスオーバーの実現以来、フェルミ原子気体は強結合効果の研究に多大な貢献をしてきた。加えて、実験技術の進歩は目覚ましく、近年ではこの系のスピン帯磁率の測定が可能となった[C. Sanner, et al., Phys. Rev. Lett. 92, 010402 (2011)]。
本発表では、強結合理論を用いてスピン帯磁率の温度変化をBCS-BECクロスオーバー全域で定量的に計算し、この熱力学量が強結合効果に対して非常に敏感であることを示す。
また、超流動相転移温度近傍の常流動相では、超流動揺らぎはスピン励起を抑制、スピン帯磁率を減少させるのに対し、超流動相転移温度以下ではBCSギャップが超流動揺らぎにより部分的に埋められる結果、BCS状態でのスピン帯磁率に比べ温度変化が緩やかになることを明らかにする。上述の実験結果とも比較しながら議論を行う。
- 田屋 英俊 (東大理)
--- 強い電場中におけるフェルミオン対生成の有限時間効果, Finite pulse effects on fermion pair creation from strong electric fields
近年の実験技術の発展により, 高エネルギー重イオン衝突やレーザーなどの方法によって, 臨界電場を越えるような極めて強い(カラー)電場を実験室で生成することが可能になりつつある. このような強い場の下では, 真空中でのフェルミオン対生成のように, 外場がかかっていない通常の真空では起こりえない, 興味深い現象が起こることが理論的に予想されている.
本講演では, 強い電場の有限時間効果が真空中でのフェルミオン対生成に及ぼす影響を議論する. 特に, 時間幅$\tau$, 電場のピーク値$E$を持つようなSauter型のパルス電場を設定し, 解析的な計算を行うことで, (1)真空中でのフェルミオン対生成が, $\gamma=gE\tau/m$, $\nu=gE\tau^2$の2つのパラメータの大小に応じて, 摂動/非摂動論的描像の移り変わりを見せること, (2)電場が比較的弱く($gE/m^2 \lesssim 1$), 時間幅も比較的短い($m\tau \lesssim 1$)ような場合には, Schwingerの公式で素朴に予想するよりもはるかに大きい(摂動論的な)粒子生成が生じること, を示す. [H. Taya, H. Fujii and K. Itakura, arXiv:1405.6182, to appear in PRD.]
- 花井 亮 (慶大理工)
--- 流入と散逸のあるフェルミ粒子系における非平衡強結合効果, Non-equilibrium and strong-coupling effects in a pumped-decaying fermion system
半導体に光を照射することで生成する励起子系は、粒子間に働く引力相互作用が強く、多体物性を探る舞台として注目を集めてきた。さらに近年では、半導体量子井戸を微小共振器に挟み込んだ構造で生成する励起子ポラリトン系において、ボース・アインシュタイン凝縮が実現している。これらの系では、生成した電子・ホールの対消滅や光子の共振器からの漏れ等により系から粒子が散逸するため、強結合性に加えて非平衡性が重要となる。そこで本発表では、ケルディッシュ形式を用いてこれらの効果を同時に取り込んだ理論を構築し、流入と散逸がクーパー対に与える影響を議論する。
- 酒井 俊太郎 (京大理)
--- カノニカル法を用いた有限温度、密度QCDの解析, QCD with finite temperature and chemical potential from canonical approach
有限密度領域においては、化学ポテンシャルによりDirac行列が複素数になることか
ら格子QCDを用いた解析は困難になることが知られている。
今回はnumerical costも考慮して、有限温度、密度領域における2flavor QCDをhoppi
ng parameter展開、及びreweighting methodを用いて解析した。
さらに、grand canonical partition functionのFourier変換から得られるcanonical
partition functionを用いてLee-Yang零点を求め、有限温度、密度領域における
相構造についても解析を行った。
ここで得られた結果が物理的にどのような意味を持つのか、これまで
の現象論による解析とも比較しながら報告する。
- 谷口 裕介 (筑波大学数理物質科学研究科)
--- カノニカル法による格子QCDの有限密度相転移現象への挑戦, A study of the high density phase transition in lattice QCD with canonical approach
格子ゲージ理論による有限密度QCDの研究は未だ未開拓のフロンティアであり続けている。
その最大の理由としては、クォークのグランドカノニカル分布の経路積分表示にはsign problemがあり、
Monte Carlo法による数値シミュレーションを非常に困難にしているという事実が挙げられる。
統計力学の教科書によればカノニカル分布とグランドカノニカル分布による記述は完全に等価であり、
グランドカノニカル分配関数からfugacity展開によって定義されるカノニカル分布の経路積分表示は
格子QCDにおいても直接的なsign problemを持たない事が古くから議論されてきた。
その一方でfugacity展開を数値的に実行しようとすると、正負の量の激しい相殺が起きて、
分配関数は実質的には求まらなくなるという問題が知られており、sign problemが形を変えて
現れたものと解釈されていた。
この研究ではクォーク質量を重い領域に限定する事で、fugacity展開をhopping parameter展開として
解析的に実行し、カノニカル分配関数をバリオン数にして25-200個程度分の領域まで求める事に成功した。
その分配関数を係数とするfugacity展開を再実行する事で、実化学ポテンシャルに対する
グランドカノニカル分配関数を再構成する。
それを用いた有限密度相転移現象の探求として、
1. chiral condensateやクォーク数密度をはじめとするハドロン量の直接測定。
2. グランドポテンシャルの振る舞い。
の二点から議論を行う予定である。
また、Lee-Yang zerosの実軸付近での振る舞いとの整合性に関しても議論を行う予定である。
- 荒木 賢志 (東工大)
--- 複素ボレル和則による有限温度中でのクォーコニウムの解析, Analysis of quarkonia at finite temperature from complex Borel sum rules
Recently, we proposed a new type of QCD sum rules i.e. the complex Borel sum rules (CBSR) [1].
It has been found that the CBSR is superior to the conventional QCD sum rules from the point of view of the maximum entropy method (MEM) analysis. Specifically, we have demonstrated that our novel method can be used to study the excited states of hadrons.
The suppression of quarkonium states (e.g. J/psi and upsilon) is an important signature of the hot
matter produced in relativistic heavy-ion collisions at RHIC and LHC. Recently, the behavior of the
excited states at finite temperature, which can be different from the ground state, has attracted much attention.
The suppression of the charmonium and bottomonium ground states has already been analyzed by conventional QCD sum rules
with MEM [2,3]. In this talk, we report on the results of a reanalysis by CBSR with MEM to investigate the
thermal behavior of the quarkonium excited states.
[1] K.-J. Araki, K. Ohtani, P. Gubler, and M. Oka, arXiv:1403.6299 (published in PTEP)
[2] P. Gubler, K. Morita, and M. Oka, Phys. Rev. Lett. 107, 092003 (2011).
[3] K. Suzuki, P. Gubler, K. Morita, and M. Oka, Nucl. Phys. A 897, 28 (2013).
- 沼澤 宙朗 (京大基研)
--- Entanglement entropy of local operator excited states in CFTs, Entanglement entropy of local operator excited states in CFTs
我々は,局所演算子によって励起された状態のエンタングルメント・エントロピーの振る舞いを共形場理論の場合に調べた。この場合、最終的な表式は演算子の相関関数を用いて表されることが分かった。また,2次元の有理型の共形場理論の場合には量子次元を用いて表されることが分かった。この発表は野崎雅弘氏、高柳匡氏(京大基研)との共同研究(Phys. Rev. Lett. 112, 111602 (2014), arXiv: 1401.0539[hep-th])及びHe Song氏、渡邊賢人氏、高柳匡氏(京大基研)との共同研究(arXiv: 1403.0702[hep-th])に基づく。
- 鈴木 渓 (東工大院理)
--- QCD和則による磁場中のD中間子の解析, D meson in magnetic field from QCD sum rules
近年、相対論的重イオン衝突実験において生成される強い磁場に関する物理が盛んに議論されており、そのような磁場中でのハドロンの振る舞いは実験的にも理論的にも非常に興味深い話題である。たとえば、カイラル凝縮の磁場依存性によるハドロンの質量シフトや、中間子のカレントが外部磁場による光子とcoupleすることによる擬スカラー中間子とベクトル中間子のmixingなどの現象が予想されている。本研究では、QCD和則を用いて、磁場中でのD中間子のスペクトル関数の振る舞いを解析する。この解析には、カイラル凝縮を含めたQCDの真空凝縮の磁場依存性や、磁場によって引き起こされるハドロンのmixing効果が含まれており、その解析結果から、D中間子の質量シフトやD中間子とD*中間子のmixingについて、QCD和則の観点から議論を行う。
- 佐々木 崇宏 (東大理)
--- RHICにおけるビームエネルギースキャン実験での陽子数揺らぎに関する熱力学的解釈, Thermal interpretation of the proton number fluctuations in the beam-energy scan at RHIC/STAR
RHICで行われるビームエネルギースキャン実験はQCD相構造を探る重要な実験である。
観測量の一つである陽子数揺らぎはQCD物質の臨界的振る舞いと深く結びついており, QCD臨界点を発見するのに重要な観測量である。
実験量を解析し臨界現象のシグナルを見つけるに当たり, これらの量の基準となる振る舞いを知っておくことは重要である。
我々はまず粒子数揺らぎのスキューネスおよびクルトーシスに関して, 自由古典ガス近似と自由量子ガスの振る舞いの違いをみた。
さらに, 核物質の飽和性を満足する有効模型を用いることで, 低温高密度領域において核子間相互作用がこれらの量に与える影響に関して解析した。
- 門内 晶彦 (理研BNL研究センター)
--- Quark chemical equilibration and thermal photons in heavy-ion collisions, Quark chemical equilibration and thermal photons in heavy-ion collisions
Heavy-ion systems at high energies are considered to transit from a gluon-rich color glass condensate to an equilibrated quark-gluon plasma shortly after the collision. Analyses based on collinear parton splitting and recombination picture indicate that chemical equilibration of quarks is slower than thermalization [A. Monnai and B. Mueller, arXiv:1403.7310 [hep-ph]]. Phenomenologically, this implies enhancement of thermal photon v2, elliptic azimuthal anisotropy in momentum space, since the photon emission source is scarce at the onset of hydrodynamic evolution when azimuthal flow in the background medium is still small. Numerical estimations show that the effect of late chemical equilibration is visible on the quantity and would be important in explaining the "large photon v2 puzzle" observed at RHIC and LHC [A. Monnai, arXiv:1403.4225 [nucl-th]].
- 大野 浩史 (筑波大CCS)
--- 有限温度格子QCDにおけるチャーモニウム及びボトモニウム相関関数の研究, Study on charmonium and bottomonium correlation functions in lattice QCD at finite temperature
重イオン衝突実験におけるクォーコニウム生成量の抑制はクォーク・グルオン・プラズマ生成の重要なシグナルのひとつであり、クォーコニウムの高温媒質中での振る舞いを理論的に理解することは、実験結果を説明する上で重要である。また、近年、J/Ψ等のチャーモニウムのみならず、Υ等のボトモニウムに関する実験結果も次々と報告されており、その両方について調べ、どのような違いがあるのかを理解することも重要である。本発表では、有限温度における格子QCDシミュレーションで計算されたチャーモニウム及びボトモニウム相関関数のクォーク質量依存性並びに温度依存性を示し、対応するスペクトル関数の変化について議論する。さらに、相関関数から遮蔽質量、クォーク数感受率及びクォーク拡散係数を計算し、その振る舞いついても議論する。
- 高橋 純一 (九大院理)
--- 格子QCDによるクォーク数密度の計算と有効模型による解析, Lattice QCD calculation of the quark number density and analysis by effective model
クォーク数密度は有限温度・化学ポテンシャル領域のQCDにとって、最も基本的な物理量の一つである。また、クォーク数密度は有効模型のベクター型相互作用の強さと関係している。そのため、第一原理計算である格子QCDによる計算は重要である。しかし、クォーク数密度が有限となる有限化学ポテンシャル領域では、格子QCDは符号問題を持ち、計算が困難である。そこで我々は、符号問題の無い虚数化学ポテンシャル領域において、クォーク数密度を計算した。そして、それを実数化学ポテンシャル領域に解析接続した。さらに、大きな化学ポテンシャル領域におけるクォーク数密度の物理的性質を調べるために、有効模型によるクォーク数密度の解析を行った。そして、その有効模型を用いて実数化学ポテンシャル領域おける他の物理量の予想を目指す。
- 柴田 章博 (KEK)
--- クォーク閉じ込め・非閉じ込めの有限温度相転移と磁気的モノポールの役割, The role of magnetic monopole in cofinement/deconfinement phase transition at finite temperature
QCDにおけるクォーク・カラーの閉じ込め機構は、双対超伝導描像が有力視されている。このためには、磁気的モノポールが重要な役割を果すこことを示すことが必要である。 本講演では、格子ゲージシミュレーションを用いてクォーク・反クォーク間に生じる、chromoelectric flux tube 及び、双対超電導に磁気的(モノポール)カレントを計測し、閉じ込め/非閉じ込め相転移を双対超伝導の観点から調べる。
- 野中 千穂 (名大KMI, 名大理)
--- フローと相関から探るQGP物質の性質, QGP properties from flow and correlations
RHICでの強結合QGP生成成功以来、相対論的流体模型はもっとも現実的な現象論的模型として高エネルギー重イオン衝突実験理解に広く利用されてきた。現在は粘性やゆらぎだけでなく磁場の寄与も考慮にいれた相対論的流体模型が開発されている。しかしながら相対論的流体方程式の数値解法自体にはそれほど注意が払われてこなかった。ここで我々はQGP流体を取り扱うのに相応しいリーマンソルバーを元にした新しいアルゴリズムを開発した。この新たに開発した相対論的流体模型を用いてRHIC, LHC の粒子分布やフロー、相関などといった実験結果を解析しQGP物質の性質について議論する。
- 大西 悠太郎 (大阪大学)
--- 重イオン衝突実験における荷電揺らぎのラピディティ方向へのにじみ効果, Effect of final state rescattering on the rapidity window dependence of electric charge fluctuation
ALICEの実験にて、荷電ゆらぎのラピデティ依存性が観測された。その解析において、時空ラピデティとラピデティを同一のものと見なしている。しかし、実際には両者は異なり、それに由来するにじみの効果が生じる。本研究ではそのにじみの効果を見積もり、観測量への影響を考察する。
- 石井 優大 (九大院理)
--- 中間子遮蔽質量のEPNJL模型を用いた解析, Analysis of meson screening mass in the entanglement PNJL model
中間子の質量はハドロンの基本的な物理量であり、QCD真空やハドロンの状態方程式を理解する上で重要である。有限温度(T)においては、二種の質量、極質量と遮蔽質量を定義することができる。極質量(遮蔽質量)は、時間(空間)方向へ中間子を伝播させた場合の指数関数的な減衰として定義される。有限Tの格子QCDにおいては、時間方向の距離が温度の逆数(1/T)までしか取れないため極質量の計算が難しく、遮蔽質量がよく計算されている。そのため、極質量と遮蔽質量を同時に記述する有効模型を構築し、格子QCDで計算された遮蔽質量の結果から有効模型を用いて極質量を予言することが重要である。本研究では、Entanglment-PNJL(EPNJL)模型を用いてπ中間子の遮蔽質量のT依存性を計算し、格子QCDの計算結果と比較した。EPNJL模型のパラメータを調整することで、相転移付近での急激な上昇や、高温で自由クォーク極限の値(2πT)に下から近づく振る舞いを定量的に再現できた。このようにして決められたパラメータを用いて、π中間子とσ中間子の極質量の温度依存性を予言した。
- 佐藤 智実 (総研大(勤務地:KEK))
--- 軸性U(1)対称性の破れを伴った線形σ模型のくりこみ群flow, Renormalization group flow of U(2)xU(2) linear sigma model with axial U(1) breaking
2フレーバーQCDのカイラル相転移は、相転移温度付近で軸性U(1)対称性が十分大きく破れているという仮定のもと、O(4)のユニバーサリティを持つ二次相転移であると考えられて来た。近年の格子計算の結果から、軸性U(1)対称性は実効的に回復していることが示唆されている。本講演では、相転移温度付近での軸性U(1)対称性の破れが0温度に比べて非常に小さい場合の臨界現象を、有効模型を用いて解析する。